不器用に生きることをを肯定してくれる「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」


このnoteでは、自分が見た映画を紹介していこうと思います。第一回は私が最も好きな映画から。

「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」(2017)

【あらすじ】
渋谷、新宿。二人は出会う。優しくてぶっきらぼうな、最高密度の恋愛映画、誕生。 看護師として病院に勤務する傍ら、夜はガールズバーで働き、言葉にできない不安や孤独を抱えながらも、誰かに甘えることもせず日々をやり過ごす美香(石橋静河)と、工事現場で日雇いの仕事をしながら死の気配を常に感じ、どこかに希望を見出そうとひたむきに生きる青年、慎二(池松壮亮)が排他的な東京で生きづらさを抱えながら出会い、そして、恋がはじまるーー。

最果タヒさんの詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」がベースとなり、石井裕也監督が映像化。この映画、好みがはっきり分かれるのですが、私はドハマリしてしまい、これまで劇場で6回観ました。(観過ぎ。)

この映画のポイントは以下です。

・大衆向けじゃないけれど、確実に響く人がいる作品
脱がない池松壮亮!
・ここは東京

大衆向けじゃないけれど、確実に響く人がいる作品

この映画の主人公は、東京で看護師として働く美香(石橋静河)と工事現場の日雇いで働く慎二(池松壮亮)。華々しい東京の片隅に埋もれて、でも確実に東京の中で生かされている不器用な二人のラブストーリーというのも歯がゆいようなストーリー。

この映画の賛否が別れる理由が、まぁ美香がひねくれていること。
看護士として常に生と死に向き合う彼女は、過去のある出来事がきっかけで、愛や恋に期待をしない。愛する人はいつか自分の元から去ってしまうもの。と思っている。慎二との出会いもなんだか運命のような形なのに、ぶっきらぼう。だけど、自分と似ている慎二との出会いは嬉しかったはず。少しの期待と、少しの不安。

理解ができなかったという声も多く上がる中、私はまるで自分を見ているようでした。

もともとドライな私。適切かは置いておいてわかりやすい言葉でいうと、女の子らしく甘えたり頼ったりなんてことが苦手。期待しても、二股をされたり、強引な女に取られたりなんてこともありました。(赤裸々。恥ずかしい。笑)

だから、美香の愛が信じられない気持ちがとても分かる。
「どうせ私は、やれるかやれないかでしかないのだ。」

美香に癖がありすぎるけれども、こんな感情になったことのある女の子って少なからずいると思う。
だから、女性のほうが共感できる映画かな?

こんな感情になるの馬鹿らしいってわかりながらもひねくれ続ける、そんな私たちを認めてくれるような世界がとても心地いいのです。

でも、そんな美香が確実に恋に落ちてることを表現するシーンがあるんです。(以下、ネタバレ注意)

美香、好きとか愛してるとかうまくいえないからさ、手を握ったりもできないからさ、前を歩く慎二のリュックをちょこんとつまんで、「ありがとう」「ありがとう」と繰り返す。私には分かるんだ!あの「愛してる」を越えた「ありがとう」という言葉!美香の不器用さを表した、個人的に大好きなシーンです。

脱がない池松壮亮

最近は減ってきたけど、この映画の公開前はしばらく濡れ場が続いていた池松壮亮。この映画の中にもホテルに行くシーンがあるんですけどね、なんと脱がない。ヤラない。(ちなみに美香とじゃない。)

劇中最大のラブシーンがまさかの「頭なでなで」ですよ。なんてピュア!
この池松壮亮がですね。とてもいいんですよ。美香と出会って少し戸惑う慎二。嫌な予感を感じる慎二。嫌な予感が的中しちゃう慎二。美香に会いたくて頑張る慎二。美香を優しく受け止める慎二。あと、YUIのCHE.R.R.Yを歌う慎二。

ひねくれ者の美香同様、この慎二も変わり者。でも、優しさと柔らかさで溢れた慎二が、終盤にかけてそんな東京も悪くないのかもしれない。って思わせてくれる。希望をもたせてくれて、最後はみんな、彼に恋してしまう。

ここは東京

この映画は新宿と渋谷が主な舞台となっている。渋谷駅、センター街、新宿東口、バスタ新宿など、東京都民にとって見覚えのある景色が随所に散りばめられている。港区・千代田区あたりのビル群の夜景も美しい。

私がこの映画を初めて見たのは2017年の5月。新宿ピカデリーの最上階でした。胸いっぱいで映画を見終えた後、ガラス張りの建物から見える夜景を見ながら、エスカレーターでエントランスまで下る。

その時の夜景、まるで映画の続きのようだったのです。
すぐそこに、美香と慎二がいそうな感覚。もしかしたら、劇中で路上ライブしてた女性いるんじゃないかな。
すっかり美香の気分になって帰る新宿の夜道、とても良かった。
いつもはうるさいと感じる酔っ払った若者の声も、「私は東京で生きているんだ」と再確認するための重要な演出のようでした。

あの感覚が素晴らしすぎて、その後渋谷新宿と場所を変えて何度も観ました。今はもう映画館での上映は終わってしまったから、是非、映画を見た後東京の夜に繰り出してみてください。きっといつもより少しだけ、東京が愛おしくなる。


東京に息苦しさを感じる人は、不器用な自分や世界を受け入れるのが辛いっていう人は、少しだけ、受け入れるきっかけになるかもしれない。そんな映画です。

この映画に合うビール

さて、映画の紹介とともに、その映画に合うビールをご紹介したいと思います。

「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」に合うビールは
「COEDO 毬花」

コエドブルワリーが出しているセッションIPA。通常のIPAと比較して苦味・アルコール度数を抑えていると言われるセッションIPAですが、この毬花はとっても苦い!そして、苦味に負けないほどにフルーティーな香り!

交差する苦味と香りが色んな人で溢れた東京のようでもありつつ、美香と、優しく包む慎二のようでもあるのです。

この映画を観ながら、最初はつらい、苦い、とおもいつつも、最後はきっとどっちも愛おしくなっているはず。だから、ぜひぜひ時間をかけてゆっくり味わってもらえたらなって思います。

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