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「豊かな家ごもり」本

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延べ約700冊の読書レビューを書いてきた中から、外出自粛の強い味方になる、家ごもり生活を豊かにしてくれそうな本を紹介していきます。※「在宅ライフスタイルの本」という意味ではありま… もっと読む
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誰の人生にも、語るに値する物語がある:『しずけさとユーモアを』

誰の人生にも、語るに値する物語がある:『しずけさとユーモアを』

書かなくたって、本にならなくたって、一人ひとりの生き様は全部、布張り箔押し函入りの美装が似合う物語だ。(p304)

この言葉が、著者であるセンジュ出版代表・吉満明子さんの根本にある想いを一番表している気がする。

この本は、起業の話であり、出版の話であり、編集の話であると同時に、一人ひとりの「自身の人生の肯定」の話なのではないかと思う。本や出版に携わる人以外にも、この本を手に取ってほしい人の顔が

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"Passion"のふたつの意味。受難のさなかにあっても止められない情熱の物語。:『月と六ペンス』

"Passion"のふたつの意味。受難のさなかにあっても止められない情熱の物語。:『月と六ペンス』

"Passion"には、「情熱」とは別の意味がある。そのことを最初に知ったのは、あるクラシック音楽のタイトルからでした。

  マタイ受難曲 Matthäus-Passion

Passion──「情熱」と「受難」。このふたつの意味のリンクを考えると、不思議な納得感がありました。

その感覚がはっきりと腑に落ちたのは、『月と六ペンス』という物語を読み終えたときでした。"Passion"のふたつの意

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想像は外出を自粛しない。そんな想像を超えて、「体感」すらさせてくれる紀行文:『アラスカ 光と風』

想像は外出を自粛しない。そんな想像を超えて、「体感」すらさせてくれる紀行文:『アラスカ 光と風』

本を愛してやまないからこそ、「おすすめの本は?」と聞かれると悩んでしまいます。

なんでもそうだろうけれど、goodかどうかよりも、大事なのはfitかどうか。「fitじゃないものは、果たしてgoodなのか」とすら思います。その人の性格、置かれている状況、いま求めるものによって、fitは変わってくる。だから、そういう色々を聞いてみないことには、「おすすめ」を答えることはなかなか難しいのです。

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