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怪獣と君

昼下がり。
日差しは強く、曇った胸の内を照らす。
照らされて焼かれた匂いに神経を休ませる。
怪獣は、可愛い君に包まれて愛を知ったあの日を思い出していた。


怖いから遠ざけるのではなく、知ろうとした君。
誰も信じられず、諦めていた僕を温めてくれた。

それなのに僕は君に何もできずにいた。
それが優しさだとも知らずに。
不快感さえ感じて、鬱陶しかった。

本当に、何も、できなかった。

知らんぷりされ、蔑まれるのが当たり前な僕。
傷つけられている事さえ知らなかった。
それを教えてくれたのも、君だった。

だけど、気づけなかった。

僕のせいで君が傷ついていたことに。
君の愛する人間が君から離れていったことに。
君が心を失いかけていたことに。

それでも君は懸命に笑って僕のそばにいた。
決して諦めてはくれなかった。
諦めた方が君のためなのに、楽なのに。

君のせいで傷つくことを知ってしまったから、離れられたら僕は傷つく。でも、いいんだ僕なら。だから、君は君を守るために僕から離れるんだ。

そう、言えたなら良かった。
早く気づいて言わなければならなかった。


でももう遅い。
君の周りには誰もいない。



この怪獣には弱点があった。
太陽の光。
怪獣はそれを彼女に話していた。

それを聞きつけたある男は彼女を利用し、怪獣殺害計画を立てる。もちろん、人間を脅かす異物排除という正義のために。

だが、彼女は協力しなかった。
もはや彼女にとって、怪獣だけが支えだったから。
拷問され、死の淵に立っても彼女は拒む。
苦しみの中でも、愛を忘れない。
それが彼女だった。


彼女に会えなくなった怪獣は、寂しさを知った。
恋しい、愛おしい、狂おしい。
そんな感情が波のように押し寄せる。
そしておんおんと泣き、雷鳴のような慟哭が夜の街に響き渡っていく。

洞窟の中で、消えてゆく感情。
最初に生まれた憎しみや恨み、怒りさえも消えた。
もう、僕には何もない。
いや、最初から僕には何もなかったか。
でも、君が教えてくれてしまったから。
愛も優しさも全て。


迷いながらも真っ直ぐに僕を見つめた君の瞳。
そんな瞳を持つ人間に今後出会うことはないだろう。

あぁ、もういいだろう?
十分だ。
何をしていたんだ、僕は。


昼下がり。
僕は洞窟を出る。
初めて見る太陽。ひどく眩しい。
焼かれる肌はゆっくりと焦げていく。

だけど、日差しは強くも曇った心を照らしていた。
照らされて焼かれた焦げる匂いに心を休ませる。
そして、苦しみの中で愛を捧ぐ。

心を見失っていても、愛だけはそばにある。
そして僕はその愛で心を得たから、君を守れるんだ。

そう信じた。

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