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美しく燃えるために

結婚式を創る。
私は多分そのことについて、寝ても覚めても毎日毎日考えています。

この20年くらい、担当しているお客様がいない期間が、実は1日もなくて。子供を産んだ時ですら、ほぼ産休しか取っていないので、(上の子の時は、育休を1ヶ月だけ取りました。) お打ち合わせなどはしていなくても、『担当させていただいているお客様が0組』ということが1日もなかったということです。その年月の長さを思うとすごい。人生の半分くらい、ずっと誰かの結婚式を創り続けているということになります。

お客さまはいつも、とても素直で。
私のことを信頼してくれて、任せてくださる。
何でも相談してくれて、価値観を共有してくださる。
自分がどんな人間であるか、とか、
どんなことを大切にして生きている、とか
今までに見た美しい景色や
心震えた出来事について
それがどんなにステキなものだったのか
一生懸命語ってくださる。

最初は心の扉を開けてくれなくても、優しくノックして『待ってるね』って伝えておくと、いつの間にか扉の外に出てきて、隣に座って、ぽつりぽつりと話し始めてくれたりする。

人はみんな、誰かに抱きしめてほしかったり
優しく背中を撫でてほしかったり
そっと手を握ってほしかったり
温もりとか愛とか
そういうものを必要としていて。

それはきっとウエディングプランナーにも差し出すことができるもの。薪ではなくて、例えば、薪の見つけ方として。

生き方に絶対的な正解はなくて、でも共感し合えるなと思った二人がパートナーシップを組み、一緒にチームを組んで生きていこうとする時、その胸の内には少しの不安をのりこえながら希望と信念が溢れ出ている。

『僕たちならきっとできるはずだ』と。

その想いを胸に同じ方向を見つめて歩き出そうとする二人を心から応援したくて、励ましたくて、美しく輝かせたくてこの仕事をしています。

ウエディングプランナーをしている私だからこそはっきりと言うけれど、私は、離婚は悪ではないと思っている。離婚率を下げるために結婚式があるんだって思っていた時期もあったけど(それも数値として間違いではない)、今はもう少し深いところでこのことを考えている。

もし、どうにも解けないくらいに二人の糸がもつれてしまったのなら、一緒にいることが傷つけあうことになるなら、離れた方がよほど健全で。結婚式が離婚という選択肢を縛ることも違う気がしていて。

離婚は法律が絡むからなんだか大きなことだけど、離職や絶交みたいな感情だけで成り立つ別離なら私だって何度も経験してきた。

だけど、子供という自分ではない個人の人生とか、線引きをするのが難しい資産とか、もっと実質的で、二人の感情だけでクリアにならないことを孕んでいるのが結婚で、それはやっぱり色々なものを消耗したり、喪失したりという可能性も生むわけで、そこへ向かう時間やプロセスにはきっと痛みや苦しみも伴う。綺麗に離婚するというのは、ある意味ではそこに深い敬意と親愛の情が存在するのだ思う。(ちなみに、感情で自由に結婚できるようになって50年位しか経ってない。長い歴史の中での結婚は本来、契約的要素が強いものでした。)

ただ、痛みや苦しみはきっと少ない方が良い。

愛するためには努力をしないといけないんだけど、本当に大変なのは、それを継続させることだと思うのです。恋愛とか結婚だけじゃなくて、親子も、友情も、仕事上の関係性も。
心の炎は壁にかけられた絵ではなくて、人生はもっともっとリアルで痛くて生々しい。

炎を燃やし続けるためには薪をくべ続けなければならないわけで、当たり前のことだけどそれをやめてしまったら火は、必ず消える。

そう考えると、二人でずっと眺めたくなるような暖炉をしつらえて、薪の調達の仕方を工夫して、役割分担を決めて、お互いのために良いタイミングで永遠に暖炉に薪をくべ続けるための予行練習を、結婚式を通して一緒に行なっているような気がしてくるのです。

昔、たくさんのお客様にいただいた言葉。
『佐伯さんのこと本当に頼りになるし、一緒にいると安心する。私たち、結婚式が終わって佐伯さんがいなかったら、二人だけで色んなこと決められるのかなあって思う。』

まだ納めていない商品(あえて言いました)に対して、100%以上の信頼を寄せてくださっている本当にありがたいお言葉。でも、とても嬉しいけれど、どこかしっくりこなかった。ウエディングプランナーはそれじゃいけないって思った。いつしか私は、その日を迎えて私がいなくなっても、二人のちからでちゃんと家を温め続けられるようになることを意識して、伴走するようになりました。

結婚式の日は『二人が自分の力で燃え上がらせた』その炎をみんなにお披露目する日。わたしは、二人の想いがお客様に届くための最大のクリエイティブを、一緒に創る仲間たちと様々な方面から仕掛けて。

それを目にしてリアルに温度を感じたゲストたちは、きっとその優しく美しい火を守りたくなってしまう。いつまでも燃え続けることを願ってしまう。
そして、その後の人生にも時に誰かが薪をくべに来てくれたり、炎を囲んで楽しくおしゃべりするために、美味しい差し入れを持って遊びに来てくれたりする。
二人の姿を見ていたら自然とそうしたくなるような、ずっと応援したくなるような、ずっと関わりたくなるような、その炎を守るために薪をくべづけたくなるような、そんな1日を創ってあげたいなと思っている。だから結婚式の場で、準備期間で、人々の想いを何度も染め重ね、その炎をなるべく美しく燃えあがらせるために心を砕いています。

一生懸命に、何かを強く刻みこむ結婚式があってもいい。そうではなくて、ライトに楽しむ結婚式があってもいい。私は、二人にとっての『ちょうどいい炎の大きさ』をいつも探していて。やり方も規模もスタイルも、なんでも良い。炎の色も何色でもいい。

ただ、
『結婚する時に
結婚式をして
大切な人たちと
同じ情景を見ておくこと。』

これだけは大切なことだと思うのです。

その温度の中で何かを感じ取って
新しい感情が芽生えて。
気づかなかったことに気がついたり。
新しい自分を、お互いを知ったり。
つまり、日常生活の延長の少し深い森の奥には
想像もしなかった
燃え上がるように美しい花畑が広がっているかもしれないということ。

それを目にすることで
知らなかった世界を知って強くなり
未来へ向けての光を感じることができる。

結婚式を創るということは
人生を創るということ。

人生を創るということは
自分の脚で歩き続けて自分で歴史を刻むということ。

周りの人々との絆をリアルに肌で感じ
これまでの自分を承認し
これからの自分を見つめ
未来に向かって勇気を持って
自分たちの判断と選択で道を切り拓いて。

そして、結婚のタイミングは
一度きりの人生の炎のような儚さを理解し
この先の時間をどう生きていくか
自分の信念をその人生にどう乗せていくか
立ち止まって考える機会なのだと思う。

気づきでいいし、きっかけでいい。
いま分からないことはいつか分かればいい。
二人にはめいっぱい深呼吸して『いま』を楽しみ
思い切り自分たちを抱きしめてほしい。

二人がいつまでも強く優しく生きていくために、
結婚式を創る私達がいる。


森の中


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