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【後編】病歴あり、職歴の空白ありから再就職するまで

割引あり

病歴あり、職歴の空白ありの人へ

 前編では時系列に沿って就活記を書きましたが、後編では病歴あり、職歴の空白ありに不安を抱えて就職を目指す障害者への助言を中心に書きます。もちろん年齢や学歴、障害の種別や程度など様々ですので絶対的な答えにはなりませんがご参考ください。ターゲット層は第二新卒とは言えないが、アラサーで大卒の軽度の精神障害者です。当事者、友人知人にそのような人がいる人には特にご覧ください。

頼れるものには全部頼ろう

 まず最初に伝えたいのは見出しの通り「頼れるものには全部頼ろう」です。一般的な学校・職業生活においては迷惑をかけない、自助努力が評価されることでしょう。しかし、病歴や職歴に難のある人々が単独でなし遂げるのは無謀です。なぜなら健常者より健康や職務経歴においてハンデが存在し、社会生活でも経験不足だからです。その状態で孤軍奮闘を続ければ漫然と時間を浪費し、精神的な健康も悪化しかねません。そうなればそうなるほど再就職は遅れ、希望条件に合う就職が遠のくことでしょう。



 では頼るべきものは何かと言えば「社会保障」です。以下をご覧ください。
            ≪日本の社会保障≫
① 障害年金(個人の状況によるが月5~10万円程度受給できる)
② 自立支援医療(精神科受診と処方薬の費用が1割負担に)
③ 東京都医療費助成制度(住民税非課税世帯は残りの1割負担も免除)
④ 求職者給付(いわゆる失業手当。障害者の給付日数は通常300日)
⑤ 就職促進給付(いわゆる再就職手当など)
⑥ 就労移行支援・就労継続支援(障害者の就職準備や労働訓練を行う)
⑦ 精神障害者保健福祉手帳(障害者控除や都営無料パス、各種減免の適用)
⑧ 傷病手当金(最大一年半受給できる)
⑨ 職業相談(ハローワーク、東京障害者職業センター、東京しごと財団)
➉ 給付金(住民税非課税世帯に支給される現金)
 私が利用そして今後利用予定だけでも(DH込みで)打線が組めましたが、日本は「弱者救済」が充実していると思います。遠い未来がどうなるかは分かりませんが、現時点では弱者への自立支援は整備されています。あとはこれらを知っているか、しかるべき相手に相談できるか、負い目なく利用できるかどうかだと思います。詳細は各自で検索してください。



 これらは基本的に無料利用か、給付されるものばかりです。要は税金のお世話になるわけですが、これは悪いことでしょうか?私は粛々と手続きに従って利用すべきだと思います。なぜなら社会保障の目的の一つに「個人の自立支援」があり、社会保障の理念に「相互扶助と社会連帯」があるからです。私はこれを「国家に依存され続けるよりも、中長期的に見て弱者が労働者・納税者・消費者になるなら、短期的には税金で面倒を見るのはトータルでリターンが大きい」と認識しています。一方、生活保護がよく敵視されるのは「出口のない国家からの支援に見え、稼ぐ・生み出すという国家の成長に寄与しない」と映るからでしょう。もちろん生活保護も権利の一つではありますが。



 順調に生活しているときは拠出する側に立ち、傷病や障害で困ったときは給付される側に立つというのは自助・共助・公助の原則に沿った健全な発想だと思います。自己責任で何とかすべしと主張する人は幸運で強い人だと思いますが、自分や友人知人の経験で一般化するのではなく、国家・国民を俯瞰して救済策を考えるべきでしょう。
 もちろん今後の日本は国力減退、人口減などを理由に社会保障の負担と給付のバランスの見直しが行われ、現行の支援が削られる可能性は高いです。しかし個人的には、自立を支援する制度は価値がありますし、持続的な社会保障制度に貢献する国民を増やす制度は維持されるべきだと思います。



障害者雇用が想定している「平均」は低い

 障害者雇用で働く人々の平均給与や非正規率などを最初に見たとき私は驚きましたが、そうなる理由は前編で説明した通りです。この段落でお伝えしたいのは、通常の障害者雇用が想定する障害者像は語弊を恐れずに言うと「弱者」が基準ということです。今回は記事冒頭で読者像を定義しましたが、その読者像と平均像には乖離があるので、自分なりの対策を練ってほしいです。



 ①学歴の場合
 多くの求人は学歴不問です。高卒や特別支援学校卒も含めた求人です。この場合、たとえ事務職でも知的労働は強く期待されていないでしょう。つまり「替えが効く業務」のため低賃金になります。病歴や職歴に不安のある大卒者もハードルを下げて志望することは可能ですが、応募書類にて「業務の幅を広げたい」や「スキルアップしたい」など積極的な知的労働を期待した記述をすると、かえって企業側が求める「低賃金で軽作業やルーチン業務を黙々と行う人が欲しい」という意向とミスマッチが生じて不採用になる確率が高いです。従って、最初から大卒以上の求人に絞るか、志望動機は募集要項から推察できる人材像に即した内容に修正すべきでしょう。


 ②業務内容の場合
 前段落と関連しますが、求人票の記載内容に外れた熱意や能力を示すと書類選考で落ちます。例えば事務職の場合「一般事務」や「アシスタント」といった表記で、正社員総合職の下で働くことを前提とした求人が多いです。したがって「クリエイティビティ」や「リーダーシップ」などをアピールしても個人的には逆効果だと思います。数は多くありませんが「総合職」を中心に志望するか「転勤あり」「残業月〇〇時間」など負荷がかかることを前提にした求人に絞るか「〇〇の経験〇年以上」のような経験や資格が必須条件の求人に重点を置くべきでしょう。



 ③給与の場合
 ①と②の掛け合わせで③も決まりますが、給与は企業と労働者の双方が提供できた価値を示す指標です。想定読者層が就活をする場合、フルタイムで「額面で月給20万円以上」をボーダーにしたらいいと思います。それ以下では恐らく労働者側が自分のアウトプットと給与にギャップがあると感じ、金銭的理由から短期離職になりかねません。賞与も年俸制でない限り「あり」でないと不満度が高くなるし、昇給もないとやりがいはなくなるはずです。もちろん給与は「高望み」しやすい条件なので第三者の見解も入れてから、あなたに合った希望条件を設定しましょう。もちろん「障害年金」の受給や「資産運用」の活用で給与の低さで悩むことを解消することもできます。


一番楽なのは…

 ここまで社会保障の利用の重要性、障害者雇用の平均像に対する見解を書きました。特に後天的に精神障害を患い、健常者時代が長かった私のような人にとって、障害者雇用の「平均」を受容することは難しいでしょう。重い障害、低学歴、何度も転職、中高年であるなど「諦め」がつく要素があるならまだしも、一度の病気で人生を「消化試合」にするのはやはり残酷です。



 そしてハローワークや就労移行支援なども平均を基準に対応するので、困惑する人もいるでしょう。このような人は障害者雇用専門の「転職エージェント」を利用すると一番楽に就職できるかもしれません。履歴書・職務経歴書を参照しつつ面談をする中で、エージェントは求職者のスペックを算出し、その人相応の求人を提示してくれます。私もそれを利用して内定を獲得しました。ただ、彼らの助言に反発する人は厳しいと思います。不安や疑問があるなら率直に質問すればいいですが、まずは行動するという素直さがないと熱心に助けてくれません。身の丈に合った「見合い相手」を用意したのにどうして拒否するのかとなるからです。エージェントは福祉でやってるわけではなく彼らには彼らの利益を見越して支援しているのです。一人で戦わず、必要な資源と参謀を持って再就職を成功させましょう!

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