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逃げ道は野菜のみじん切り

わたしはストレスの発散方法がわからない子供(大人)だった。
几帳面で繊細と病院で言われるほどにストレスを受けやすい性格なのに、それをうまく逃がすコツを知らないまま23歳まで過ごしていた。
唯一の溜まってしまったストレスをリリースする方法が自傷行為だった。

中学から大学にかけてはいじめと家庭環境がうまく回っていなかった事もあり、ことあるごとに自分を切り刻んで制裁という名のストレス解消をしていた。夏はさすがにまずいと思える余裕があったので、夏や家族で出かける予定ができると首を絞めたり、ODをしたりと手段は変えたが、とにかく自分を傷つける事で溜まっていくストレスを逃がしていた。
いい事なんてある訳がない。
今も左腕にはケロイド状の傷が何ヶ所か残り、プライベートな時間は半袖を着れるくらいメンタルは強くなったが、職場は半袖を着る事ができない。だから半袖の制服のある会社はどんなに働いてみたくても、試験を受ける事はなかった。

そんな自分を傷つけるという方法しか知らなかったわたしに転機が訪れた。
アメリカで働いていた時、あまりにも大きいプレッシャーと人間関係をうまく作れなかった事が原因で肌がものすごく荒れてしまった時期があった。おまけに食べることに逃げてしまったので体重増加も酷かった。
たまたま野菜がたくさん冷蔵庫にあった休みの日、スープでも作ってしばらく主食にしたら落ち着くかと思いミネストローネを作り始めた。
玉ねぎから始まり、人参、セロリ、キャベツ、ジャガイモ、トマト...
黙々と順番にみじん切りにしていった。元々細かい作業が得意だったわたしは、集中してしばらく鍋一杯になるまで野菜を刻み続けた。
すると、不思議な事にそれまで胸に抱えていた嫌な気持ちや、モヤモヤした気持ちがすーっと消えていったのだ。

それはそれは驚きの体験だった。それまでテレビを見て大笑いしたり、友人と食事に行って愚痴をこぼす事ですら消す事ができなかった、胸のつっかかりが消えたのだ。
その時これがわたしにあったストレス発散法だったと気づく事ができた。
23年目にして初めて、嫌な事をなくす方法を見つけた瞬間だった。

それからというもの、嫌な事があったり、心が塞ぐほどのストレスを感じる時は刻んだ野菜を使う料理を作るようにしている。キャベツの時は餃子や千切りキャベツを添えた揚げ物、玉ねぎの時はハンバーグ、その他大勢の野菜をたくさん刻みたい時はスープ。
実に実用的なストレス発散方法だと思う。



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