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#67 皐月の本

6月の5日。
6月は和風月名で水無月。

梅雨明けで、「水が無い月」という意味だと思っていたが、

「水な(の)月」(な は現代語の の)

で、田に水を入れるから「水の月」ということだそう。寧ろ「水のある月」だった。


では、5月に読んだ本を紹介する。

1.平凡 角田光代

「選ばなかった別の道の自分」を考える6人の、それぞれ6つの物語。

タイトルの平凡、と、どこか別のところで、というお話が好きだった。

大なり小なり選ばなかった道について考えることが誰しもあるだろう。私も考えたことがある。

きらきらな部分しか見えないようなあの人やあの人にも、そんな気持ちになることがあるのかなあ、と想像を具体的に掻き立てられる一冊。


2.抱擁、あるいはライスには塩を 上 江國香織

私の中で空前の江國香織ブームが巻き起こっている。

発端はエッセイ「やわらかなレタス」を読んだこと。言葉のつかい方、表現の仕方が繊細で、どうしようもなく好きだ。今一番好きな作家さんである。


そんな中、手に取ったのがこちらの小説。

この本はひとつの少し変わった家族のお話。なのだが主人公がひとりではないのが興味深いポイント。

章が変わるごとに家族の中の違うひとりの目線からの、ある時期のお話になる。同じ家の話ではあるのに語り手が違えば全く違うお話になり、しかし読めば読むほどその家族の繋がりや愛情深さが見えてくる。

育った環境が違うのだから「あたりまえ」の感覚なんて、人によって違うよなあ、と思った。

だからこそ外に出て、人と関わって、良い刺激も悪い刺激も受けて世界が広がるって、おもしろいことだよなあ、と。それは時に残酷でもあるけれど。

その素敵な部分と、残酷な部分、どちらももれなく描写されているところが、好きです。

学校が息苦しいと感じていた人におすすめしたい本。





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