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〇〇、な、小説たち

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片道通勤2時間の、最も有効な活用方法を見つけました。
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真空ジェシカ「俺でなきゃ、見逃しちゃうね」

真空ジェシカ「俺でなきゃ、見逃しちゃうね」

「俺でなきゃ、見逃しちゃうね」
にっこり笑って、彼はあの時、私の身体を抱き寄せ、引き上げたのだった。

なにもないのに涙が出るとか、生理が来ないとか、食欲が湧かないとか、そういういわゆる不調、みたいなことは無かった。

大丈夫。

晴れた日にはカネコアヤノとネバヤンを聴いて、雨の日は小袋成彬とyonawoが多めのプレイリストを聴く。
久々に会う友達との約束にはお笑いラジオを聞き、思わず笑ってしまわ

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カベポスター「愛してるぞゆりあッ!」

カベポスター「愛してるぞゆりあッ!」

「2番いただきまーす」「お、仲良しコンビ、いってらっしゃいー」
小声で売り場から見送られ、水咲とゆりあは近くの商業ビルの7Fのお洒落ランチ、ではなくその隣の2F奥に潜むベローチェに向かう。

ゆりあは女の子らしいその名前のイメージと違わず、恋愛話が大好物な職場の後輩だ。昼休憩(2番)が被り売り場を出るこの瞬間から、ゆりあの恋愛事情アップデートが始まる。

「それでね確か、模様替えしよ!て思い立って

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針の穴を通すようなこと、早織の朝

針の穴を通すようなこと、早織の朝

小さいころ、秒針が進んでいくのを見るのはなんだか怖くて嫌いだった。でも、1秒1秒刻む針の音を、ぼーっとしながら聞いてるのは好きだった。心臓の音はその位置に触れないと気づけないけど、目を閉じて耳を傾ければ、秒針の音は聞こえる。進んでいく音。時間とともに自分もこの世界に揺られ流れているような、不思議な心地よさがあった。

耳がいいと、よく褒められた。

地元のふれあいプールに行っては、スイミングスクー

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フジファブリック「赤黄色の金木犀」

フジファブリック「赤黄色の金木犀」

意識的に、ではなく、気づいたら琉花は、深呼吸をしていた。

―――あ、久しぶり。この香り。このにおい。

琉花の嗅覚とひとつの記憶を呼び起こしたのは、秋の到来を最もわかりやすく伝えてくれる風物詩筆頭にあがるだろう、キンモクセイの香りだった。

琉花は自分の名前に漢字が含まれていることをきっかけに、物心ついた頃から「花」に幾分かこだわりがあり、それは「花の名前は漢字で覚え、漢字で書く」という文学少女

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ママタルト「お前の世界すぎるって~~!」

ママタルト「お前の世界すぎるって~~!」

――なんでSNS探偵なんてしちゃったのあたしは!!
ざらりと猫の舌を触れた時のような感覚を心臓に味わいながら、杏(アン)は必死に考える。今LINEしても大丈夫そうで、かつ自分の事情を知っている友達…。
沙織、妙子、あ、加藤くんにはネタ枠ってことで伝えとこ、それで早く飲み行こうって口実にしちゃえ。

知らぬが仏

さっきから何度も、杏の脳を直撃するこのことわざ。昔からそうだ。幼稚園の頃、公園でみんな

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オードリー若林&星野源「感情って道に乗り移ってる」

オードリー若林&星野源「感情って道に乗り移ってる」

※本日のインスピレーションは、社会人1年目しっかり打ちひしがれしイーストショアにとって金言となったあちこちオードリー2021年6月20日放送分より。そもそもスクショを載せていいのかそのあたりのリテラシーがなってないのでやばいことしてたらコメントでご教示ください。無知―ストショア。それでは本日も、張り切って、どうぞ(?)

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町田

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