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もう一度だけでも、夜を越えられるのなら

吐き出し方を知らない。
口にできなくて苦しいのなら、文章にできれば少しは楽だろうか。 






※希死念慮に関するトピックを扱いますが、「背中を押す」ような意図はございません。また、これは飽くまでも私個人のケースであり、希死念慮を持つ人々について何ひとつ一般化するような意図もないことをご了承ください。





それは徐々だった。
心の陰はゆっくりとその濃さを増してきた。

最後に心が晴れやかになっていたのはいつのことだろうか。
今となっては思い出せる、長い長い憂鬱のトンネルの始まりの頃。

当時は、何ともないと思っていた。
時間が経てば何らかの形で解決すると思っていた。
悩みなんて、生きていれば当然にあるものなんだから。

だけど、私の心の調子は今も右肩下がりのグラフを描き続けている。
気づけば、想像もしなかった深みまで来てしまったみたい。
一人で抱えるにも限界は訪れ、一部の人に心配されるようにもなって、しばらく経つ。

最近は人から見ても相当酷いようで、ちょっと遠慮がちに、冗談まじりに、「身投げしないでね」なんて意を含んだメッセージも時折受け取るようにもなった。



ずっと誰にも伝えられていないけれど、ずばり言ってしまえば、「死にたい」って思うことは、ある。

いや、たぶん本当に命を終わらせたいだなんて思っていない。
ただ、生活の節々で、何もないところから「死にたい」という言葉が勝手に頭に浮かび上がることは、もはや日常の一部と化している。

私の「死にたい」には中身がない。
本当に、ただ「死にたい」という言葉だけが思い浮かぶだけ。

夜眠れなくて。
電車にスーツの人がいて。
大学の講義を面白いと思えなくて。
部屋の片づけが下手で片づけてもなお散らかっていて。
おしゃれなお店でごはんを食べて。
幼い頃の記憶を思い出して。
朝起きて。
美しい物語に触れて。
好きな曲を聴いて。

どんなものも、「死にたい」という言葉を思い起こすトリガーになり得る。
それは悲愴なのか、絶望なのか、無力感なのか、虚無感なのか、全くわからないけど、ただ「死にたい」という語彙だけが運ばれてくる。

妬み嫉みを抱かないという私の圧倒的長所をもってしても、他人の幸せを見ては死にたくなる。
もちろん、他人の不幸を見ても死にたくなる。

音楽を聴くこと、創作すること、他人の幸せに触れること。
私が好きなことやものが希死念慮のハリボテみたいな謎の現象のトリガーになった。
だけど、それらが好きなことには変わりはない。
やりたいことをやっていても、やりたくないことをやっていても、死にたくはなってしまう。
「死にたい」の正体はいつだって不明だ。



そして、いくら信頼できる人に心の憂鬱を打ち明けられるようになっても、その希死念慮じみた言葉のことだけは、誰にも言えなかった。
親にも、友達にも、恩人にも、カウンセラーにも、そのほかの誰にも。
noteに書くことも、今までできなかった。
今まで打ち明けた相手は、検索エンジンだけ。


死にたくなっちゃって、つらくて、誰かに話を聞いてほしいと思っても、いざ話すとその言葉は出て来なくて。
お礼をして会話が終わっては、どうして言えないものかともやもやしてしまう。
そしてそれがまた引き金になって死にたくなる。

でも、言えるわけがなくて当然だよね、とも思う。
だって、本当は別に死にたくはないんだもん。
私の「死にたい」は中身がないんだもん。
中身が不明の憂鬱を詰め込んだパッケージに勝手に貼られるラベルこそが「死にたい」という言葉なんだもの。

今の私の場合は。


だから、「死にたい」が人に言えないのは、当然なのかもしれない。

もし「死にたい」なんて言ってしまったら。
その気持ちを伝え、知ってもらったら。
それはそれであまりいいこともないような気がしている。

たぶんまだ自分は死なないってわかっているから、そこに焦点を当てられてお話の相手になってもらっても、思ってもないことを説教される感覚になるかもしれない。
そして何より、相手に申し訳ない気持ちにもなってしまうだろう。

しかし希死念慮の明言を辛うじて避けている現状も、それをはっきり言わない癖に、それでも心の調子が著しく悪いことを察してもらえるように匂わせるような態度をとって心配してもらおうとしているみたいで、そんな自分にもまた嫌気は差している。


ただ、ずっと飲み込み続けるのも嫌で、一度この希死念慮っぽいものについてちゃんと考えて、ちゃんと言葉にしてみたいと思って今これを書いたに至るのだけれど、やっぱりまとまった言葉にはならなかったな。

ただ、ずっとできなかったそれが出来たもんなんだから、今日の私はえらい。

次は何か楽しい記事でも書いてみたいな。



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