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帰国して見えた、日本が景気回復しない原因

日本の年収は30年間横ばいだ(ページトップのグラフ、日経新聞2021年10月16日の記事より引用)。OECD各国もアジアの新興国も、ずっと伸び続けている。

9年ぶりに帰国し、やたらと目につくのが食料品の価格据え置き内容減、いわゆる「隠れ値上げ」だ。じゃがりこは短くなったし、カントリーマームはクッキーのサイズも小さく、入数も減った。スライスチーズの厚みは昔の3分の2くらい。お米が9kgで売られているのには唖然とした。これらの値段はいずれも10年前とほぼ同じだ。

自分の記憶では説得力に欠けるので、調べて見るとなんと「内容量が減った商品wiki」というものまであって驚いた。

原料価格の高騰を価格に転嫁しないのが暗黙の市場の期待になってしまっている。「価格に転嫁せざるを得ない」街のお豆腐屋さんの話がニュースに取り上げられるくらいだから。

なぜこれら「隠れ値上げ」が経済に悪影響なのか、論点を整理してみる。

まず、製品価格に占める原料コスト(変動費)は下がるだろうが、設備投資をしているし、商品変更のための一時的な人的コスト(固定費)がかかっている。クッキーのサイズを小さくするためには、成形用の型を設備更新。大袋の入数が少なくなったから、隙間が出てくる。だからクッキーを一つづつ個包装する。入数を減らすだけでも、パッケージの印刷を変更しなければならない。

想像するに、商品の減量にまで手をつけている会社は、その他のコスト削減はすでにやり尽くしたであろう。そこで禁じ手の「価格据え置き内容減」に手を染めたと私は見る。

損益計算書では黒字を維持かもしれないが、キャッシュフローは当然下がる。設備投資をしたなら貸借対照表も悪い方へシフトする。だから社員の給与は上がらない。

給与が増えなければ、消費も増えない。消費が増えないから、会社としては売り上げが伸びない。利益も伸びないからイノベーションという賭けにリソースを割けない。だから努力すればできるコスト削減ばかりに注力する。一方の消費者目線。買い物に行っても内容量が少ない。会社でも経費削減ばかり言われる。心も貧しくなる。だから値上げには消費者として厳しい目を向ける。これが経済停滞の下向きスパイラル。

人の意識・会社のフォーカス・社会の風潮が「削減」の方へ向いていて、「創造」の方へ向いていない。

一方、経済成長している国の上向スパイラルはこうだ。物の値上げは毎年ある。しかし給与も毎年増える。これがインフレ(経済成長)の状態。資金に余裕があるから「創造」に投資できる。やはり勇気を持って値上げをすること。当たり前だが、良いものは多少値上がりしても売れ続けるものだ。

サバイバルモードからイノベーションへ180度切り替えること

価格据え置き内容減、つまり変動費削減は、限られた食料で生き延びるため、動かずにじっとしているサバイバルと同じ。サバイバルは時間との勝負だ。政府の助成金、あるいは海外の大企業からの買収など、救助隊が来ない限りは死に至る。

たくさん食べて運動し、体を鍛え、心を豊かにする健康的な状態が経済成長。そのために必要なのがイノベーションだ。

例えばお菓子業界を考えてみる。日本の人口は減少している。全体のパイが小さくなる中でのパイの奪い合いにコストをかけているのが現状。

私がお菓子メーカーの経営者だったら、

1. 国外のたくさんあるパイをもらいに行く。自社の品質と技術を持ってすれば不可能ではない。もちろん各国の消費者の嗜好に合わせる必要がある。それがイノベーションにつながる。

2. 自分の持っている知的財産や技術・知識を使って、味の違うパイではなく全く違うもの(例えばお好み焼き)を作る。できればこれまでにないものを生み出すこと。

どちらにも共通するのが、外に目を向けることと知らない世界に足を踏み出すことの2点。

人間は注目しているものしか見えない。自転車で猛スピードで坂道を下って、カーブを曲がり損ねた経験はないだろうか。私は崖に突っ込みそうになったことが2回ある。ぶつかりたくないと思って崖を見るから、そこへ一直線に向かってしまう。そうではなく、まだ遮られて見えていないけれど、進むべきカーブの先を想像すれば、うまく曲がれるものだ。これが「外に目を向けること」「知らない世界に足を踏み出すこと」つまりリーダーシップだ。

下記も参照いただきたい。



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