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戦国市場 | 家庭用ポータブルエスプレッソグラインダーの選び方

Ciao, エスプレッソエンジニアのMarkです。

先日のSCAJへの訪問で、ハンドグラインダーは戦国状態だと思った。

家庭でエスプレッソを作る人にとっては、コンパクト且つ軽量のハンドグラインダーはありがたいが、果たしてどの基準で製品選定をすればいいだろう。

今回は、製品選定となるその選定基準について考察をしてみる。



エスプレッソグラインダーとしての選定基準

電動か手動か?

使用するコンセプトに合わせて先ず一番最初に決めたいのは手動か電動か。エスプレッソの様に繊細な粒度調整が必要な場合は、何度もTry & Errorが必要になる。

ハンドグラインダー(手動)の場合だと、一回の抽出(30g)削るのに数分かかり、何度も調整を繰り返していると筋肉痛になる。粒度があっていないと再調整、豆の種類が変わって再調整。日時が経ったら再調整。経験者でもこの泥沼にハマることはある。

こんなプロセスを毎日経験してくると、全く実用的じゃない。何かの罰ゲームだ。

そう考えると、持ち運びの制約がなければ、圧倒的に電動がオススメだ。
最近の製品だと、重量が1.5kgしかないLagom Miniなんかも市場ではある。

ドリップやフレンチプレスを目的とした購入であれば、全然ハンドグラインダーでも問題ないだろう。

細挽き仕様はマスト

細挽きができるかは最低限確認すること。これはかなり主観的な評価をレビューやメーカーの仕様で確認するしかないが、細挽きができないとそもそもエスプレッソと呼べない。

まずは、購入するときは、グラインダーがエスプレッソ対応か確認しよう。

ダイヤルの位置・目盛とクリック数

これはグラインダーの機能性の一つで、エスプレッソ目的に購入するなら検討するべき項目の一つ。上記の細挽き仕様は当然だが、その「ダイヤルの最大と最小の幅をどれだけ細かく刻めるか」は非常に重要になる。それが「クリック数(クリック間隔)」だ。当然、そのクリック数が100あるのと10あるのとでは、前者の方が粒度調節しやすく、エスプレッソに向く。

コマンダンテで作るエスプレッソ粉にはある程度粒度安定性もあり信頼できるが、標準仕様ではクリック間隔が30umなので細かな粒度調整には不向き。

中華製品としては1ZPresso J-Maxは8.8um、ヨーロッパ製ではEtzingerのetz-Iが20um刻みと製品紹介には書いてある。コマンダンテもレッドクリックすにするとこれが30um -> 15umに変更できる。

そして、ダイヤルの目盛りだが「数字や目盛りで位置が一眼でわかる仕様」でないと、毎回豆を挽くときに設定が必要になったりする。先述したように粒度調整に時間が取られるのは大きなハンデだ。初心者にはおすすめできない。

携帯性(重さ)

使うシチュエーションで検討する必要あり。定住生活を想定してない場合は、いちいち取り出したりしまったりするのが大変。手持ち鞄で持ち歩く以外であれば、3kg以下に抑えたい。鞄の中で持ち歩くなら、重さ1kg以下のハンドグラインダーの一択だが、粒度調節の手間を考えるとおすすめできない。

先述したように、度々豆の種類を変える現場であれば少し重くても電動グラインダーを選んだ方がいい。

その他の特徴で選ぶ

製品の剛性

いわゆる、製品全体の剛直さ・硬さである。しっかりした作りであればあるほど、グラインダーの刃のブレが軽減されるので、綺麗な粒度分布に仕上がる。言い換えると、クリアなエスプレッソが作りやすい。

鉄系金属を使えば硬く剛直で、しっかりした作りにはなるが、重くなる。プラスチックだとボディがブレブレで綺麗な粒度分布の製品ができない。つまり逆相関なのだ。

アルミはちょうどそのバランスを考慮した設計を容易にしてくれる。同じ製品設計の場合重量は約1/3になる。加工面でも進歩が目覚ましく、アルミでできたボディーは最近のトレンドだ。

ベアリングの数

通常、どのグラインダーにも最低2個はベアリングが設置されている。ベアリングとは、人が回転の力を加える時に、「削るために必要のない力」を受け止めて無くす部品だ。要は、余計な力がまめの弾き具合に影響与えないようにする仕組みだ。
これも、製品の剛性と同じでベアリングの数が少なかったり、性能が悪いとガタつく原因となり、粒度分布が安定しない。
コマンダンテはこのベアリングが刃側とハンドル側に1つづつ(計2つ)ある。1ZPressoのJ-Max なんかは計3つベアリングを採用してくれる。

コニカル vs. フラット刃

携帯性のあるグラインダーはコニカル刃を採用しているメーカーが殆どだ。
フラット刃は粒度分布に優れるが、製品が大きくなるためあまりコンパクトグラインダーでは使われない。

ハンドリング性

ここでハンドリングとは、使い勝手のこと。先述にダイヤルのクリック数の間隔や大きいダイヤルはストレスフリーにしてくれる。

そして、もうひとつ重要視したいのが、ダイヤルの位置。今流行りのコマンダンテの様に容器の内側にダイヤルがあると、いちいちガラス容器を取り外しする必要があり面倒。1ZPressoやKingrinderは製品外側に大きなメモリが特徴的なタイプもあり、一眼で目盛り設定がわかり実用的だ。
ぜひ両者手に取ってみてほしい。

粒度分布

エスプレッソの品質を決める上で重要な要素ではあるが、定量的な評価には専門の分析機器が必要で、未だ難しかったりする。
最近は、中華メーカーの1ZPressoやKingrinder等はコマンダンテに非常に似た形状の刃で設計しており、クリック数も幅があるためエスプレッソを作る上では筆者は同等以上の互換性があるように感じる。

また、微粉が出にくいことも重要。微分が多すぎると、抽出が安定しなかったり、ボディーが濃くクリア感にかけるエスプレッソになってしまう。
ユーザーの中には、Etzinger ETZ-1なんかは微粉が少し多いというコメントもある。

最近だとKinu社製なんかは安定した粒度分布で定評のある会社の一つだ。

材質による粉の付着

粉が製品内に付着してしまう理由は多々あるが、ひとつは油分による付着。もうひとつは静電気による付着である。
前者は豆由来の原因になるので今回詳細は割愛するが、後者の静電気による粉の付着は、製品の材料を考えれば対策できる。

購入前に注視してほしいが、製品のボディや粉の容器がプラスチックでできていたら少し注意。一般的にプラスチックは電気を通さないので、珈琲粉は付着しやすい。改良プラスチックであれば付着は回避できるが稀だろう。

特に、最近はプラスチックの粉容器なんかもあるので、この点は購入前に理解した方がいいだろう。

粉残り(Retention)

製品内に珈琲粉が残ると、古い粉の混入や重量変化の原因になってしまう。こちらも負のレビューがないことは購入前にチェックするといい。

グリップ性

ハンドグラインダーの場合、手動で回転させるのでグリップ性が悪いと、滑って怪我をしたりするし、怪力が必要になる。持ち手がシリコンやザラザラした素材でできていたりすると滑りにくく握力も最小限で済む。Kinu社のグラインダーなんかは親指で回転を固定する仕様となるため、特徴的で面白い。

まとめ


最近のハンドグラインダー市場は戦国状態になりつつあるが、特に中華メーカーの躍進がすごい。ヨーロッパメーカーは老舗ではあるが、そこで課題だったユーザーの悩みをうまく中華メーカーが掬い取って製品開発に活かしている気がする。中国勢はここ5年程の新興企業的なところもあるが、開発力では圧倒しているような気がする。

その他、製品選定においては刃の材質の種類や大きさ、粉容器のサイズ・取り付けやさ、価格も考慮する必要があるので検討する要素に追加してほしい。

今後ハンドグラインダー購入の参考になれば嬉しいです。

では次回お楽しみに!

Ciao


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