友から手紙が届いた。
中を開けば、先月、旅行をした内容だった。
東京旅では、わたしのお勧めした
吉祥寺にある「くぐつ草」にも行ってみたらしい。

「くぐつ草」
あの喫茶店の雰囲気にもう一度浸りたくなる。
わたしはレーズンの散りばめられたスパイシーカレーを
店内やお客さんを観察しながら食していた。
洞窟の中でオレンジの灯火でやんわりと包み込んでくれた。
斜め前の客席には父と息子がアイスコーヒーとオレンジジュースを片手に
それぞれ読書に耽っていた。
そんな彼らの様子を見て、わたしは1人勝手にお話を作ったり、
手元の自分の皿の上にあるレーズンを数えたりしながら店内を過ごした。

友はあの空間で「もぐら」の気持ちを共感できたらしい。

訪れた場所は同じでも、当たり前だが感じたことや考えたこと、過ごし方は違う。
それを手紙を通して共有できたこと、新たな楽しみ方を発見できたことが嬉しかったのであった。