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#ホラー
地の底の魔女 【「魔女のいた夏」前段】
ぼろぼろのランドセルを背に、少年は山道を歩く。
林を抜け、藪を分け入って、トンネルの前まで来た。
岩山を掘ったトンネルは長く、出口は豆粒のように遠い。
少年は中に入った。
夏の外気から一転、肌がひやりとした。
少年は懐中電灯を出す。頼りない光が暗闇を照らした。
じっとりした空間をしばらく行くと、あった。
壁の途中に、木の扉。
ドアノブもある。
おととい、命令されて先頭を
放火除霊師 火我萌絵の事件簿
「燃やしましょう」火我さんは言った。「この家は燃やした方がいい」
「何だと? 君は馬鹿か?」
松下氏の叫びが奥座敷に響く。
「ここは重要文化財だぞ。『松下家旧邸宅』だ。明治建築の粋を結集させた、日本が誇る」
「どうでもいいですね。ここは燃やした方がいい。除霊を依頼したのは貴方ですよ」
「しかし火をつけるなど」
「火をつけるのではありません。燃やすのです。お焚き上げと同じです。水野君、準備を」
「