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「ハリー・ポッターごっこ」#シロクマ文芸部

 布団からはみ出る足の長さを気にして、息子は毛布を短めのタオルケットに変えた。「ハリー・ポッターごっこ」の最中の話である。黒いローブを背負ったスネイプ先生のつもりらしい。私と娘もそれぞれ毛布とタオルケットを体に巻いて役作りをする。いつの間にかスネイプ先生から「封印されている化け物」へと役を変化させていた息子から配役が発表される。
「健ちゃんは封印されている化け物、ねぇねはハーマイオニー、パパはハリー・ポッターとロンとマルフォイとダンブルドア先生とハグリッド!」
 いつものことであるが、私の負担が半端ない。

 金曜ロードショーで「ハリー・ポッター」シリーズが連続で放送されており、録画したものを少しずつ観ている。怖い場面に息子が怯えたりもするが、印象に残った場面を演じたりするようになってきた。「暴れるといっそう絡みついてくる植物」に捕まった時に、ハーマイオニーに「静かにしていて」と言われ続けたのに静かにせずに苦しんでいたロンを、私にやらせたがる。

 ごっこ遊びという即興芝居は、シナリオライターが複数絡むとグダグダになっていく。魔法演習の最中に不気味な声が響き、ハーマイオニーが倒れる。脳と心臓を表している小さなランプの光(100均)が赤く光り、ハーマイオニーの命の危険を知らせている。そもそもの原因を調べるために防犯カメラの映像を確認してみると、マルフォイの部屋にあったハギーワギー(怪物)の人形を、ハーマイオニーが持ち去っていたのが原因だったらしい。ちなみにダンブルドア先生のパンツには穴が開いており、それはマルフォイが空けたものだ。ダンブルドア先生はパンツを25枚持っているが、全てに穴が空いている。ダンブルドア先生を「校長先生」と呼ぶ際に、「五条悟」「胡蝶しのぶ」と、似た響きを持つ名前のキャラも乱入してきたが、シナリオに関係ないのですぐに排除された。
 
 最終的には「ロンの妹が、ロンがハーマイオニー好きなことに嫉妬して、ハーマイオニーに呪いをかけた。ゾンビ化したハーマイオニーは封印されていた化け物を開放して、ハリー・ポッターたちに襲いかかってくる」という展開になった。要は子ども二人にぼこぼこにされる私という図だ。ほどほどにぼこぼこにされたところでお風呂の時間となった。

 私には兄がいるが、幼い頃にこのような遊びをした覚えはなかった。一人遊びの記憶が多い。本当はいろいろなシナリオを誰かと共有して遊びたかったのかもしれない。

 演じている最中に、暴走するハーマイオニーにロンがぼこぼこにされる場面があった。実際には当てないビンタに合わせて顔を左右に動かす。「バシィ!」「ドガァ!」といった効果音に混ぜて、時折「ポょん!」「ぺにゃ!」といった、あり得ない音を混ぜると息子が笑ってくれる。

 休日の一場面をそのまま書いてみました。

(了)

シロクマ文芸部「布団から」に参加しました。
ごっこ遊びの際の配役は「健ちゃんは悟空、パパはベジータとフリーザとラディッツ!」みたいな感じで分けられます。声色と立ち位置の変更で対応しています。


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