見出し画像

日記 【映画: PLAN75】

6月17日金曜日、公開当日に映画館に行って『PLAN75』という映画を観てきた。何故かというと、その前日に『無理ゲー社会』の著者の橘玲さんがお薦めしていたからだ。橘玲さんには18年前から注目していて、私はその著書数冊からかなり影響を受けている。

『PLAN75』の元となった話は、それを含む5つのショート映画で成るオムニバスのフォーマットで2018年に『10年 Ten Years Japan』というタイトルで映画上映された。映画のタイトルを聞いてピンと来る方も居ると思うが、これは2015年に香港で公開された『10年』の日本版だ。日本だけでなく、同プロジェクトはタイと台湾でも行われてそれぞれの国でそれぞれの10年後の未来を予想した映画を作ったらしい。

とても興味深いし、知っていたら全シリーズ観ていただろうけれど、2015年は勿論、2018年は未だ政治にも疎く香港や台湾で何が起きているかも分かっていなかったので自分のレーダーに引っ掛からなかった。ただ、香港の『10年』は香港に住んでいる短い期間にオンラインで観る機会があったので内容は知っている。

そんな『10年 Ten Years Japan』の中のショートストーリーの一つだった『PLAN75』が時間が長くなって独立した映画として戻って来たのだ。主人公は、歳を重ねても麗しいあの倍賞千恵子さんが演じている。

映画の設定は近未来、2018年から10年だから2028年だとしよう。今から6年後、日本は老人が増え続けている事が社会問題となっている。若者は自分達の職や明るい未来を奪う老人を疎み憎んでいて、老人を狙ったテロ犯罪も頻繁に起きる様になっている。そんな中、75歳以上の老人は自死を選べるという法律が国会で承認され、施行される。

PLAN75は日本政府が一貫して75歳以上の人の安楽死と死体焼却をサポートするシステムだ。日本政府も、75歳以上の人に幾らか死んでもらわないと年金や保険のシステムが破綻してしまうので積極的にPLAN75を宣伝して、売り込んでいる。街角でもブースがあるし、区役所にもPLAN 75のコマーシャルが流れている。PLAN75に申し込むと、死ぬ前のお小遣いとして日本政府から10万円も貰える。このお金で最後の晩餐とばかりにご馳走を食べる人も居れば、お葬式代に使う人も居る。

この映画に出てくる、75歳以上で自死を選ぶ人達は、孤独だ。家族は居ない。元々居なかった人も居るし、居たけれど死別した人も居る。又は、居たけれど何か事情があって音信不通になってしまった人も居る。仕事をしないでは生きていけないけれど、仕事も無いし、あっても体力的にキツい。

これを観ながら、自分の未来を想像してかなり怖くなった。私も独身で、子供も居ない。両親は健在だが、もし居なくなれば実家という概念も無くなり、じじばばを含む家族で集まって食事をする回数も少なくなるだろう。そうなった時に、私はそれでも人生の喜びを見つけ出して強く生きていけるのだろうか?

そんな事を考えながら、まだ自分の意識や判断がしっかりしている間に、自分が尊厳を失わないうちに、兄弟や甥っ子に迷惑を掛けずに自分のタイミングで死を選べるというのは有りだと思った。冗談抜きで、PLAN75の様なシステムが近未来には出来ているんじゃないだろうか。実はこの映画を公開する事で、政府は国民の反応を見ているんじゃないだろうか。

最後に、機会があったら他の『10年』を全部見てみたい。タイのも台湾のも、そして勿論日本の他の話も。『10年 Ten Years in Japan』のオムニバスの中には、日本に徴兵制が出来ているという設定のショート映画もあったらしく、今日本の周りがきな臭いこのタイミングに、PLAN75と並んで、興味がそそられている。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?