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苦しみ学のススメ 8

ま〜普通に考えると、
誰も好き好んで苦しもうって思わないよね。

サザンの歌に「イヤな事だらけの世の中で」ってのがあった。

イヤな事だらけの世の中で
登る坂道は向かい風

坂道でも、見えているうちはまだいい。
今回は、見えていない、
まさか!って感じだ。

人間存在を規定する最も本質的な精神活動とは何だろうか?
ハーバード教育大学院のロバート・キーガン博士は、
「意味をつくる行為」と定義する。
われわれは、さまざまな経験に意味を見出そうとする。
人間とは、意味を見出すことをせずにはいられない存在といえそうだ。
そして、その見出した意味が、自分や自分たちをつくりだしていく。
今の人類にとって意味ある、「意味」とは何なのだろうか?

2月初旬。コロナが騒がれ始めた。
何となく街の雰囲気に、どよんとしたものを感じ、
そう、3.11の直後と似た空気を感じた。
あのときも、大きな試練だったし、
大きな変わり目であった。

しかし、今回のコロナはちょっと違っている。
目に見えない。
そしてある意味、平等じゃない。
罹る人もいれば、罹らない人もいる。
発症する人もいれば、発症しない人もいる。
重症となる人もいれば、軽症で済む人もいる。

ビジネスも、そうだ。
壊滅状態の人もいれば、
変わらない人も、
絶好調の人もいる。

ビジネスモデルの優劣という、
単純な物差しだけではない、
ビジネスの性質での差も出ている。
人が直接、集まる、移動するビジネスは、
特に、打撃を受けている。
さらに、現時点での業績うんぬんを越えて、
すべての経済活動に、
大きい規模、長い時間としてインパクトが続くことは自明の理だろう。

特に、飲食業やホテル業への影響は直接的で大きい。
去る5月10日に、ホワイト企業大賞という活動で行われた、
ウェブでの対話会のリアルな声を2回に分けて届けたい。
ホワイト企業大賞とは、
http://whitecompany.jp/
社員の幸せ、
働きがい、
社会貢献、
という3つの軸を大切にしている企業がつながって、
よりよい経営を考えて、実践し、広げていく活動である。

今回、約30名の方々が集まる中で、
自らの赤裸々な現状を発露してくださったのは、
道頓堀ホテルの専務、橋本明元さんだった。

道頓堀ホテルは、近年インバウンド効果もあって、
業績を伸ばしているホテルである。
創業50年。大阪で3つのホテルと、
2店のパチンコ店を経営している。
https://dotonbori-h.co.jp/

中国を中心とする海外からの顧客を90%とする同社は、
コロナウイルスの影響で、
1月末より宿泊客のキャンセルが増え始め、
2月には普段は90%を誇る稼働率が、
10%まで落ち込み、
3月には2店、4月には3店舗目も休業、
非常事態宣言を受け、パチンコ店も休業とした。

正社員82名、パート・アルバイト145名、豪渓227名(2018年9月現在)の社員がおられる。

橋本さんは、今回の状況における優先順を次のように明確に決めた。
1.社員の健康
2.社員の雇用
3.社員の生活
4.会社の存続

そして、「企業に故意、過失による行為。又は信義則上これと同視すべき事由」でないケースでは、企業側に休業補償をする義務はないものの、補償を100%する決断をする。

同規模の同業他社の状況を見ると、社員に100%の休業補償をする会社も少数ですが、パート・アルバイトまで休業補償する会社は稀。しかも、雇用保険未加入者も対象にしていることは驚愕に値する。

これに至るには、ひとつのエピソードがあった。パート・アルバイトの休業補償をどうするかということでした。当初は雇用保険に入っている40名に限り休業補償をすることに決めました。しかし、そこで生じた思いがありました。

「何ともひっかりがあって。働いている人の顔が見えるので。生活できないのも分かるので」

一旦した決定の2日後に、雇用保険に未加入のパート・アルバイトも補償対象へ広げました。経営者としてのギリギリの苦悩のなか、自らの決定を覆したのでした。

苦しみは、何を与えてくれるのだろう?
苦しみは、どんな恩恵をもたらしてくれるのだろう?

「イヤな事だらけの世の中」にあって、
苦しみは、われわれを次の段階へと進める、
目覚まし時計であり、
加速機であると思える。

道頓堀ホテルの試みはオンゴーイング。
今日はこの辺にしておきます。
ホワイト企業での対話の続きはまた。
















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