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私たちは「若い者は簡単には死なない」と勝手に思い込んでいなかったか

先日、有名な俳優さんが亡くなったニュースを見て、私は彼のファンではなかったけど、テレビ等で見かけた彼の美しい笑顔を思い出し、ショックを受けた。

数ヶ月前のコロナ禍中、やはり有名な人が何人か感染によって命を落とし、それもかなり衝撃的だったが、それとは違う衝撃だった・・・。

◇◇◇

今までも、たくさんの訃報があったけど、それまでは「人が亡くなる」ということを、どこか他人事のような気持ちで聞いていて、遠い世界の話に受け取っていた。

ところが、今回は、グッと身近なものに感じられたのだ。

彼が、私の息子より少し年上の「若者」だったからかもしれない。しかも、事故や病気でなく、自死だったから・・・。

「若さ」も「未来」も「時間」も「成功」も・・・この世の全てを手放して、彼は死んでしまったのだ。

◇◇◇

今までの私たちの価値観は、

年を取る=死が近づく

病気になる=死が近づく

だったと思う。

肉体の年齢を重ねたり、病気や怪我を負うなど、身体に不具合が生じると「死のリスク」がグッと高まる・・・という図式。

だから、この逆で、「年齢が若い」「健康」「五体満足」だと、多くの人は、ちょっとくらいのことでは、この人は簡単には死なないだろう・・・と思ってしまう節があった。

相手が若くて、健康そうで、肉体が溌剌として初々しいと、世の大人達は、少しくらい無理をさせたり、ちょっとくらい負荷を掛けても、「この人は絶対に死ぬことはない」と高をくくって、ついつい無理強いをさせてしまうことは、今まではよくあったと思う。

現に、社会で問題になっているパワハラやイジメや虐待は、「ちょっとくらい無理させても、コイツは死なない」という、やる側の甘えと認識の弱さが原因している。

「若い者は、簡単には死なない」という思い込みは、日本社会で広く蔓延していて、それを免罪符に、年下の者をいじめたり、酷使したり、エネルギーを搾取したり等、ちょっと陰湿なことが今までは普通にあったと思う。

でも、今回の彼の死で、従来の「若くて健康な者は、ちょっとくらい無理させても大丈夫だ」という図式は成立しなくなったのではないか。いや、この図式の過ちを突きつけられた感がある。

容貌麗しく、頭が良くて才能があり、気配りも上手で、非常に愛されていたという彼にも、何か大きく厄介なものが、絶えず心の中に居座っていたのだろう。それに押しつぶされて、どうにもできなくなり、全てを捨てても良い・・・という気持ちに落ち着いたのかもしれない。

もちろん、彼が自死を選んだ理由は私には分からないし、それについて、誰かを責めるつもりもないし、詮索する気も毛頭無い。彼は全力疾走で走り続けて、自分の人生を美しく輝かせながら生きてきたと思う。

ただ、彼の死によって、若くて、健康で、才能があり、社会的に非常に成功している人であっても「死ぬ」ということを、私たちは突きつけられたような気がするのだ。

決して他人事ではなく、自分の周りの若くて健康な人たちも、高齢者に対するのと同じで、人間である以上、いつ死んでもおかしくない存在なのだから、生きているうちに、相手としっかり向き合い、誠実に関わっていくことが大切なんだ・・・と。

「君は若いから・・・」と、相手の若さに甘えてはいけない。同じ人間として、かけがえのない「時間」を生きているのだ。相手の人生を邪魔してはいけない。肉体年齢の上下に関係なく、同じ人間として、皆が「死」というリスクを抱えて生きているということを、自覚しなくてはいけない・・・。

それを、彼の親と同じ世代の大人として、強く肝に銘じた。

私の息子が生まれて2年後に、子役としてデビューした彼。

もしかしたら、芸能以外の世界にも触れてチャレンジしたかったのかもしれない。

そう思うと、悲しい。

◇◇◇

自分の人生なのに、自分の思うようにならないことは、私も過去にたくさん体験した。

死ぬことが、唯一、自分の判断で実行できること・・・というくらい、精神的に束縛され、身動きが取れず、際限まで追い詰められた事も多々あった。

それでも、私は、今もこうして生きている。

「どうして生きているのだろう…」と不思議に思うことがあるくらい。でも、「たまたま死ななかった…」というだけで、私は今日も図太く生きている。

だから、油断してはいけないし、高をくくってはいけない。

みんな、いろんなものを抱えながら生きているのだ。言葉には言い表せないものが、人の心の中にいっぱい詰まっている。

消化できないまま、それらを腹に抱えて、みんな生きている。

みんな複雑なのだ。何が正しいのでもなく、何が間違っているのでもない。

そして、人のことを知ったかぶってもいけないし、分かったつもりになってもいけない。

生きていることが尊いわけではなく、また、死ぬことは残念なことではない。

肉体が変化しただけで、命は延々と続いているし、魂は永遠に繋がっている。自分の魂がどこにいても、私たちは「今」を精一杯生きるしかない。

◇◇◇

今回、彼の死を受けて、言葉には出来ない「様々な思い」が心の中を巡った。

この思いを「学び」に替えなければ・・・と思う。

また今日も雨。涙の雨だ。

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