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桜の季節に思う写真旅

 我が家のすぐ近くに桜の名所があるため、朝早く出て行き、撮影する。すると朝の6時前、ちょうど空が明るくなってきた頃にはもう自分と同じような人がいて、絶好のポイントをうまくゲットできないでいる。
 桜並木できれいなところが駐車場になっていて、車のない状態は朝くらいしかない。が、先に来られている方がこれまた絶妙な位置に駐車していたりしてアングルが限られてしまう。

 昨日休日出勤の代休で、さすがに平日はおらんやろ?と思って6時頃に出向いてみると、やはりすでに人がいて、車もどかっといい位置に鎮座していた。うん、もう、参りました。みんな、実は車中泊とかしているんじゃなかろうか。

 朝のこの場所は、この季節こんなカメラマンや、ジョギングやウォーキングしている人で静かな賑やかさがある。他にもこの日の朝は、中国人らしい方がレンタカーで乗り付けていて、桜に見入っておられたし、かと思えば、若葉マークの車に乗ってきた家族が、まだほとんど停まっていないその未舗装の駐車場のど真ん中に車を停めて、そう恐らくは免許取り立て記念なのだろう、車と一緒に楽しそうに記念撮影をしていたりする。その空気がなんとなく好きだ。

 昼間は平日でもけっこうな人出があった。中には真新しいランドセルを「からって(背負って)」菜の花を背景に写真を撮る家族を何組も見かけた。そう、新しい季節である。

 県内でも有数の桜と菜の花の名所で、他にもそういう場所はあるのだけれど、数や菜の花との共演、広々とした空間、そのようなものを加味すると、桜を、歩きながら、茣蓙を引いて食事をしながら、どんなスタイルでも楽しむのに最もいい場所のように思う。

 そんな場所が、家のすぐ近くにあるものだから、桜を見るといえば、この場所、となって他の場所に行こうとなかなか思えない。
 国道沿いの山々に咲く桜だとか、どこかの神社の、とか、実はけっこう見たい場所はあるのに、「他も行きたいが、だからといってここ(サクラの名所)に行かないなんて、」と思ってつい、いつもの場所に出かけてしまうのだ。

 昨年の桜はそれでも、ちょっと違う場所に出向いてもみた。

 そうして思ったことがある。
 桜の名所でなくても、存在感のある場所があるということ。さほど見向きもされないようなところに立っているけれど、実はその場を美しくしてくれている花があること。
 できることならば、そんな花を探しに出たい。春を見つける小旅行だ。

 それから、桜前線が北上するのに従って自分らも北上していくという旅をしてみたいなと思っている。これはなかなか難しい。単に前線は北上するだけではないし、何よりそんな長期の休みが取れるわけがないからだ。
 桜前線の速度は、時速4キロほどだと聞いたことがある。それは徒歩で進んでいくのと同じ速度だ。この話を聞いた幼少の僕は、花が開く速度と人間の速度が同じことにいたく感動したのか、それから30年経った今でも記憶している。歩きながら花が開くのをずっと北海道まで見ていけるじゃないか、と。

 これら2つの旅をいつかしてみたい。花を観て、そこに佇む人々の一コマを見て、見知らぬ春の風景を見る。そうしてふと寂しさを感じたりする。寂しさを感じて、少し考えたりもする。そんな時間を自分の体の中に閉じ込めたいのだ。

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