「死」とは何か 「生」とは何か (4)宇宙の階層構造=宇宙進化

今回の記事では、
「宇宙は色々なことを起こしたがっている」
「宇宙は試したがっている」
という「宇宙の陰謀」と、私たちの「死ぬ生」、私たちが「生きて死ぬ」ということとの関係を考えてみたいと思います。
そのことを通して、
●私たちがなぜこの「生」を生きなければならないのか、
●それはどのような「生」なのか、
●どのような生き方ができるのか、
●この「生」はこの先、どうなって行くのか、
などについて考えたいと思います。
(長くなりますので、今回と次回の記事で、上記の課題を考えたいと思います。)

話はまた遠回りすることになりますが、まずは「宇宙の階層構造」ということを考えてみたいと思います。
私たちが知る限り、一番小さいのは素粒子です。その小さな素粒子から始まってより大きな構造ができていきます。
それは、組み合わせによって大きな構造になるのであって、「大きな素粒子」が生まれてくるわけではありません。例えば目に見えるような大きさの素粒子だとか、車くらいの大きさの素粒子だとか、地球や太陽のように大きな素粒子だとか、そんなものはないのが当たり前です。そんなものが存在しないことは、たぶん物理学で説明されるのでしょう。ただ、なぜ物理法則がそうなっているのかは、きっと説明できないのではないでしょうか。それは宇宙誕生の時の「魔法」に属する話だからです。
宇宙は小さなものが組み合わされてより大きな構造ができるという形式でできています。

もっともそれは、本来の宇宙からすれば、消えそこなった「10億分の1」によってできているだけです。
記事「もう一休み 大島泰郎先生と小尾信彌先生の衝撃」で述べたように、初期宇宙に存在した粒子と反粒子は対消滅するはずだったのに、なぜか「10億分の1」だけ粒子の方が多かったために、現在の宇宙に「粒子でできた世界」が出来上がったわけです。現在の宇宙の階層構造は、その「10億分の1」によってできているものです。
考えてみると、粒子と反粒子が消滅しない仕組みのものだったとしたら、現在の宇宙の10億倍とか20億倍の物質があったということだから、今よりずいぶんにぎやかな世界になっていたはずです。逆に言うと、現在の世界は元からするとずいぶんとすかすかの寂しい世界になったということです。
そんな空っぽ世界で、なけなしの物質を組み合わせて、少しずつ大きな構造を組み立てているのが、私たちの住む宇宙です。
ただ、もしかしたら、このすかすかの宇宙は、宇宙の陰謀にとっては好都合だったのかもしれないという気もします。宇宙に物質がぎっちり詰まっていたら、かえってのっぺりした空間になって、色々なことを試すには不都合な宇宙になってしまっていたのかもしれませんから。

「10億分の1」の粒子でできた宇宙は、少数の素粒子を作り、その素粒子から百くらいの元素を作ることになります。
どちらもすごく微妙な数ですね。2,3種類ではないし、1万とか1億種類でもない、あまりにも分かりやすい数でできているのが不思議です。
ところがそののち、元素=原子からは数えきれない種類の分子が生まれることになります。
こうしたことは、宇宙の長い時間の中で、順を追って起こってきます。
宇宙進化です。
素粒子というものが生まれたあとは、どんどん新しい素粒子が生まれてくるというわけではなくて、今度は素粒子の組み合わせによって原子ができます。
原子はだんだんと数が増えたようですが、それでもせいぜい百くらいまでです。
原子の種類が増えるよりも、今度は原子の組み合わせで色々な分子ができることになります。
宇宙進化はこのように、新たに生まれた単位の組み合わせによって次の単位が生まれ、今度はそれが組み合わされていくことで階層的な世界を作ります。

宇宙の階層性は、巨視的には、様々な天体が生まれ、それらの集合体によって大宇宙の構造が作られることになりますが、一方、微視的には、地球上で分子の組み合わせから「生命」が生まれるという方向に進みます。(もちろん地球上だけではないかもしれません。)
「宇宙が色々と試したがっている」という「宇宙の陰謀」という観点からは巨視的な方向も無視できないとは思いますが、「死ぬ生」を考えるという目下の課題には結びつきそうもありませんので、ここでは考察の外に置くこととします。
そこで以下は、私たちの「死ぬ生」に連なると思われる地球上について考えます。

ただこの方向で考えることには一つの難点があると感じられるかもしれません。
それは、私たちの地球という宇宙の中では極めて限られた辺鄙な場所(あるいは似たようなほかの辺鄙な場所もあるかもしれませんが)、そんなわずかな場所でだけ起こっている出来事を取り上げて、「宇宙の進化」という大きな枠組みで語るのはあまりにもバランスを欠いているのではないか、という感じがすることです。
この問題については次のように考えます。
「色々なことを試したい」という宇宙の陰謀は、そもそも粒子=反粒子の対消滅のときに、わずかに「10億分の1」に限定されたものとなりました。今度は、生命の誕生のような事象が、「地球上など」という非常に限られた場所、それが宇宙の中で何十億分の1になるのかは知りませんが、そんな限られた場所でだけ起こるのだとしても、宇宙にとっては一向に構わないことなのではないか、という気がします。「宇宙の持つ可能性をできる限り試したい」という宇宙の陰謀を果たすために必要なことを淡々と進めているだけなのではないか、という気がします。
上のような私の説明はいささか強引だとお感じの方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろ人間の感じるバランス感覚で宇宙を推し量ろうとするなら、その方が違っているのではないか、という気がします。

そのようなわけで、地球上で進む階層構造について考えたいと思います。
繰り返しになりますが、宇宙の進化は新たに生まれたものが単位となり、その組み合わせによって次の単位が生まれ、さらにそれが組み合わされていくことで階層構造を作ります。
地球が生まれたころには、宇宙には素粒子、原子、分子といった物質の階層がありました。その中で、地球にはとても色々な原子(元素)がありました。その点、ほとんど水素とヘリウムだけでできているような太陽なんかとは比べ物にならないくらい色々でしたから、「色々と試したい」という宇宙の陰謀にとっては理想的な場所だったと言っていいのではないでしょうか。しかも、太陽など恒星は物質の状態が高温の気体とかプラズマとか、とらえどころのない状態ですが、その点も地上では固体・液体・気体と多様な状態があり、物質同士が相互に関係しあい、関係した結果が残りやすい、つまり色々な分子が作られて、作られた状態が残りやすい環境にあったと言えそうな気がします。

さて、ここに至って、物質(非生命)から生命が生まれてくる場面の到来です。
学生時代に、大島泰郎先生の講義で教わった化学進化の場面です。
この場面では、地球上で色々なことが試されました。地球上には色々なことを試す条件があったともいえるでしょう。条件が整わなかった惑星では地上ほどの多様な物質は生まれなかったようにみえます。
条件に恵まれた地上では、多様な物質が生まれました。
それらが単位となって新たな階層を組み立てたのが生命=細胞でした。
私たちが知る限り、その階層までたどり着いたのは地球だけだったようです。
ただ、限られた場所でしか起こらなかったことであったとしても、事実として、宇宙が生み出した物質には、分子の組み合わせによって生命という階層を生み出す能力、あるいは可能性を持っていたということは間違いありません。

このようにして、細胞という階層が作られた場面では、次にそれが単位となって次の階層を組み立てることを、宇宙の陰謀が目論むことになります。
その結果、長い年月の末に、宇宙の事実として、細胞が単位となって次の階層としての多細胞生物個体が作り上げられることになりました。
それが「死ぬ生」の誕生です。
つまり階層構造を作る宇宙進化の現在最後の段階にあるのが「死ぬ生」です。
宇宙の陰謀という目論みの最先端にある、とも言えます。
それはすなわち、「死ぬ生」は次の階層に向かう単位として位置づけられている、つまり「死ぬ生」同士が組み合わされることで次の階層の新たな単位を組み上げることが課せられている、ということでもあります。

(今回の記事の課題は、一回の記事にまとめようと考えていましたが、次回の記事と2回に分けることにしました。次の記事はなるべく早く投稿したいと思っています。)

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