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読書感想:俺にトラウマを与えた女子達がチラチラ見てくるけど、残念ですが手遅れです 2 (オーバーラップ文庫) 著御堂ユラギ

【傷付きすぎた故の不信感、それを抱きしめる愛の連鎖】


【あらすじ】
昔から何かと女性関係のトラブルに巻き込まれる俺、九重雪兎。

幼馴染の灯凪にまつわる事件は落ち着いたけれど、女子大生に合コンへ連れていかれたり、クラスごとカンニングの嫌疑をかけられたりとトラブルに事欠かない。

家でも母さんの様子はおかしいし、お隣の氷見山さんには部屋に連れ込まれるしで――

「私ね、貴方のママからやり直したいの」

「良かったら私のことお母さんって呼んでみてくれない?」

何故か母性が溢れて暴走している……!?

傷つきすぎた彼と傷つけた彼女達による勘違いラブコメディ、待望の第2巻!

Amazon引用

雪兎を守る愛の連鎖の物語。


女難の相を極めし者、それはそう九重雪兎である。女性から距離を取る事で己を守っていた。
しかし、そんな彼のガラスの心に築いた防波堤を女性は構いも無く壊して来る。
ようやく、幼馴染の灯凪にまつわる事件を解決したのに、痴漢の冤罪から救ってくれた女子大生の合コンに誘われたり、カンニング疑惑で繋がった先生から熱烈なアプローチを受けたり。
果ては氷見山の壮絶な暗い過去が明かされる。

灯凪に関わる問題も一旦は解決を見せ、雪兎が自分が傷つく事も厭わずに、痛みを背負い込んだ事で、強引に収束を見せて。
バスケ部に入部した雪兎が、ぬるま湯の中にいるようなバスケ部員たちを叩き直すのを、汐里が熱っぽい目で見つめていた。
そして、灯凪に渡せなかったプレゼントを巡り、汐里との間でちょっとした折衝が巻き起こり、そこで二人の間に友情が発生する。
ここまでで終わるなら、ただほっこりするだけだろう。
だがしかし、彼の女難の相はいつでも牙を剥く時を待っている。

痴漢の冤罪から助けてくれた澪から、恋人役として合コンについてきて欲しいと強引に連れ出され。
その少し前に遭っていた事故の加害者であったトリスティにも接近されたかと思えば、合コンの男性陣からの嫉妬を招いてしまう。
更には、その合コンがバスケ部の強化に繋がったかと思えば、母親である桜花やお隣さんである美月に接近されたり。
彼を見守る美咲が回顧する、雪兎が絡む彼女の過去。
自分が力になれなかったから一つの学級を崩壊させ、彼の事を救えなかったと言うトラウマまっしぐらな記憶。

それどころか、事態は更に面倒な方向に突き進んでいく。
敬愛する睦月の変化を見て雪兎に逆恨みを抱いた副会長、英里佳がクラスごとカンニングの冤罪をかけてきて。
その首謀者として雪兎は謹慎処分を受けてしまう。

散々と雪兎の心を弄んだ癖に、都合良くすり寄ってくる女性達にも、どうやら事情があるようで。
彼に救われたり、トラウマを与えた女性達が強い悔恨の元で、壊れてしまった彼に愛情を伝えようとする。
彼を囲む彼女達の愛の重さ。
全てを捧げんとする涙ぐましい献身さ。
その根底にあるのは悔恨と贖罪の想い。

自己犠牲と元にヒロインを助けてきた雪兎が、これまで積み重ねてきた出会いや縁によって救われていく。
自分に自信が持てず、存在価値を見失っていた雪兎は、実は様々な人々に大切に想われていた。

自分の感情を取り戻そうと考え始めていながらも、未だに不安定さを残す雪兎。
そして、母親の深い懺悔と、また雪兎が巻き込まれる風評被害。
それでも、彼女達と関係をやり直そうと、リスタートする決意を固める雪兎。

無自覚に女性の心を落としていく天然たらしっぷりは流石としか言えないが、そんな彼の人格がどのように形成されていったのか、彼の過去と秘密にも焦点があてられる。

雪兎を愛し、彼に救われた者達が現状をひっくり返すべく学校さえも転覆させようと、団結して行動を開始する。
そして、雪兎が得てきた意外な繋がりが、苦しい状況を覆す最後の鍵となる。

やっと気付く、自分が周りから愛されている事を。こんなにも大切にされている事を。
その自覚が今、彼を縛っていた心の鎖さえも壊す。
彼を守る為に繋がれた愛の輪。
その繋がりの中で自分は生かされている。
それにようやく気付けた雪兎の最初の一歩。

手遅れからの最初の一歩を踏み出した彼を囲む女性の愛が手を繋ぐように連鎖していくのだ。







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