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鳥文斎栄之展は図録からして凄い!

相互フォローいただいているHimashunさんの記事で、先日、浮世絵師・鳥文斎栄之ちょうぶんさいえいしについて、初めて知りました。

鳥文斎栄之は、元は旗本の名家の出で、狩野派に学んだ後、浮世絵師へ転身。喜多川歌麿や葛飾北斎と同時代に活躍した、大変人気のある絵師だったようです。
上流階級や富裕層向けの画題を選び、素材にも贅を尽くしたため、摺りの枚数が限られていたこと、さらにその多くが海外に流出したことから、本邦では思いのほか知名度が低くなってしまった模様(いや、単にぼくが知らなかっただけです…)。
上記リンク先の「メモ帳」の記事、とても充実していますので、気になる方は是非ご一読あれ。
お約束でWikipediaも一応。

現在、千葉市美術館で、世界初となる大規模個展が開催されています。

Himashunさんの記事を読んで、
「うーん、これは行ってみたい、実物を自分の目で確かめてみたい」
と思いつつ、足を運べない可能性も高いことから、まずは図録を購入しようと決めました。
美術館のオンラインショップから注文、注文、と。
お、使っているシステムは、自分と同じBASEだね。

届きました!

あのー、ちょっと…充実度合いが半端ないんスけど。
作品それ自体が素晴らしいのはもちろん、撮影・解説・ブックデザイン・印刷・製本、どこを取り上げても見事すぎるクオリティです。
まさに「これぞ決定版!」というヤツ。

図録の段階でこれほど凄いのであれば、実際の展覧会は一体どういうことになっているんでしょうか???

「華麗なる美意識」
「品格のある浮世絵」
歌麿や北斎を評する際には、なかなかお目にかからない言葉です。
だからと言って、一方的にハイブローに寄せているわけではなく、
「品のある色っぽさ」
「品がある故に、かえってほのかに艶っぽい」
ところが、栄之作品の魅力の核心であるように思えました。

ちなみに、2025年放送予定のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺つたじゅうえいがのゆめばなし~」は、歌麿・写楽らをプロデュースした蔦屋重三郎が主人公。
蔦重のライバル・西村屋与八の版元で活躍した栄之にも、もしかしたら登場の機会があるかもしれませんね。
東洲斎写楽の正体は、徳島藩蜂須賀家お抱えの能役者・斎藤十郎兵衛ではないかと目されています。
言うなれば、二人とも公務員からの転職組(写楽は副業?)なので、その辺りに何らかの接点が生まれそうな気がしなくもない…。
ただし、栄之は祖父が勘定奉行、本人も将軍お目見えを許された、江戸幕府の超高級官僚であります。その身分を惜しげも無く(?)捨て去り、一派を成してひたすら画業に打ち込んだ(美人画を描き続けた)生涯は、風流の極みとも、あるいは、浮世を生き抜く達人とも呼べそうです。
(追記:「結局は親ガチャでしょ」と感じる人もいるかもしれない...確かに栄之は、ほかの絵師たちよりもかなり有利な条件でデビューしたみたいです。他方、日本の近世は、親ガチャの縛りが途方もなく大きかった時代でもあります。家格の高い武士を捨てて浮世絵師になる溝の深さは、きっと現代の比ではなかったでしょう。)


オンラインショップには、ほかにも興味をそそられる図録が揃っていて。

田中一村 所蔵全作品
川瀬巴水や吉田博ら、新版画の世界をまるっと
「「前衛」写真の精神」はSOLD OUTだったので、別口で購入
(赤々舎が出版元で一般販売中)

恐るべし、千葉市美術館。

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