30日間の革命 #革命編 11日目

 加賀はそれから、江藤の1日の様子を見てみることにした。

 江藤は夏休みが明けた今も、まだ部活に参加しているようで、朝は部活に参加してから教室へ戻ってきていた。朝練終わりの江藤は決まって機嫌が悪い。その不機嫌さは周りにも伝わり、朝の江藤に話しかける者はほとんどいなかった。

 授業が始まると、江藤の機嫌は徐々に戻ってくる。時折眠たそうな姿を見せながらも、昼休みに入る頃には笑顔が戻っていた。友人と話しをしている時の彼女の無邪気な笑顔を見ると、かつての江藤の姿を思い出す。

 女子バレー部のキャプテンになる前の江藤は、厳しさはありながらも、少しふざけたことが好きでクラスでも人気があった。バレー部では上級生の厳しい指導にも耐え、クラスではその持ち前の明るさもあり、江藤を慕う同級生や後輩も多くいた。しかし、彼女の中では1つの大きな目標があった。女子バレー部のキャプテンになること。誰もが通るだけで頭を下げ、教師でさえも意見できない。そんな存在になることが、彼女の高校生活での目標だった。だからこそ、徐々に彼女の明るさは厳しさへと変化していき、その人気も恐怖へと変貌していったのである。そして、女子バレー部のキャプテンに就任すると、その厳しさは更に増し、歴代で最も権力の強い女子バレー部のキャプテンになったのだった。

 ただ、やはり友人と話をしているときの江藤を見ると、かつての無邪気に笑う明るい一面は完全に失われていないと感じた。それは、笑顔を見せた後に、少し周囲を確認するような仕草が見られたからだ。一瞬の隙を見せた後、誰かにそれが見られていないのかを心配しているようだった。やはり、女子バレー部のキャプテンとしての威厳を保つために、常に気が抜けないように加賀には見えた。

 加賀が江藤のことを観察しているとき、ふいに彼女と目があった。加賀は一瞬目を逸らそうかと思ったが、思い切って少しだけ笑顔を見せてみた。

 すると江藤は一瞬困ったような表情を見せ、彼女から目を逸らした。かつてはお互いに冗談を言いながらふざけあった仲だったが、今は敵対するような関係である。加賀はその事実を改めて感じ、少し寂しい気持ちになった。

 ただ、だからこそ、彼女を味方につけたいと思った。革命のためだけではなく、もう一度彼女と無邪気に笑いあいたい。誰と付き合ってるとか、立場とか関係なく、ただただ彼女とそんな関係に戻りたいと心の中でそう思った。

 加賀はゆっくりと立ち上がり、江藤のもとへと向かう。そして、席に座っている彼女に話しかけた。

▼30日間の革命 第一部
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▼30日間の革命 ~第二部革命編~
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