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【映画感想】ゴーストバスターズ / アフターライフ

1984年の『ゴーストバスターズ』、1989年の続編『ゴーストバスターズ2』、えー、完全に直撃世代であのロゴマークと主題歌を聴くだけでワクワクしてしまう(この頃の映画に関しては)半分洗脳の様なハマり方をしてるわけですが、その『ゴーストバスターズ2』からの直接的な続編(2016年に同じタイトルで出演者を女性にした『ゴーストバスターズ』がありますが、あれはリブート版なんだそうです。違いはよく分かりませんがなんだか面倒なので触れないでおきます。)として、オリジナルのアイバン・ライトマン監督の息子さんのジェイソン・ライトマンが監督した『ゴーストバスターズ / アフターライフ』の感想です。

はい、ということで大好きなんですよ、オリジナルの『ゴーストバスターズ』。なんか1984年当時(僕14歳でした。)のニューヨークのヒップさと言いますかね。博士号を持つ3人のインテリがオバケ退治なんていうドロップアウトしたことをするという、希望とか自由とか何やってもいいんだ的なものが詰まった憧れの映画だったんですよね(+そこにあのゴーストたちのキュートさとか、ビル・マーレー演じるピーターとシガニー・ウィーバー演じるディナの熱すぎない関係性とか、ニック・モラニス演じるルイスが単なる賑やかし役で終わらないところとか、『ブルース・ブラザーズ』で好きになったダン・エイクロイドが脚本書いてたりとか、つまり、あの『サタデー・ナイト・ライブ』人脈ってことですよね。とにかくオタク少年の心を揺さぶる要素の多い映画だったんです。それをコメディとしてみせるクールさとかもですね。)。今にして思えば、都市伝説とかオカルトなんかをカルチャーとして捉えるという考え方に最初に触れた瞬間だったかもしれません。

で、映画の公開時期同様、その『2』から30年以上経ったという世界線なのが今回の『アフターライフ』なんですね。つまり、80年代という時代感からダイレクトに現代社会に繋がる話なんですけど、まず、ここが上手かったんですよね。80年代という希望と自由に輝いていた時代から、混乱の90年代、苦悩の2000年代を通らずに、いきなり失意の2020年代に来ちゃった様な話だと思うんです。だから暗い話ではあるんです。かつての仲間(ゴーストバスターズたちですね。)も家族も裏切ってひとりで田舎街に暮らすイゴン博士のもとへ、都会での暮らしが立ちいかなくなったシングルマザーの娘家族が移住して来るんですけど、既にイゴン博士は亡くなっていたんです。つまり、田舎に引き篭もる偏屈オヤジのところへ自分は捨てられたと思っている娘が帰って来たらそのオヤジは謎まみれの生活の果てに死んでいたっていう、こうやって書いてても鬱々としてくるような話なんですけど、その謎をかつての『ゴーストバスターズ』(つまり80年代ですね。)のことなど何も知らない孫娘の(マッケンナ・グレイス演じる)フィービー(要するにこっちは2020年代ということです。)に解かせるという話にしていて、しかも、彼女は覚醒遺伝でイゴン博士の科学者としての資質を受け継いでいるんです(物語の本質を受け継ぐ続編ということでしょうかね。)。で、そういう80年代に対して何の思い入れもない(←ここのとこが重要だと思うんですよね。)フィービーたち新世代の視点でおじいちゃんが封印して来た"ゴースト=80年代から続く負の遺産"を解放してあげるって話になっているんです。過去の遺物をただ否定するのではなく、まっさらな状態の視点で見極めて良いところは良いとして受け継いで行くことでそこにあった"思い"みたいなものを解放してあげる。これ、オカルト映画としても凄く真っ当なストーリーだと思うんですよね。

で、その、(じつはオリジナルをかなり踏襲してる)ストーリーをこの2020年代で描く場合に、オリジナルと同じノリでは描けないっていうのかあって、それをフィービーたちの成長物語にして(ここのところMCUでもしきりにやっている)世代交代の話にしてるんですけど、ここも『ストレンジャー・シングス』とか『イット』とか最近の流行りの様に見えて、じつは『グーニーズ』とか『グレムリン』なんかのあの頃の映画のリスペクトのあるパロディになっているんですよね。ちゃんと老兵は老兵として描いて、あの頃の輝きは若い世代が受け継ぐからっていうね(で、これはオリジナルキャストのビル・マーレイたちがそれをやっても全く悲壮感がないくらいにその後をちゃんと生きてるというのが大きいと思うんですけどね。もちろん今回のフィービーたちのキャラがそれに匹敵するくらい魅力的だってことでもあるんですが。)。だから、時代は変わったんだよって言いながらもお爺ちゃん世代が残した"偉大な遺産"の普遍性みたいなものもちゃんと受け継いでるっていう(表面的なところでも、オリジナルのガジェットのカッコ良さとか、ゴーストたちの質感だったり、VFX表現の世界観だったり。あと、マシュマロマンが巨大化してニューヨークの街を破壊するあのシーンの興奮に値するものは描けてなかったりするところも含めて)、そういうとこが凄く良かったんですよね。で、これは偉大な父を持ちながら、それとは違うやり方で、同じ映画という文化の中に自分独自の世界を作ってきたジェイソン・ライトマン監督だから出来たのかなと思うんですよね。

ちなみに、ジェイソン・ライトマン監督は、エレン・ペイジ主演で、16歳の女の子が妊娠出産するまでをコメディにした『ジュノ』の監督なんですけど、あれも親たち世代との距離を絶妙に取りながら自分の目でちゃんと世界を見る女の子が主人公の話でしたね(あ、そして、今回の『アフターライフ』、もちろん映画後半に古参ファンへのサービスシーンめちゃくちゃあるので最後まで席を立たないことをオススメします。)。

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【『映画雑談』の会 2022 恋愛映画を考えてみる編】

2/7に行われました『映画雑談の会2022 恋愛映画について考えてみる』の配信アーカイブが2/21までご視聴頂けます。是非〜

【出演】
カシマエスヒロ(映画感想家/BOSSSTON CRUIZING MANIA)
張江浩司(ライター)
【ゲスト】
タカハシヒョウリ(オワリカラ)
冬野梅子(漫画家)

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