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上野千鶴子・結婚報道――『未婚中年ひとりぼっち社会』の著者は思う。

 ネットで「上野千鶴子は結婚していた。言行不一致だ」などと書きたてているので、週刊新潮の3月2日号を購入。新潮ではさすがに慎重な書きぶりで、「結婚していた可能性もあるが、養子縁組の可能性もある」としている。週刊誌らしくちょっと煽ってみましたというところか。つまらないことに、小銭を使ってしまった!

 ただ私は上野の非婚主義は独断的でヒドイと思っている。そう思ったのは上野と岡村靖幸の対談を読んだ時だ(岡村靖幸『 結婚への道――迷宮編』マガジンハウス、2018年)。

「結婚して、落ち着きたい」という岡村に対して、上野は「そんなものは長続きしない。自分の身体の性的使用権を生涯にわたって特定の異性に対して排他的に譲渡する契約」という意味での結婚は「幻想だ」と斬って捨てていた。さらに、これはフリー・セックスでもないと付け加えるだけで、結婚のオルタナティブを上野は何も示さずじまいだった。

 岡村や一般読者の感想としては、一般人の「落ち着きたい」という切実な欲望についてまともに答えおらず、ただ結婚が否定され、「じゃあどうすればいいのか?」という疑問を残すだけだろう。実際、岡村はとても上野センセイについていけないという反応を示している。

 こうなると「フェミニズムなんか近づくものか」という気持ちに多くの人がなっても仕方がない。またフェミニズムを支持する人も「結婚はタブー」という雰囲気を醸しだす。

 これは結構いいことも言っているフェミニズムにとっても一般人にとっても不幸なことだと思う。そこで、拙著『未婚中年ひとりぼっち社会』では旧来の結婚の形にこだわらなくてもいいが、結婚の重要な部分「お互いを長期にわたってケアし合う」という意味での“持続的親密性”は維持すべきだと論じた。

 ただ拙著の主張は孤立無援という訳ではなくて、エリザベス・ブレイク『最小の結婚――結婚をめぐる法と道徳』白澤社、2019年という研究書と近いと感じている。こうした議論をもとにすれば、多様性を認め、かつ多くの人が受容可能な制度的改編の道も開けると思う。

*写真はhttps://twitter.com/okamura_kekkon/status/1056122696147202049
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