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短編小説

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ジャンルいろいろ。 よそでは発表できないのにウッカリ書いちゃった短編小説をこっそり載せておく場所として機能していきます。 なので、ときどき気まぐれ更新な感じで。 『 リリア』20… もっと読む
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記事一覧

ニイゼロキューゴー

ニイゼロキューゴー

「ニイゼロキューゴー」

わたしたちと あなたたちは
呼吸している
わたしたちは 酸素を吸って
二酸化炭素を吐き
あなたたちは 二酸化炭素を吸って
酸素を吐いている

わたしたちの 星の 大気は
何故か
酸素を20,95%に保ち続けているけれど
それは
わたしたちと あなたたちの 呼吸が
何故か
つり合っているからかもしれない

20,95
わたしたちの 星のそれが
均衡を 保っている 理由は

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人類と人魚の歴史

人類と人魚の歴史

つい最近まで人魚は架空の生物であると思われてきた。
目撃情報そのものは古くからあり、数世紀に渡って記録報告されてきたが、それらはおおむね19世紀末から20世紀初頭に集中している。
これは捕鯨の最盛期と重なるのだが、人魚の発見がそれと同時期であることは、必ずしも偶然ではない。
人類が航海の範囲を拡げたから、という理由もあったが。
最大の理由は、人魚が鯨を食料としているからだろう。

人魚は群れで行動

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リリア

リリア

私は村はずれにある小さな庭つきの家を借りることにした。
家主は美しい未亡人。
一年前に夫を亡くした彼女は、町なかの両親のもとで幼い娘を育てている。
だから、夫と暮らしたひなびた家を他人に貸すことに決めたのだという。
裕福な彼女は言う。

「お金はいただきません。そのかわり、お家賃として花を届けてください。その月はじめの日の朝一番の庭で一番美しい一輪の花を」

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死者の婚礼

死者の婚礼

若い娘が男を知らないまま死ぬと悪霊になる。
そういう言い伝えがこの地方にはある。
ある未婚の娘が亡くなった。
あっという間のことだった。
「このままでは悪い霊になってしまう。死者の婚礼をしなくては」
若き当主である娘の兄は、死んだ妹の花婿を友人や知人たちから募ることにした。
かわいい妹のためである。
一夜限りの結婚のため、金銀財宝を山と積み、嫁入りの持参金とした。
「さあ、誰か。我が妹の花婿に」

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