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【創作小説】見上げれば、碧いそら②

前回は、マガジン「私の創作小説」に収録されてます⬇

私、里帆と、いつも1メートルずれて バレーボールを受ける(いや、落とす! )萌菜はバレーボール大会の落ちこぼれグループ。まあ、当然かな?

春の球技大会で、惨敗して、秋のこの大会で挽回したい、クラスのカースト制度の上部の女子が決めたことだ。

授業の休み時間にカースト上位の彼女等は、ブラシで髪をすいている。
軽い茶色に染められた彼女等の髪に、午後の陽射しが透き通り、なにかの歌に出てくるような、細い植物の組織を思わせていた。

「ねえ、相川さん、樋口さん、よろしくね」

相川さん、樋口さんとは私と萌菜のことである。
台詞を発した加藤さんは、背が高く、ボーイッシュなショートカットの女の子だ。
けれど、この時期になっても 私は、彼女が性格の良い子かどうかは まだ把握していなかった。

「あ、よろしく」
「加藤さんも、同じグループ? 」

意外な気もした。彼女は髪型のせいか活発に見えて、運動神経も良さそうだったから。それが、補欠チーム?

「うん、そうよ? 練習がんばろ? 」
「うん」

と、取り敢えず私たちは応えて教室を出ようとする。これから物理の授業で、物理研究室へ行くのだ。

(ドンッ! )
「きゃ! 」
「何やってんのよ! 」

2年3組のバレー部の連中にぶつかった。彼女等はよくつるんで廊下を歩いてる。ちょっと雰囲気が荒々しい。

「ふんっ!2年6組の補欠グループの連中か」
(えっ!? もう、グループ分けのことまで伝わってんの!? )

ほんとにいつの間に知ったのか。
そういう、私たちも知っているが、2年3組も「出来るチーム」と「出来ないチーム」に分けたそうだ。
彼女等3組の「出来るチーム」は殆どがバレーボール部の部員という反則技だ。

「はんっ! 出来損ない! 」
3組女子はつるんで去っていく。
「で、出来損ない!? 」
これは私たちのプライドをもの凄く傷つけた。
そう、誰だって「出来損ない」と云われりゃ傷つくだろう。しかも、同い年。

「いやな感じ……」

私たちは、彼女等を見送った。バレーボールで鍛えた脚が太めの、そして白い、いかにも運動部風の彼女たちを……。   

そこを、同じクラスの「選抜チーム」……カースト制度の上の方であり、運動神経の良い子たちを集めたグループは、なんとも思わないふうの目で見ている。同じクラスなのに……。

あとから、あとから「補欠チーム」の女子がやってくる。
市川さん、鮎原さん、江戸川さん、田中さん、真弓さん、吉永さん……。
チームは、9人。9人制バレーボールだ。
「ねぇ、なんか口惜しいよね? 」
「うん……」
「うん……」
にわかに集まった私たちに、チームの仲間意識と、なにやらチロチロと燃えるような、口火になるような小さな火が灯り始めた……かもしれない。


             つづく


©2023.11.27.山田えみこ

つづき、こちら⬇


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