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【翻訳】詩人ロード・ダンセイニ ~雪よ、東風に舞い上がれ~

雪よ、東風に舞い上がれ
Snow on the East Wind

黒い牡馬が来たり、
蹄で丘という丘に、鼓のごとき音を響かせ
はるばるコーカサス山脈より
三日をかけて我らのもとへ。

背に運びしは軽らかなおみななるも、
なんと無慈悲な御し方であったか。
そっと下乗すると
馬は夜間に我らの家のそばで息絶えたり。



今回、紹介しましたのはアイルランドを代表する幻想作家ロード・ダンセイニ(1878-1957)が詠んだ詩の翻訳になります。ファンタジーのファンからは『ペガーナの神々』や『エルフランドの王女』などの作品が知られていますが、戯曲家として発表した作品が大正時代に広く受容されました。

詩人としてのロード・ダンセイニを紹介する事例はさほど多くない現状ですが、ここに紹介いたしました(実を言うと、過去にも2例ばかり紹介しておりますので、そちらへのリンクも貼らせていただきます)。

この度あらたに紹介したオリジナルは1929年10月刊行の初詩集Fifty Poemsに掲載されたもので、原文はこちらのGoogle Booksのリンクから確認できます。

1944年に著した自伝While the Sirens Sleptで、ロード・ダンセイニはこの作品について短いながらも自ら解説をしています。

気象現象を詩という形に言い換えるのが身近に感じられるように、もう一篇の詩を引用しましょう。三日間、〈東〉からの風が激しく吹きつけていた際に、コーカサス山脈における大雪のことと、この山脈から降りてくる狼たちのことを知りました。そうして、嵐に見舞われた三日目の夜の後にあたる(1929年の)2月15日のことです。純然たる静寂が広がるなか、野が一面に雪に覆われて輝いていました。そうした出来事を私はこのように韻文にしました。

While the Sirens Slept (1944) Chapter XXV

この解説が終わるやいなや、ロード・ダンセイニは上掲の詩Snow on the East Windを載せています。雪雲と雪の巧みな比喩がたいへん印象的な仕上がりとなっています。

さて、作者であるロード・ダンセイニについては、東洋とのつながりにフォーカスをおいて一度まとめております。関心を抱かれた方はぜひ次の記事もご覧くださいませ。


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