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eatreat.エッセイ「ケアと手紙」

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eatreat.はアーユルヴェーダをもとに、料理や執筆など様々な表現を通じて「あたらしいケア」について考えるブランドです。このマガジンでは、私が「ケア」について様々な視点で考えた… もっと読む
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記事一覧

わたしのリズム、あなたのリズム、心地のいい音楽

不安という名前をした、細い橋の上をえんえんと歩いていた26歳の頃、青山ブックセンターで出会…

陽の気が満ちる季節に、山陽にて

作家に会いに岡山へと出かけて、予約を見ながらたどり着いた宿は作家のアトリエから175kmも遠…

さみしさの正体

元気でいてと ぎゅっと抱きしめて 空港へ先を急ぐのさ とは小沢健二の『僕らが旅を出る理由』…

時が満ちたと感じた時が潮時

鹿児島の朝は早い。天然温泉が湧く市内では、朝6:00からまちの銭湯で温泉に浸かれる。アーユル…

存在しない境界線を引いて現れる傷、守られるわたし

渋谷のハチ公で土曜日に行われたウクライナ侵攻反対デモを、少し離れたところから見守った。 …

関係性の中で紡ぐ、わたしの"トーチ"のための本づくり

多くの優れた小説がそうであるように、はじまりは自分がすっかり蚊帳の外からフィクションを楽…

旅の効用

年の瀬に北海道の旅に出たら、太平洋側で、普段あまり雪が降らないこのまちに大雪が降っていた。 雪にすっぽりと囲まれるとあんまり寒くない。 犬ころのようになって、友達と遊んだ。 雪国の人の前で言うのは憚られるけれど、わたしが一番好きな天気は雪の日だ。真っ白な雪があらゆる雑音を吸収して、世の中がとても静かになる。 12年前の秋田の横手祭で、ホワイトアウトして恋人が真っ白な風景の向こう側に行ったとき。いつだったか忘れたけれど正月に、世田谷の祖父の家からパン屋に行こうとして駅から

さようならは仮のことば

一年前のとても暑い夏の夜に、黒くてかっこいい船に乗った。乗船すると間もなく船は荒波へと舵…

まなざしを綴じて、心に触れる

計算が正しければ、付き合いが12年目に入る猫が我が家にいる。 行方不明になった過去があり、…

灯台の光にはご用心

今年の夏休みには新潟の知り合いのワイナリーを訪ねて、葡萄を摘む手伝いをさせてもらった。わ…

"わたし"に触れる、癒す、許す

昔々に読んだ外国の小説で、愛する人を探す男が身体中に刺青を入れながら世界中を旅していて、…

eatreat.の料理をつくる ある1日

朝5:00の起床、天気を確認する。 猫と一緒に伸びをして、人間の自分がどれくらい固まっている…

望みを持って、少し離れたところにいる

昔読んだ河合隼雄先生の本の中で、京都の国立博物館の文化財を修繕する係の方の話があって、こ…

歪みの自然・矯正の不自然

「その人にとっての自然な歪みを矯正すると、不自然になることもあるんですよね」 最近通い直し始めている鍼灸治療院で、背中にボコッと膨らむ側弯症(そくわんしょう)の周囲、背骨に沿ってなかなかに痛い鍼を打ちながらS先生が言った言葉が心に残った。 私の側弯症は思春期に始まったもので、右の背骨のすぐ横側の筋肉にガングリオンのようなポッコリとした膨らみが定期的にできる。今のところその部分に痛みは伴わないけれど、背中や肩・首の張りや足のむくみが現れると少なからず側弯と繋がっていることを