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2023年9月の読了本+感想


第一芸人文芸部


第一芸人文芸部』のstand.fmの放送も始まって3ヶ月が経過した。

メンバーは、昨年エッセイ集『こんなにバイトして芸人続けなあかんか』を上梓したピストジャムさんと僕。

毎週水曜日、22時からstand.fmの生配信で、今週読んだ本について語ったり、活動報告も行なっているので、ぜひ聴いてみてください!
(アーカイブもあります)

部長の又吉さんも、いつか急に参加してくれるはず!!

そして読書の秋本番に向けて、『第一芸人文芸部』から大きな報告ができそうなので、ぜひ楽しみにしていてください!


ここから9月に読了した小説を紹介します!
今月は書き物があったり、バタバタしていたので少なめ。10月はたくさん読むぞ!!

2023年9月に読了した小説

十角館の殺人 綾辻行人

いつか読んでみたかった、誰もが勧める本格ミステリにやっと手を伸ばす。第一芸人文芸部では第10回目の『ミステリー小説』特集でも紹介しました。

この読書は、自分にとって、かなり学びが多かった。誰が犯人かはわからなかったけれど、ある事象に注目すれば誰が殺されていくかわかり、その通りになった。これはもしミステリーを書く時があったら生かせる。

ストーリーは、十角館という建物がある『島』と『本土』が順番に描かれていく。かなり秀逸で、ある一行を読んだ時に、なぜ多くの人の胸を打ったのか理解できた。もちろん私もしてやられました。油断してないつもりだったのに……。

あひる 今村夏子

こちらはkindleで読了。

いやー不気味。
世の中の『普通』とはズレたことが起きるんだけど、登場人物は不気味だとか、ズレてると感じずに(あるいは言い出せずに)どんどん進むところがまさに今村夏子ワールド。
え、それでいいの?と、何度も思った。

そして最終的に、子どものある一言に爆笑させられた。そこで触れるんかい!と読んだ誰もが思うでしょう。

また他の今村作品でも味わった気持ち悪さを、ぞんぶんに感じさせてくれた。
読み手(客)が覚える違和感を解決してないのに、あたかも解決してるように話が進んでいく展開は、小説や映画では味わったことがない。あるのは漫才とコント。今村さんお笑い好きだと思うんだよな〜。

星の子 今村夏子

最高。天才。おもしろすぎる。
なんでこんなに面白いんだろう。一気読み。

まーちゃん、ひろゆき、大学生のふたりの噂、なにひとつ解決してないのに面白い。
考えて考えて物語をプロットから作り込むタイプの人にはこれは書けないのではないのかな。

純粋で嘘をつかない主人公と書いてしまえばチープだが、それゆえにあらゆる感覚が欠陥している。その目線で、すべてを描ききっているのがすごい。

流浪の月 凪良ゆう

ドラマみたい。本当にドラマを読んでいるみたいだった。

物語は主人公の更紗(さらさ)の9歳と、24歳の一幕が描かれている。面白くて一気読み。

———あらすじ———

・9歳
更紗の大好きだった洒落た生活は、思いがけない父との別れ、そこから必然に起きた母との別れで失われる。
おばの家での所帯染みた生活は、以前のように毎日がきらめくことはなく、過去の生活を羨望しながら毎日を過ごしているのだった。
さらに中二のいとこから性被害をうける。
これだけでも酷い境遇だが、公園での文(ふみ)との出会いから、さらなる転落が待っている。

出会いは雨の日、傘を貸してくれたのだった。
「帰らないの?」
「帰りたくないの?」
「うちに来る?」
「いく」
更紗はその日から文の家に居座ってしまう。
そこは自由だった。洒落た生活をしていた頃のように振る舞っても咎められないのだった。

しかしある日、ふとテレビをつけると「更紗ちゃん誘拐事件」の報道が目に飛び込んでくる。

・24歳
ファミレスでバイトをしながら毎日を過ごしている更紗。
彼氏の亮と同棲中。
ネットで調べると過去の誘拐事件の被害者としてデジタルタトゥー。働く先々でも過去のことを調べられ『色々されたんだろう?』と幼児性被害者の哀れみの目で見られる。しかし更紗は何もされておらず、文はただの優しかった人だと知っているし、そこで過ごした日々を宝物のように大切に思っている。

ある日、彼氏は、祖母が倒れたから実家に帰らないといけなくなる。そこへ更紗も連れて行きたいという。いずれは結婚することを仄めかされ、全くそんなことを考えていなかった更紗は戸惑う。

時を同じくして仕事後、仕事先の人といったカフェで、文と出会ってしまう……。

——感想——

自分が肯定していたいことを、他の誰も肯定してくれないことの苦しさ。
ストックホルム症候群だと決めつけられる生きづらさ。
あらゆる救いは、社会からの決めつけにより抹殺される。
それでも生きてくことを決めた2人の強さに感動した。
ワイングラスの話、トリネコの話など、主人公と文の境遇の見立てが秀逸だった。

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