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フィンランドと映画「かもめ食堂」私と共に、いい感じに変わろう。

映画「かもめ食堂」を観た。

フィンランドのヘルシンキに行くことになった時、フィンランドと言えば何だろうか?と思いつくものを列挙してみた。

サーモンスープ、シナモンロール、マリメッコ、ムーミン、かもめ食堂

と浮かんだくらい、フィンランドを舞台にした有名な日本の映画。

日本食レストランを切り盛りするサチエという女性と、ワケありな二人の日本人の生活を切り取ったお話。
淡々とした日々の中で、人生において大切なものがぎゅっと描かれている。しばらく心がほかほかする、そんな映画だった。

とはいえ、ヘルシンキを回った時はタイトルしか知らず、映画を観ながら、数年前の旅を思いだした。

***

セントレアからヘルシンキ行きの飛行機が安かったので、ヨーロッパ一人旅の入国の地に決めた。へルシンキからタリンにフェリーで行くことにしており、一日だけの短い滞在だった。本当は、オーロラとかサンタクロース村とか色々行きたいところがあったけど、今回の旅のメインはその先だったので街をぷらぷら歩くにとどめた。

街の中心でカモメを追いかけた。

ヘルシンキ大聖堂前

音楽を演奏している姿を見て、ヨーロッパに来たなと感じる。

管弦楽なところが素敵

港の市場を覗いた。
オーストラリアやニュージーランドで見かけた観光客も賑わう大規模な魚市場とは違う素朴なマーケット。

観光客向けではない本物の魚市場

お昼と夜の間の変な時間だったので、サーモンスープが買えなかった。

結局スーパーでお惣菜

船に乗って、タリンへ向かう。

タリンへは2時間ほどの船旅

北欧はきっとまたいつか行けるだろう。
(そんなこと言ってすぐにコロナ感染が広まり、海外旅行にはなかなか行けなくなったし、娘も産まれてそんな日が来るのはいつだろうか…状態。)

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映画の良かったところは2つある。

まず一つは、幸せは比べるものではないということ。
私は昨年、娘が産まれて、今までの自分の幸せは何だったんだ…と思うくらい幸せだと思った。とんでもなく大切なものを生み出してしまった。夫も両親も義両親も心から喜んでくれて、家族の繋がりを感じ、人生の幸せとは家族を大切にして、共に生きることに違いないと思った。
でも、この映画に登場する事情の語られない三人の女性は、結婚適齢期を過ぎて一人でフィンランドにいる。三人で生きているわけではなく、それぞれが一人の人生を生きており、偶然、同じ時間を過ごしているだけに見える。
サチエさんは、淡々と異国の地で、自分の信じることをやりたいことをやっている。(やりたくないことをやらないだけと彼女は言った。)
ミドリさんは、寂しがりで、何か日本で傷ついたようだけど、前向きに人と関わって生きている。
マサコさんは、両親の介護を終え、ゆっくりするために、自分の時間を取り戻すために異国に来た。
私を分かって欲しい!たった一人の理解者と共に生きたい。
そんな私の気持ちが恥ずかしくなるほどに、一人で生きる彼女たちは清々しく楽しそうだった。
周りと比較して、幸せを定義づけてる自分がいるような気がした。

二つ目は、変化を穏やかに受け入れてるところだ。
作品の中でとても印象的な会話がある。

「でも、ずっと同じではいられないですよね」
「人はみな、変わっていくものですから」
「いい感じに変わっていくといいですね」

私は、出産を経て、母になって生き方が大きく変わった気がした。その変化は幸せで、嬉しいはずなのに、戸惑いも大きかった。死に向かって生きているんだなとしみじみ思ったし、子供時代の甘やかされた日々を求めたし、自分らしくという言葉を免罪符にして好き勝手生きていた自分に戻りたかった。
変化を受け入れられず、娘の可愛い寝顔を見ながらさめざめと泣いた。

でも、この言葉の通りなのだ。
私たちは同じでなんていられないし、どうせ変わるなら、いい感じで変わりたい。
強烈なハッピーエンドや成長や功績なんてなくて良いから、いい感じだなと思える日々があれば良い。
それが人生を楽しむ大切なことなのかもしれない。

***

愛する家族に囲まれて、幸せだ。
もうすぐ赤ちゃんじゃなくなる娘に、ずっとこのままで居てって心の中で願うくらい寂しく愛おしい。
夫に全てを理解してもらいたい。

でも、私の人生に全員がいつまでもいるわけではない。寂しいけれど、私たちは人生の一部分を偶然共有しているだけなんだと思う。あの映画の三人みたいに。だからこそ、私はたった一人の私と共にいい感じに変わっていきたい。

またフィンランドに行く時は、どんな私に変わっているだろうか。


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