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ミステリーには、まだ未開の地があった

書籍レビュー Vol.1「medium 霊媒探偵城塚翡翠」
※この記事では、ガッツリ書籍の内容に触れて書いています。いわゆる、ネタバレ記事です。なので、これから読もうと思っている方は、一旦この記事を閉じて、書籍を読んでから再度訪れることをオススメします。

前書き

いつもなら、インスタの投稿で行っている書籍レビューやけど、今回ばかりはこっちでも書くことにした!

それくらいにこの書籍が面白かった!

おれは相変わらず、ミステリーが好きなようだ…!

あらすじ

小説家香月史郎の元に、とある事件の捜査依頼が届いた。
何を隠そう、この小説家は警察の捜査に何度も協力をしていたのだ。
そしてそんな彼は、とあるきっかけで霊媒である不思議な女性城塚翡翠と出会うことになり…。
小説家と霊媒師の異色のコンビが難事件に立ち向かう、本格ミステリー!

って感じで、書籍に書いていそうなあらすじを書いてみました。
ド素人なのは承知してるので許してね笑

mediumとの出会い

mediumは2019年に出版されていて、その時から目をつけていた。「絶対面白いやつや」と。
しかし、初版のデカさに購入をためらっていた。カバンに入れる時とかは、やはり文庫本サイズのほうが持ち運びが楽だから、「文庫本になってから読もう!」なんて思って、少し時を置くことにしていた。

しかし、今年。
友達と書店に入って書籍を眺めていた時に、mediumと再会した。
その時の会話が、
(おれ)「絶対この本面白いと思うな~」
(友達)「ほな何で買わんの?」
(おれ)「文庫本サイズのほうが読みやすいやん?やから待ってる」
(友達)「面白い本ならサイズなんか気にならんなるで」
そう言われた瞬間購入に傾いて、しばらくしてから購入に至った。

いやぁ、マジでその友達には感謝。“medium”の帯にも書かれていた

この作品は「文庫化してから」ではなく今読んだ方が絶対楽しいやつです。理由は読めば分かります! -似鳥鶏-
                                                   「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の帯より引用 

この言葉通り!!

本書の感想

まず一言で表すなら、「このミステリーは他のミステリーとは違う

ミステリー作品における解決過程は、
「事件発覚→探偵による調査→探偵の推理→犯人判明」が一般的だろう。
たまに犯人が先に分かっていて、犯人目線で進行していて、どのあたりで探偵が気づくのかを楽しむ作品もある。(古畑任三郎とか)

しかし、本作品はこれらとは一味違っていた。
ここからの感想は主要な登場人物二人に焦点をあてながら、話していこう。

城塚翡翠

まずは、この作品の主人公である翡翠。

最初は、自身でも扱いきれない霊媒の力に困惑し苦しめられている薄幸の霊媒師として、ある事件をきっかけに霊媒の力を駆使しながら香月とともに難事件に挑んでいた。

しかし、実はその姿は彼女の仮面であり、本当の姿は霊感0の詐欺師であり、奇術師なのだ。

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ならば、いかにして事件の真相にたどり着いていたのか?
それは、現場に残された数少ない手掛かりから事件当時の状況を推察し、犯人を推理していたのだ。そのうえで、香月に対しては辻褄が合うように、降霊したり人の感情を読んだりと、霊媒師として振る舞っていたのだ。

そのため本書は、一度霊媒の力とそれの理論武装で解決に導くが、最後にもう一度ただの洞察力のみで事件をもう一度解き明かしていくスタイルをとっているのだ!

いやぁ、いきなりスーパープレイが明かされた時は唖然とした笑
おれと同じく「いきなりすぎてついていけん!」とか「そんな展開あり?!」とかって感想を持った人も多いみたいやけど、霊媒っていう普通の人からしたら遠い世界の力よりも、桁外れた推理力のほうがまだ近いから現実味が出てきて、おれはちょっと面白かったかな~

翡翠の正体はこの物語の最後のほうで明かされるけど、その後からの翡翠のキャラ変具合がすごかった。
最初は、オドオドしていて自信なさげな感じでドジっ子なところがあった。けど、どこか世間知らずで可愛らしい側面を見せていたのだが…

それらは全て演技!!(ガーン)
しかも、それを明かした後のある一言が…

「わたしも、あの時はつらかったんですよ。なんてあざとい演技なんだろうと自分で呆れてしまっていました。女性の目から見れば、明らかに芝居だと見抜けるでしょうけれど、ほとんどの男性は信じ込んでしまうんですから、不思議なものです。」
                  medium 霊媒探偵城塚翡翠 より引用

この言葉にショックを受けた男性読者は多いのではないですか?ぼくもその一人です笑
これまで、自分はそういうものには気づくと自負していましたが、そのプライドにひびが入り、ちょっとした期待とともに粉々になりました…笑

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この変わりように納得がいかない読者もいたようで、「なろう系小説の主人公かよ」といったコメントもあった。
まぁ確かに、いきなりキャラ変して口調が挑発的になったうえに、奇術師設定プラスされたら、そりゃあ主人公無双系小説に出てくるステータス高めのキャラを連想するよな~笑。
そこは分かる笑

ただ、本書最後の、お手伝いさんが翡翠の部屋のゴミ箱の中から、ずいぶん前に香月たちと行った遊園地のチケットを見つけた場面。そして、前のページでの翡翠のこのセリフ。

「奇術師というものは、無駄な動きなんてなに一つとりません。」
                medium 霊媒探偵城塚翡翠 より一部引用

この二つから、やはり翡翠は心のどこかで香月がシリアルキラーでないことを祈っていたのかもしれない…。もしかしたら、翡翠は香月のことが本当は…。

なんてことが本当であればと願うばかりです笑。
そうであれば、傷心気味だったおれが少し救われるのだが笑。

香月史郎

続いては、翡翠の霊媒を理論武装していた小説家香月史郎に触れていこう。

香月は先述した通り、小説家でありながら警察の捜査協力も行っている。翡翠と出会ってからは二人で事件を解決に導いてきた。

香月は落ち着いた性格で、ミステリー小説の執筆の経験を生かして、プロファイリングや理論構築を行っていた。事件に遭遇しても、冷静に状況判断を行う冷静さも持っている。また、紳士的な一面もあり、翡翠の奇妙な力を受け入れ、翡翠を気遣う紳士らしさが本書で何度もみられた。

しかし、実はこの男も仮面を被っていたのだ。
この男の仮面の下の正体は、「シリアルキラー」。

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数年間世間を騒がせていた女性連続死体遺棄事件の犯人だったのだ。この犯人もとい香月は、遺体を殺害現場とは異なる場所に遺棄することで、現場を特定させないようにしていた。そのうえ、自身につながる証拠も一切残さなかったため、警察も手掛かりをつかめず、事件捜査は難航していた。

しかし、後にその正体は翡翠によって暴かれてしまうことになる…。
その前から香月の正体に気づき始めていた読者も多いようだが、おれは全く気付かず純粋に楽しんでました笑

だが、読み進めるうちに別の違和感を抱き始め、そしてあることに気づいた。

「あれっ、香月さん…。翡翠ちゃんに惹かれてる…?」

そう。最初は、ひょんなことから霊媒師翡翠の元に訪れ、そこから翡翠の能力の理解者として行動を共にすることが増えていった。行動を共にする回数が増えるにつれて、香月が何と翡翠を「女性」として意識している描写も増えていたのだ。

そこから、おれの中での香月のイメージが変わり始めて、「分析能力が高い小説家」から「変態小説家」へと急降下笑。(さらに終いには「異常なシリアルキラー」になるなんて…)

確かに男なら少なからず同情できる場面もあったが、おれの場合は何故か同情よりも「翡翠に手を出さないだろうな…!」っていう警戒心が先に出たな笑

ただ、変態な一面が垣間見えても、推理の腕は衰えることはなかった。
翡翠が言う霊的事象を他人にも理解できる論理に転換し、そこから犯人の正体にまで迫った。時折、最初の段階で犯人がある程度絞れている場合は、捜査官に霊視の結果をプロファイリングの結果として、その方向へ導くことなども行っていた。

おれが見たことがある作品では、超常現象を何故か周りがすんなり受け入れていたりしていたが、本書では超常現象を理解可能かつ筋の通る論理に置き換えているのだ。この点も、本書が他のミステリーとは違う点としてあげられるだろう。

ただ、結末を知ってからこの過程を振り返ると、いかに香月が弄ばれていたのか…。あはれなり、香月…。

最後に

こんな感じでひとまず感想を書いてみました!

小学校の頃からミステリーにハマって、今までミステリー小説を読んできましたが、ホントにこんなミステリー小説は読んだことはなかったです!

この勢いで、次作「invert」も読んでいきます!!
その感想も書いていこうと思いますので、ぜひ読んで下さいね!

改めてmediumの購入を後押ししてくれた友達には感謝を。

あとがき

意外と感想書くの難しいな…笑

なんかやたらと説明口調に寄ってしますから何度書き直したか…。それでもまだ直りきってないな…。

これは、数積んで直すしかないな!笑
頑張ります!


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