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30日間の革命 #革命編 2日目

 「でもさ、正直結構厳しい状況だよな。だって、前は生徒会室とか第二視聴覚室とか色々打ち合わせをする場所もあったけど、今はただの生徒だからね。勝手に教室を使うわけにもいかないし、こうやって人目のつく場所でこそこそ話をしていたら、すぐに生徒会にバレるよ」

 加賀と坂本は引き続き教室で話をしていた。そして、加賀の言う通り、現在の状況では計画を立てるための打ち合わせをする場所すらないような状況だった。

 「まあ下校した後とかでもいいんだけど、それにしたって毎回ファミレスとかカラオケとか行くのもな。お金もかかるしそんな時間とれないよな」

 加賀はどう考えても、この状況から再び多くの学生を巻き込んで革命を起こす具体的な方法が思い浮かばなかった。

 「そうね。セトの言う通り、今まで通りのやり方は一切できないわね。でも方法はあるわ」

 坂本には何か策がある様子だった。

 「方法ってどんなの?」

 「私たちが何か策を立てたり、打ち合わせをしたり行動したりすることが不自然にならなきゃいいのよ」

 「いや、さすがにこの状況じゃ不自然に思われるだろ。人目のつかない場所に行ったって、俺たちだけいなくなったら絶対怪しまれるよ」

 「そうね。だから、みんなの前で堂々とやればいいの」

 「はあ? それじゃあもろにバレちゃうじゃん。どういうこと?」

 加賀は坂本の話が全く見えずにいた。

 「だからね、学校のイベントを利用するのよ。つまり、学校から『話し合いをしてください』って言われたら、私たちが集まって話をしていても不自然じゃないでしょ? その状況を利用するのよ」

 「学校のイベント? そんな話し合いの必要なイベントなんかあったっけ?」

 「去年もやったでしょ? 文化祭よ」

 坂本が目をつけたのは文化祭だった。生徒会長の座を奪われ、白の会の活動も制限されている今、学校の体制を変えるためには大きなイベントを利用するしかない。それも全校生徒が参加するような大きなものである必要がある。残りの学校生活で全校生徒が参加する大きなイベントと言えば、11月に行われる文化祭しかなかった。そして、「文化祭に向けた話し合い」という大義名分を得られれば、いつでもどこでも打ち合わせや話し合いをしていても不自然ではなくなる。坂本はそれを狙っていた。

 「なるほど。そういえば、文化祭って生徒たちで話し合って演劇作ってくんだよな。それなら文化祭に向けての打ち合わせとか言えば、俺たちが話し合ってててもまあ問題はないよな。……でもさ、そうは言っても俺たちだけで話し合いをしてちゃ、さすがに怪しまれるんじゃないの?」

 「もちろんそうよ。だから、みんなを巻き込むのよ。何も話し合いの場を得るためだけに文化祭を利用するつもりじゃないわ。この文化祭から革命を起こすつもりよ。白の会の動きが制限された今、まずは身近な人たちを巻き込んでいくしかないわ」

 「いやいやちょっと待ってよ。クラスの人を巻き込むってさ、江藤ちゃんもいるんだよ? 江藤ちゃんなんて馬場の彼女じゃん。もう情報が筒抜けどころじゃないぞ」

 馬場は、坂本の提案に驚きいた。なんせ、あの女子バレー部キャプテンの江藤は坂本たちと同じクラスである。それなのに、クラス内で革命の話を進めてしまえば、生徒会長の馬場に情報が行くことは火を見るよりも明らかだった。

 それでも坂本は自信たっぷりにこう答えた。

 「だから、彼女も含めて巻き込むの。私たちに残された選択肢は少ないわ。強引にでもチャンスつかみにいかないと革命なんて絶対に起こせない。文化祭がその最後のチャンスなのかもしれないのよ。江藤さんも含めて、クラスの人をまずは味方にする。そこからはじめましょう」

 坂本は本気だった。生半可な気持ちではなく、本気で革命を起こそうとしている。加賀にもそれが伝わった。そして、加賀は改めて自分たちが置かれている状況を理解した。それくらいのことをしなければ、革命を起こすことなんて出来ない。今まで先の見えない不安に覆われていた加賀の心にも再び革命の火が灯った。

▼30日間の革命 第一部
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▼30日間の革命 ~第二部革命編~
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