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すごい人

75%の湿度で前髪がうねる。アスファルトの湿った匂いと冷たい風がぐさぐさと私を刺していく。

声に支配されている、と思う。
聴きたい歌があって欲望で埋め尽くしたプレイリストを作る。目に涙が浮かぶほど落ち着く相槌がある。真夜中に走り出したくなる声があって、ベランダで黄昏たい声がある。生きたくなる時も死にたくなる時も耳に金属を挿して今日を終えようとしている。
声に支配されている、と思う。
声に支配され続けたい、と思う。

バケツを手にした駅員がため息を吐く。
ゴム手袋を装着して終電の車内で吐瀉物を片付けている。車内に塩素の匂いが漂う。今はもう車外にいるであろう人間への苛立ちが湧く。やつれた駅員の忙しない動きに美しさを感じてしまう。遠くから横顔を見つめ文字を打ち込む私は異常者だと思う。

サンタの横に鏡餅が並ぶ雑貨屋。片付かない部屋。慌ててつけただろう傾いたイルミネーション。社会人とは、と連呼する大学。店も街も、学校も大人も生き急いでいる。1日1日匍匐前進で進みながら生活しているの。背伸びして先のことなんて見れないよ。地面に這いつくばっているのに。

なんとか生き抜いた
涙とかきわけた人ごみ
あなたは強い人 あなたは強い人

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眠れない夜に

ほろ酔い文学

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