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読書記録:スパイ教室07 《氷刃》のモニカ (ファンタジア文庫) 著 竹町

【燃えるような恋慕も世界が認めないなら断ち切ろう】


【あらすじ】

「この世界を壊していけばいいんだろう? ――汚れて醜い裏切り者として」

モニカの背反により半壊した『灯』は、真相を求めてフェンド連邦を駆ける。

これは窮地に追いやられた少女が、世界を敵に回す物語――。

Amazon引用
登場人物紹介

モニカの裏切りが如何にして起きて、諜報機関の「蛇」に寝返ったのか、その経緯を辿る物語。


モニカの世界を敵に回したかのような立ち振る舞い。
その理由は、リリィに対する秘めた恋慕があった。しかし、憂虞が世界に蔓延る限り、その想いが報われる事は無い。
その想い人の命を守る為に「蛇」に寝返る。
本性を偽りながらも、「灯のメンバーに察して欲しい矛盾した感情。
仲間を裏切る行為は、今までの想い出を汚すような血の滲む物で。
己を犠牲にする彼女は、世界に叛逆した先で。

味方が半壊、グレーテをも敵組織に連れ去られて、消息不明。
動けるメンバーが限られる中、クラウスの指示の元で、連邦内で動き出す「灯」の面々。
現れては消えるミステリアスな彼女の尻尾に追いついた先で。
生徒と教師という立場である、モニカとクラウスの因縁の激突が発生する。
その中で解き明かされる、モニカの想いの丈。


いつでも冷静沈着なモニカに秘められた過去。
芸術一家に生を授かったモニカは何事もそつなくこなせるが家族からは感情がこもっていないと揶揄された。
それ故に、周囲はモニカが恋をして、感情を覚える事を望んでいた。
本当は自分でも、心の底から熱くなれる物を見つけたかった。
そして、家出のような形でスパイになったモニカに、根拠はないが自信家のリリィは純朴な優しい言葉を囁き、無垢に抱きしめる。
その瞬間、モニカは恋に落ちて、初めて自らの熱い感情を知った。

そんな恋を教えてくれた大切な想い人が、敵組織の「翠蝶」の毒牙にかけられようとしている。
秘めたる想いを利用して裏切りを引き出した、帝国の諜報機関の「翠蝶」との悪魔のような取り引き。
自分達側に寝返らなければ、皇太子暗殺の罪をリリィに被せるという巧妙かつ陰湿な手口。
用意周到に仕掛けられた悪意。
本来ならば、仲間の筈のリリィに抱くこの想いを許されざる禁忌の恋。
価値観の自由も多様性をも認めようとしない、狭量で頑迷な時代と世界。

だからこそ、世界を敵に回した。
己のあるがままの想いを認めようとしない世界に迎合したくはない。
ならば、自分が汚名を背負ってでも、リリィを守る為に悪役を演じよう。
追い詰められた仲間をかばう為の身を挺した孤高の氷のような決意と刃のような覚悟を抱く。

誰も理解者がいない孤独かつ破滅的な暗闘に身を捧げる中で。
嘘みたいに今まで築いてきた絆がバラバラに引き裂かれる仲間達。
紅蓮に染まる戦いの中で、「翠蝶」との決着をつける為に動くモニカ。
しかし、「白蜘蛛」と「黒蟷螂」の登場で彼女の安否は、戦乱の炎の中に溶けて消えて。
クラウスとティアさえも敵組織に成す術なく拘束される。

もはや機能不全を起こし、半壊の憂き目に遭う地獄のような苦境に立たされた「灯」に残された希望の鍵。
今まで裏方に徹してきた「灯」の中で最弱と謳われたサラが満を持して表舞台へと上がる。

皆からの想いを託され、残された僅かな力で、この絶望を収束出来るのだろうか?







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