【超短編小説】 沙月さん その4
「久しぶりね」
「ご無沙汰してます。沙月さん、こんな時間までどうしたんですか?」
「どうしたもないわ。商談がすぐに終わらなくて、気が付いたらこんな時間よ」
「大変でしたね」
「本当、商談を早送りできるリモコンとかないかしら」
「それ、良いですね。俺、部長に毎日使いますよ」
沙月さんはアハハと笑って、机の引き出しから何かを取り出した。
「あと、これ。はい」
沙月さんは僕に紙袋に入った包み紙を渡した。
「ありがとうございます、中身は何ですか?」
「ちょっと早いけどね。バレンタイン」
「マジですか、ありがとうございます」
「義理チョコだからね」
「義理でも嬉しいっすよ。食べても良いですか?」
「どうぞ、ご自由に」
俺は一口チョコレートを齧った。
「苦いですね、コーヒー味ですか?」
「斎藤君の目が覚めるようにね」
「バレてたんですか、ありがとうございます」
「次寝たら、私のお願い聞いてもらうからね」(つづく)