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【超短編小説】 メロンパン


私はメロンパンが好き。

それは、幼馴染のお母さんが経営しているパン屋で売っている。

「いらっしゃい、今日も来てくれたのね」とおばさんは温かく出迎えてくれた。

「メロンパン1つ」

私がおばさんとやりとりをしていると、あいつが店の奥から出てきた。

「また、メロンパン、買いに来たのかよ。うちのパンなんか買いに来んなよ」

あいつは私にそう言うと、おばさんはすぐに咎めた。

「コラ、お客さんに失礼でしょ。舞ちゃんはうちの常連さんなのよ」

「うっせーよ。同じ学校の女がパン買いに来たら恥ずいんだよ」

「良いじゃないの。あんたのクラスでもうちのパン買いに来てもらえるように宣伝してよ」とおばさんが言うと「やだねー」と言ってあいつは店の奥に戻っていた。

「ごめんなさいね。うちの子、いつもあんな感じなのよ。あんなんだから、友達もできなくて。舞ちゃんとは保育園から同じだったでしょ、だから甘えちゃって」

「いえ、いつものことですから。それに、私、ここのメロンパン大好きなんです」と私は答えた。

「そう、嬉しいわ。これサービスしておくから」とおばさんはクリームパンを入れてくれた。

店を出ると、辺りは薄暗くなっていた。

私がこのパン屋に行く理由はメロンパンだけじゃない。

あいつを見たかったからだ。

学校は同じでもクラスが違うあいつと話せるのは、パン屋で会う時ぐらいだった。

「あいつ、恥ずかしかったんだ」

私はその日、メロンパンよりも先にクリームパンから食べた。(完)