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彼女たちと、いつかの私と、今の私と。


大きな川に沿った道を走るのが好き。

雪をかぶった青い山が遠くに霞むまで続いているのが見えて、家からそんなに離れていないのに、遠く雄大な自然の中に来たような気持ちになる。

特に、ふたつの川が合わさってひとつになる地点が好きで、その景色にいつもユーコン、と思う。

もちろん見たことなんてないし、比較にならないほどの壮大さだと思うのだけれど、私の中の大自然はなぜかユーコン川なのだ。
(この川の名前のついたコーヒーがあったからか、星野道夫さんの著書をくり返し読むからか、かも。)


その道の途中にあるのが、いつものコーヒー屋さん。
今月は、今日がひとりで過ごせる最後の休み、ということで、やっぱりここだな、と決める。


今日は、珍しい中国雲南のコーヒーが入っていたので即決、それと合いそうなガトーショコラをいっしょに。

ブランデーみたいな風味がありますよ、と言う店主の言葉どおり、深煎りなのに鮮やかな色彩が浮かぶようなこくりと美味しいコーヒーだった。
こちらもチョコが濃厚なケーキに合わないわけがなく、しばしあたたかな毛布にくるまれたようにぼんやりしてしまう…。


今日の本。



そう、タイミング悪く重なって届いてしまった図書館の本の中、最優先事項がこの江國香織さんの「川のある街」だった。
でも、ゆっくり読みたいので、休みの今日のためにとっておいた。


少し前、男の人が書いたものばかり読んでいたことに気付いたので、ここのところまた、江國さんのエッセイや小説に戻ってきている。

江國さんって、すべての女性を書いているんじゃなかろうか。
いや、というよりも……
江國さんの小説が好きな人は、登場人物の誰かに対して、これは自分かもしれない、と重ね合わせるところがあるんじゃないかしらん。

誰もが、満たされているようで、どこかに孤独を抱えていたり、とか。



少女であったり、30代後半であったり、家族をもつ母親であったり、そんな頃を懐かしく振り返る年代であったり。
かつての自分、今の自分、未来の自分、そして違う方を選んでいたらこうなっていたかもしれない自分…。


そういえば、先日買った「ウエハースの椅子」も読み終えた。

20年近く前に読んだはずの、そのときの印象と全く違っていた。
むしろ、小さな文章の区切りひとつひとつ、美味しいチョコレートをひと粒ひと粒食べるような、そんなふうに、苦しい苦いあまい小説だった…。

過去、遠い大人の世界にいると思っていた彼女たちは、もう自分よりすっかり年下になっていた。
そう思うと、ずいぶん遠くに来てしまったなぁ、なんてちょっと思ってしまう。


それでも、追い付いたからこそわかることがあるから、とうれしくも思うけれど。



さ、またあとで。
紅茶をいれて、続き、読みましょう。



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