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多和田葉子『雪の練習生』(毎日読書メモ(280))

多和田葉子『雪の練習生』(新潮社、現在は新潮文庫)の読書メモ。

シロクマ三代記。小説をものする不思議な祖母、亡命に亡命を繰り返し、カナダで娘トスカを産み(その辺の描写が一気に幻想的になり、現実と境目がわからなくなる)、その娘は母が去ってきたドイツに戻り、サーカス芸に生きる。トスカに育児放棄されたクヌートは手さぐりで、人間に育てられ成長する。切ない。誰も北極の海は知らない。クマとしてのアイデンティティは何なのか。時代が、政局が、動物を翻弄するのか。これは何かの暗喩なのか。薄暗い闇の中で生きているのは、クマなのか人間なのか...。多和田葉子は妙に読みにくい部分があり、これまで敬遠してきたのだが、筋の通った人なんだろうな。彼女の見ている世界を見てみたい。
(2011年9月の読書日記より)

芥川賞をとった『犬婿入り』(講談社文庫)がすーっと入ってこなかったので、比較的多和田葉子には苦手意識があったのだが、この後、『地球にちりばめられて』(講談社)を読んで、ぶっ飛んだ。
現在、朝日新聞に『白鶴亮翅はっかくりょうし』を連載中。毎日読むのがささやかな幸せ。ちなみに白鶴亮翅とは、太極拳の技の名前らしい。

これまでの多和田葉子の読書記録: 溶ける街 透ける路 穴あきエフの初恋祭り 星に仄めかされて 地球にちりばめられて

#読書 #読書感想文 #多和田葉子 #雪の練習生 #新潮文庫 #シロクマ #ドイツ #犬婿入り #地球にちりばめられて #白鶴亮翅

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