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出会い

出会ったのが間違いだったなんて思いたくなかった。どうして出会ってしまったのかも考えたくない。ただ出会ったからはじまっただけ。そう自分に何度も言い聞かせる。

気づかないうちに運命の歯車がゆっくりまわっていたんだろう。あの瞬間に2つの歯車は重なりあって、強い力でカチリとはまり込んでしまったんだ。

私たちはたくさんの時間を一緒に過ごしたね。

よく話して、よく笑って、よく心を確かめ合った。不安定な私を支えるのはあなたには負担だったと思うけど、それでもあなたは精一杯、私を大切にしてくれた。私もあなたが大切だった。

あなたは私を安心させようと、できるかぎりの言葉を尽くしてくれたね。癒されてほしい、安らいでほしいと思ってくれているのがなんども伝わってきたよ。

だけど歯車はまた静かに動きだした。

キリキリと回りだしたのを私は感じていた。その動きをどうにかして止めたくて二人の時間をもっと深くしてみたけど、それでも運命の歯車は残酷だ。もう止まらない。

私たちをはめあわせた優しい歯車は、冷たい機械音を立てて動いていく。

その音は私を一人ぼっちの闇に突き落とす。

「お別れのときが来ました」

厳粛で残酷な声が耳に響いた。

その瞬間に目が覚めた。汗ばんでいる自分を感じた。あなたの存在を確かめる。ベッドで眠るあなたに安堵する。どこにも行かないで。そっとあなたの胸に顔をうずめ、じっとりした体を落ち着かせる。呼吸を整える。

人と人の出会いは誰の仕業だろう。その出会いの意味をいつ誰が教えてくれるのだろう。何年先に分かるんだろう。誰にも分からない。

だけど今はただ、あのとき君に出会えて良かったと、そう言ってもらえるような時間をたくさんあなたに送りたい。


#短編小説 #掌編小説 #出会い #愛 #別れ



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