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【翻訳】詩人グレース・ヒバード その2 ~日本の蝶々の唄~

日本の蝶の唄
Japanese butterfly song

死を経て私は
白い翅の蝶に生まれ変わる、
 我が花嫁ティスィは星のよう。
きゃしゃな翅では昇れそうにない
 桜の上にひろがる空までも
 このままなら、美しいティスィのもとにも。

もしも私が星なら、
風吹く空を敏速の翅で舞い上がり
 こちらに来てくれようか。
もしも私が小さな白い雲なら、
我が花嫁を隠せるだろうに
 見上げる者たちの目から。

我がティスィは万物のために輝く
ああ、仏陀よ、花芯へと
 ティスィを落としたまえ。
もはや、この身が飛べぬゆえに、
星がきらめくこの空と
 悲しや、この身が無縁たるゆえに。



このたび、紹介したのは、アメリカの女性詩人であるグレース・ヒバード(1835-1911)が1907年の詩集Forget-me-nots from Californiaに収録した作品です。オリジナルの文は、こちらのInternet Archiveのリンクよりチェックできます。

「生まれ変わり」、「蝶」、「仏陀」といったフレーズが現れるこちらの作品からは、日本の文化事象からグレース・ヒバードが影響を色濃く受けていることが認められます。とはいえ、ティスィ(Ti-si)という女性らしき名前が謎ではあります(私個人としては、日本語より中国語の響きに近い気がしています)。

本作には日系人移民の多いカリフォルニア州に暮らしていた影響があると推測できるでしょう。また、1900年代は、私の研究するジャポニズム演劇The Darling of the Godsがアメリカの各地でセンセーションを起こしていたので、その影響でもあるかもしれません。しかしながら、作者がいかにして日本文化に触れたかについて、正確に「これだ!」と断言することは、証拠に乏しい現時点では叶いません。

さて、作者のグレース・ヒバードの経歴ですが、次の記事でまとめております。以下の記事もよろしければ、ご一読くださいませ。よろしくお願いします。


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