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【料理代行】 3年間の振り返り 後半〜サービス内容とマッチング〜


こんにちは。
今日は、前回に引き続き、3年ほど続けた料理代行のお仕事について振り返りをしていきます。

前半の記事では、私が料理代行というお仕事をどのように始めていったかを書きました。

後半では、どのようにブラッシュアップさせていったか、自分の特性や強い部分をどのように把握し、スタイルを決めていったかというところを書きます。



1、ほしい情報がない

前半の記事でお伝えしたように、私は料理代行の仕事を、民間の家事代行会社をとおして依頼を受けることから始めました。

サービスを始めてしばらく経つと、お客さまごとに求めるものがかなり違うことがわかり、こちらの柔軟性次第で、もっとそれぞれのご要望にお応えできるのではないかと感じるようになりました。

そのためには自分でサービスを立ち上げてしまうのがベストだろうなというのはすぐに結論が出たものの、どんな段階を踏んでそれを実現すればいいのかは、少しリサーチしたり、考えたりする必要がありました。
独立にあたって考えたことと、想いのようなものはこちらに書いています。



何から始めればいいのか?と悩んだ私がまずやったのは、とにかく情報を集めることです。「料理代行 / 始め方 / 独立」などで検索するところから始めました。が、「料理代行 始め方」で検索するも…

これがなかなかほしい情報が得られませんでした。

お掃除サービスの始め方が出てきてしまったり、出張シェフのSNSに辿りついてしまったりと、確かに共通する部分はあるんだけど、違う。
少しずつワードや切り口を変えて調べるものの、フリーの調理師として代行という職種を選ぶ人がまだまだ少数なのだということが検索結果から読みとれました。

当時はコロナ禍真っ最中、営業を自粛している飲食店も多く出張料理を始められた方々もたくさんいて、その人たちのプロフィールもよく見かけていました。

仕方なく似た職種や、似たサービス業態の方々の発信から、自分に必要な情報をあぶり出していきました。私自身も同時進行でお客さまのご要望を直接きき、サービスも提供している段階だったので、他者の情報と自分の経験を重ねることでリアルにイメージでき、情報の取捨選択に役立ちました。


2、 決めなければならないこと


ある程度情報を集めたら、まず決めなければいけないのは何か?
価格だったり、訪問する範囲だったりといろいろですが、何よりもまず決めなければいけなかったのは、サービス内容でした。これが決まらないと契約する保険が決まらず、保険が決まらないと、利用規約を作ることができません。

「やることとやらないことを決めないと何も進められない」ことを痛感しました。

具体的には、食材の買い物代行をするかどうか、ご自宅の鍵をお預かりして、不在時でもサービスを提供するかどうかなど、料理の提供以外での「オプション」について考えることが多かったです。

サービス内容については、どのようなものがベストか?と考え始めると終わりのない作業になってしまうので、ある程度大枠が決まった段階で保険を決めました。とにかく、ここは実際に経験されて発信されている人が見つからず、リアルに必要な保険内容がどういうもので、費用はいくらで、どこで契約すべきなのか?など、ひとつずつ調べて進めていきました。

私の場合は、個人でお受けするサービスも基本的には代行会社を通して受けていた依頼内容と変えずにスタートしましたが、規約やプライバシーポリシーの作成は専門の方に依頼しました。

始めてから整えていけばいいと考えていたので、とにかくまずは必要最低限というか、ここが決まれば始められるというラインを決めて手続きをし、そのあとは具体的な手を動かす作業に入っていきました。


肉じゃがやひじき煮といった慣れ親しんだおかずのリクエストは多い。


3、 レビューを読み解く。



次にやったのが、それまでいただいていたお客さまからのレビューをひとつひとつ読むことでした。

私が登録していた会社ではスタッフ専用のアプリがあり、自分がサービスに伺ったお客さまからレビューが届く仕組みになっていました。

レビュー投稿は任意なので、すべてのお客さまではありませんでしたが、どのお客さまが何をフィードバックしてくださっているか、こちらでもわかるんですね。

私の場合はすでに100件を超えるレビューをいただいており、その中でみなさんが「何について語られているか」をみていったんです。成果物が料理なので「おいしい」という評価は前提になりますし、そもそも「おいしくなかった」ことをわざわざ伝えてくる方はほぼいません。なので、おいしさ軸の評価は一旦わすれて、それ以外の部分を見ていきました。

具体的に何をしたかというと、地味なんですが、お客さまが使われている言葉を、ノートに正の字で数えていったんですね。

すると「コミュニケーション」と「バリエーション」という言葉がよく出てきていることに気がつきました。





料理を提供するという部分は同じでも、飲食店などとは違い、代行業では事前のやりとりが必ず発生します。これは前半の記事で詳しく書きましたが、1回のサービスでどんなものを作るか?から始まって、サービス後の料理の保存方法や、お客さまによっては料理の感想まで、アプリ内のチャット機能を使い、コミュニケーションをとる必要があります。

当日サービスに伺ってから(実際に入室してから)も、調理器具の場所や使用食材の優先順位など確認事項があり、それらを共有してから作業に入ることがほとんどです。

説明がわかりやすく簡潔だった、作業に集中していて余計な気をつかわなくてすんだなど、サービスを進める際のストレスのなさを評価いただいているものが比較的多かったんですね。

また、バリエーションについては、1回3時間のサービスで、その時間内で作れるだけ作るわけですが、これは8品から15品くらいとお客さまの優先順によって変わります。

できあがった料理の品数に関わらず、バランスとしてバリエーションが豊富だった、△△から◯◯まで幅広く、など、味付けや調理法が単調にならないことを評価していただいているものもわりと多かったんですね。

誰に何を褒めてもらっているのか詳細を自分で把握することは重要です。評価がうれしいというだけでなく、その中から自分でも特にまた伺いたいなと感じる相手、つまり相性がよい可能性が高いお客さまの反応をみて、方向性を見極めなければならないからです。


パンチのあるもの、淡白なものを作り分ける。


4、 お客さんが伸ばしてくれるスキル

そのように、まずは「お客さんがどう感じているか」を確認して、それを受けて、自分として伸ばしたい部分はどこだろうかと考えました。
いずれにせよ、集中できる部分というのは限られますから、先にそれを決めてしまおうと思ったんです。

100件以上の依頼を受ければ、良くも悪くも毎回さまざまな「反応」を受け取ります。そのなかで、より自分が嬉しかった反応を整理していきます。
これはマッチングの精度を上げるために必要です。
評価してもらったことのなかで、自分自身もそれを喜ばしいと感じるところを見つけていくイメージです。これが合うお客さまに出会うためにいちばん考えたところかもしれません。そしてこれは双方のメリットのために必要な作業だと思います。

私自身は、単発のお仕事も受けていましたが、基本的には長く通えるお客さまをベースに考えます。これは自分のためでもありますが、お客さんのためでもあるというのが私の考えで、というのは、知らない人を家に上げるというのは、どんなにそう見えないお客さまでもストレスには違いないと思うからです。

お客さんの需要が様々だから、いろいろなものを作れるようになりました。

関係性ができてきた人にサービスを頼むのと、毎回単発で初めましての人に頼むのでは物理的、心理的に準備が増えるので、そういう意味では価値の高さが変化します。お客さんにとって余計なストレスはないに越したことはないし、情報が蓄積されることでサービスの質をあげることが可能になります。

私の場合は、自分がどんなお客さまを探したいのか?というのはある程度見当がついていました。自分が目指すべきお客さまとの関係性のイメージが持てていた、といってもいいと思います。

なぜか。

これは、以前べつの仕事で学んだことがあったからです。
どんなお客さんが自分のどういう部分を喜んでくれたか、それを受けて自分は何を感じ、どうなっていったかという実体験があったんですね。
これはかなり前に、別の記事で書いています。一部引用します。

自分がこれからやっていくことでどんな価値を提供してその相手と一緒にどうなっていきたいのか。
と噛み砕いて考えることができました。
そして、自分のお客さんとそこにいる自分を思い出しているうちに、
自分はそれを知っている、(その質問の答えということですが)そう感じて、あ、じゃあ大丈夫だ、と。
目指す場所わかったわ、みたいな感じです。
戻ってこられる価値観がある強さを感じました。
どういうことかというと

自分は今後自分のお客さんとなる人とも、こういう関係を築けるといいな、と感じている。そして、それはどんな仕事でもおそらく変わらない、ということがわかったんですね。
場所とか職種に縛られることなく、そこを目指せばいいんだよ、と。

note: 自分が楽しく働くから、提供できること。

私が上の記事を書いたのは、2020年の5月で、料理代行で独立したのは2021年の7月なんですが、この記事のなかで触れている「今後自分のお客さんとなる人」が、代行のお客さんにあたる部分なんですよね。

すでに目指す場所をもっているという状態だったのは、まったくのゼロからスタートするより、大きなアドバンテージがあったと思います。

発見される自分、という言葉をよく使うのですが、これもその当時のお客さんたちに発見してもらった自分であり、日々たくさんの反応をもらうなかで、自分のカスタマーコミュニケーションの土台となる大事な部分を育ててもらったと思っています。
ひとことでいうなら、「こういうお客さんに喜ばれたい」というイメージがあったということでしょう。

実際に長く通わせていただいたお客さまには、おまかせしてもらう部分も多く、そのなかで自分が得意なことを伸ばしてもらったと思いますし、料理の作り手としての自分に対し、別の見方をするようになったところもあります。そのような、目指していたお客さまとの関係性によって得られた経験が、同じ調理という仕事を場を変えてするなかで本当に役に立っているんですよね。



5、 旗を立てる。


これは私の意見ですが、特に個人でサービスを展開し、継続していく場合、自分のモチベーションというのは重要で、それにあたり用意しておきたいのが、先述したように

自分がこれからやっていくことでどんな価値を提供してその相手と一緒にどうなっていきたいのか。

という問いの答えです。
これは人によって違うからこそ「自分はこうである」と決めていることが大事になるのではないでしょうか。

逆にいうと、この方針があれば個別のケースに対応できます。
そうでなければ毎回ちがう状況、突発的な案件に右往左往してしまうでしょう。私自身、想定される問題として、誰の依頼を受け、断るかという場面でそこに立ち返らなければ場当たり的な判断になり疲弊すると思ったからこそ、仮にでも結論を出しておいたのだと思います。

これは、よくメタファーで使われる「旗を立てる」という行為に近いと思います。決意、という言葉でもいいのかもしれません。自分のなかに判断基準を作っておくということなんでしょうね。


 


余談として、これは今、自分が会社に属してみて思うことを。
この問いの答えを自分で小さくもっておくことはどんなときでも必要ですが、組織で仕事をする上で、それはたぶん、表面上マストではないんですよね。自分の旗は一旦、求められていない。

それよりも、会社のトップである社長の旗が何を示しているのか知っておくことが重要なのだと思います。企業であれば、その会社の社長が、その事業をするうえでどんな価値を提供して、関わる相手とどうなっていきたいのか?を社員が把握していることで、現場で起きることが変わってくるのだろうと思います。社内ポッドキャストが流行るわけです。


今回は2回に分けて、私が以前提供していた料理代行サービスについて振り返りをしながら、具体的にどう始めて、どのようにお客さんを見つけていったのかをみていきました。

料理代行という役割を担い、誰かのキッチンで料理を作り続けた3年間、本当にいろいろなことがありました。そして、本当にさまざまなキッチンにお邪魔し、そこにある道具、素材で料理を作ってきました。

ほかの生活の場に比べると、キッチンというのは、飲食店でもそうですが、本当にそこにいる人の思想が表れるなと思います。古い、新しい、広い、狭いというのはあまり問題ではなくて、どのような機能・条件であれ、その場所をそこにいる人がどう扱っているのかというのが表れる、と考えています。

昨今のヴィーガンに関する論争などが示すように、食べるものや食べ方には哲学が見え隠れしやすいのだなと感じます。

だからこそ、あくまでそのお客さんの代わり、すなわち「代行」として依頼を受けるのであれば、その思想や哲学をできるかぎり読みとって尊重するのが筋なのではないかなと、私自身は考えています。

逆にお客さんの立場であれば、自分が大事にしていることを上手に伝えてあげられると、同じ価格、時間でもサービスの価値は高まるのではないかと思います。

#料理代行  に興味がある、どなたかの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました☺︎





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