ファッション系の映画で「シャネル」が1番多い理由とは
つい先日、メゾン ミハラヤスヒロのパリコレに参加したコサージュ専門のデザイナーさんにインタビューをしました。その記事も読んでいただきたいんですが、今回の本題は映画です。
インタビューにあたって困った事。
パリコレがなんとなく凄いことは分かる。
しかし私はその実情を何も知らんぞ…
ということで、一応は映画ライターなんぞをしてお金をいただく身分なものですから、ファッションやパリコレクションの予習は、映画を漁るように鑑賞することで準備をしてみました。
まず観たのはディオール
ブランド全面協力のもと、オートクチュールの裏側に迫ったドキュメンタリー『ディオールと私』。コレクション本番へ向けてどのように準備を進めていくのか、その様子が分かる内容になっています。
デザイナーさんが涙を流すんですよね。トップの人でさえも、創設者クリスチャン・ディオール亡き後、その名を冠したブランドを背負うことがどれほどの重圧だったのか、それを感じられます。実際に縫製を進める針子さんたちとのやり取りや、発表の場であるコレクション会場の選定・下見・装飾なんかも面白い。
これを最初に観て良かった。なんとなーく持っていた業界のイメージ像とは大きな乖離はなく、輪郭は少しハッキリしてきました。
裏側がほんの少し分かったところで次に観たのが、同じくディオールにおける、お針子さんを主役にした映画の『オートクチュール』。
アトリエの責任者を務める引退間近のお針子が、地下鉄で盗みを働いていた若い女性を、警察に届ける代わりに針子の見習いとして育てようとする話。保管されていたディオールのドレスや、貴重なスケッチ画なども登場する、文化資産としても価値の高い映画になっています。
見習い役を演じるのはウェス・アンダーソン監督の『フレンチ・ディスパッチ』にも出演していたリナ・クードリ。彼女は来る!と私が勝手にネクストブレイクを予想している俳優さんです。
次はシャネル3本立て
調べるとファッション関連の映画って、めちゃくちゃ本数があるんです。見た目に華やかなファッション業界と、ビジュアル訴求の映画は、そもそも相性が良いんでしょう。そんな中で、群を抜いて本数が多かったのが「シャネル」の映画。
シャネルについては全くの無知な私ですから、とりあえずストーリーや主演・スタッフをチェックし、気になった3本を鑑賞してみました。
『ココ・アヴァン・シャネル』という映画のタイトルの意味は、「シャネルになる前のココ(シャネルのあだ名)」であり、内容もその通り、デザイナーとして成功を収めるまでの話になっています。主演は『アメリ』でアメリを演じたオドレイ・トトゥ。
シャネルってヘビースモーカーだったんですね。スッパスパ吸ってました、劇中でも。ポスターでも煙草を持ってたそうなんですが、フランスでは煙草広告が禁止されているので、ポスター回収騒動があったらしいです。
次に観たのが、ファッションデザイナーとして成功を収めた後の時代を切り取った『シャネル&ストラヴィンスキー』。ロシアの作曲家ストラヴィンスキーとの、濁さず言うと不倫しまくっていた期間の話です。
ストラヴィンスキーを演じる”北欧の至宝”マッツ・ミケルセンが、丸眼鏡をかけても相変わらずのイケオジっぷりを発揮する、R18でよい子のみんなは見ちゃダメ映画になっています。
劇中では香水(シャネル N°5)開発の様子も見られます。No.5という名前は、ナンバーの書かれた試作品の小瓶の中から5番目の瓶を選んだということに由来しているそうですが、この映画では作曲家であるストラヴィンスキーに掛けて「五線譜」も関連しているように見せており、非常にエロい演出になっています。
シャネル映画を2本観てみて気付いたことがあります。
「シャネルあんまり服作ってねえ。」
あくまで劇中での話ですが。服を作っているシーンが少ないのです。彼女を題材にした作品では、ファッションデザイナーとしてのシャネルより、自立した強い女性、恋多き女として描かれるケースが多いようです。その理由を次のドキュメンタリーを観たことで納得しました。
55分というコンパクトな時間で解説してくれる(そのかわり情報ツメツメ)ドキュメンタリーなので、お手軽にシャネルについて知りたい方にはとてもオススメな『ココ・シャネル 時代と闘った女』。
初めて知ることが多くとても勉強になりました。元々はキャバレーで歌っていたことや、ピカソとも交流があったこと、第二次世界大戦中にはナチスの諜報活動に関与していたこと、それにより戦後は逆風があったことなど、とにかく波乱万丈な人生だったようです。
ファッションデザイナーとての功績はもちろん素晴らしい。けど映画にするのなら、コンテンツにするのなら、シャネルの人生にはファッションデザイン以外にも、フォーカスして見せたい魅力的な部分が沢山あるので、必然的に作品数も多くなるのだと思います。
プラダを着た悪魔とそのモデル
そういえば観てなかった『プラダを着た悪魔』。
好きな人はたくさんいるし話もよく聞くので、観たつもりになって実は観てない映画が沢山あります。これもその1つ。でも今回ちゃんと初鑑賞。
でも正直に言うと『プラダを着た悪魔』は、アナ・ウィンター関連のドキュメンタリーを観たくて、その予習で鑑賞した映画だったんです。(インタビューの予習の予習という遠回り。)
アナ・ウィンターというのは、アメリカ版「ヴォーグ」の編集長で、『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープ演じる鬼編集長のモデルであると言われています。(ヴォーグ編集長のアシスタントをしていた原作著者は、一応否定しているけれど。)
まぁ真偽はどちらでも良いんですが、そう言われる所以が彼女にはあるのだろうし、どんな人間なのかに興味がありました。そして、わざわざ遠回りをしてでも観たかったのがアナ・ウィンターにフォーカスした『ファッションが教えてくれること』という、こちらもドキュメンタリー映画。
原題は「The September Issue」。
意味は「9月号」です。
ヴォーグの毎年9月は特集も組まれる特大号で、その締め切り5か月前から編集者やデザイナーに叱咤激励しつつも、仕事をこなしまくるアナ・ウィンターに密着しています。確かに超厳しいスパルタな彼女ですが、とにかく仕事に対して真摯なのは観ていて伝わるので、特段イヤな感じはしません。
さらにアナ・ウィンター関連で観たかったのがもう1本。
『メットガラ ドレスをまとった美術館』。メットガラはテレビでもよく取り上げられるのでご存知の方も多いかもしれません。私も、存在自体は知っていました。『オーシャンズ8』で宝石を盗むために潜入したのがメットガラの会場だったからです。
そもそも「メットガラ」とは、毎年5月の第1月曜に、ニューヨークのメトロポリタン美術館で行われるファッションの祭典で、主催者はアナ・ウィンター、同美術館の運用資金を集めるために開催されています。
衣裳が、絵画や彫刻などのように美術品として扱われないような風潮もある中(そのような論調があることを初めて知った)、美術品としてどのように企画・展示するかという美術館の裏側のドキュメンタリーとしても見応えがあります。
この映画で密着している2015年のメットガラで開催されたのは「China: Through the Looking Glass:鏡越しの中国」。テーマが中国ということもあり、アーティスティック・ディレクターには映画監督のウォン・カーウァイを迎えるなど、映画好きにとっても食指が動く内容になっていると思います。
ほかに観たドキュメンタリー
インタビューにあたってはもっと映画を観てたんですが、ちょっと本数が多いので紹介だけに留めます。マノロ・ブラニクの映画なんかも凄く音楽が可愛い映画でしたし、ぜひ観て欲しいです。
そして一応、こんなに準備して臨んだインタビューなので、もう1回リンクを貼って宣伝しておきます。ご興味ある方、こちらも是非ご一読ください。
▼私でも知っているほどの有名デザイナーだから観た
▼コサージュ→「花」の連想で観た(この人のデザイン好きだ)
▼メゾン ミハラヤスヒロはシューズが人気のブランドなので観た
▼セックス・ピストルズが好きなので観た
▼プレタポルテの勉強をしてたら登場したから観た
最後までお読みいただき本当にありがとうございます。面白い記事が書けるよう精進します。 最後まで読んだついでに「スキ」お願いします!