祗燈 柃夜

暖かな日差しの中に揺れ動く影を、私は愛する

祗燈 柃夜

暖かな日差しの中に揺れ動く影を、私は愛する

マガジン

  • 〈ある人間の逃避行〉

    【月一更新】エッセイまとめ。とりとめのない日常を記します。

  • 【1分フィクション】

    1分以内で読み切り可能なフィクション作品集。 2022年1月より週1本追加しています。(2024.4時点) 追記:2024年度は不定期更新

  • ひとりごと。

    【随時更新】深い意味はなく、日常の中で感じたことを書き留めたものをまとめています。

最近の記事

  • 固定された記事

小説『マイ・ブラウン・シュガー』<あらすじ/各話リンク>

「…この恋を素直に抱きしめていたかった」 あらすじカフェで出会った高校生のユリとヒロはある日をきっかけにお互い惹かれ始めていた。灰色な日常に差すその柔らかく温かい2人の時間を必死に守ろうとするが、感情に翻弄されて関係は瞬く間に形を変化させていく。時間が経ち、入り乱れる感情に向き合って出した答えにやっと辿り着いた時、彼らはある秘密を知ることに。全ての理由が明らかになった時、2人を待ち受ける悲しい結末とはーー。 青い痛みと心の春を映す脆くて繊細なラブストーリー。 相関図&

    • 〈初めてのエッセイと目標〉

      少し震える心でフリック入力しながら、どう書き始めようか迷っている。 初めてのエッセイ投稿はどんなものになるだろう。 カフェの中で一字一字丁寧に打っては消したりして、やっとここまで辿り着いた。 やはり、苦手だ。 それもそう。 苦手だから今の今まで避けてきたのだ。 フィクションの枠に自分の気持ちを押し込めて表現してきた。虚像のキャラクターに自分や他人を投影したりもした。上手くできてないことやそのせいで中々伝わらないことは重々承知だが、それでも良かった。 じゃあなぜ、今エッセ

      • 暗黒の未来スコープ③

        恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第三十三話】 (ユリ) 陽気な季節でも 私の心は冷めたまま。 この先にある未来に、期待が持てなかった。 カラン 扉が音をたてる。 今日は水曜日ではない。 それでもつい寄ってしまった。 本当は毎日でも通いたいのだけれど。 そこは我慢。 いつも通り席につきホットココアを頼む。 カバンの中にあるファイルから課題確認表を取ろうとすると、ふと進路希望調査の紙が目に入った。 そういえば、君はどんな未来を歩もうとしているのだろう。結婚や仕

        • 暗黒の未来スコープ②

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第三十ニ話】 (ヒロ) 柔らかな風景が 窓から滲み出て 空にかかる雲は 心なしか微笑んでいるように見える。 そんな希望に満ちた季節が来ても。 俺は何も変わらない。 ただ目の前の問題をこなしていくだけの毎日。 課題、バイト、あとは家のこと諸々。 放課後に遊んだりすることもしないし、密接に誰かと関わることもしない。 幸せな青春なんてものを望んではいけないから。 ガラガラガラ… チャイムが鳴り、新しい担任が入ってくる。 少々厳つ

        • 固定された記事

        小説『マイ・ブラウン・シュガー』<あらすじ/各話リンク>

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        • 〈ある人間の逃避行〉
          1本
        • 【1分フィクション】
          89本
        • ひとりごと。
          20本

        記事

          暗黒の未来スコープ①

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第三十一話】 (ユリ) 新たな季節の兆しの中に住む 穏やかに戯れる人々は みんな幸せなのだろうか。 新学年、新担任、新たなステージ。 学生という身分に属してから、12年目に突入した。 もはや新しい学期だからといって楽しみなことは何もない。ただ、クラスの中で誰か仲良くなれそうな人を見つけなきゃいけないのは面倒だった。グループ分けで気を遣われたくはないし、余るのも嫌。 「ユリ~!!!!今年も一緒だね☆」 いつも語尾に星マークが見え

          暗黒の未来スコープ①

          花を咲かせ!

          それは突然だった。 離れ離れを迫られる選択。 誰にも止められない君の夢。 無限の可能性が限りあるものだと現実を知った時、君は焦った、そして戸惑った。 このままで良いのか、と。 この夢は見るもので叶うものではないのか、と。 夢を追いかけたところで夢に辿り着けるわけじゃない。理想は現実から程遠い。 でも、君は夢を選んだ。 それが、君だ。 私は拒む。 嫌だと心では叫んでいる。 ゆっくりと育む日常ではなく 熾烈に求める人生を生きる。 その人生にもう私はいない。 過去

          花を咲かせ!

          怪獣と君

          昼下がり。 日差しは強く、曇った胸の内を照らす。 照らされて焼かれた匂いに神経を休ませる。 怪獣は、可愛い君に包まれて愛を知ったあの日を思い出していた。 怖いから遠ざけるのではなく、知ろうとした君。 誰も信じられず、諦めていた僕を温めてくれた。 それなのに僕は君に何もできずにいた。 それが優しさだとも知らずに。 不快感さえ感じて、鬱陶しかった。 本当に、何も、できなかった。 知らんぷりされ、蔑まれるのが当たり前な僕。 傷つけられている事さえ知らなかった。 それを教えて

          恋と寒空⑥

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第三十話】 (ヒロ) コート、ネックウォーマー、手袋。 これだけ防寒装備を整えても、 自転車を乗る人間の体感温度は著しく低い。 こんな時に、俺は俺が人間であることを肉体で感じる。 それ以外では”俺とは一体、何なのだろう”と常に思っていた。 おつかれ~とニヤリ顔で言うタクトと別れる。 からかいやがって。そんなに顔から滲み出ているのか? 一人になり、いつもなら一刻も早くこの寒さから逃れたいはずの道で俺は彼女と一緒にここを歩いたあの

          恋と寒空⑥

          恋と寒空⑤

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第二十九話】 (ユリ) 暗い夜空に抱かれて 星を眺める時間に 思い出すのは君のこと。 田んぼ道、初めて君と歩いた日。 一瞬で蘇る記憶。 今日までに見たあらゆる君の姿が脳内で復元されていく。 「あー、好きだ。」 人を恋しくなるという感情が今まではわからなかったけど、知ってしまった自分が少し恥ずかしい。 ビュン 冷たい風が私の頬を叩く。 誰かが私に目を覚ましてほしいみたいに、怒っているかのように、痛い。 わかってる。 想像す

          恋と寒空⑤

          恋と寒空④

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第二十八話】 (ヒロ) 笑顔は人を豊かにする。 彼女の微笑みにはどんな意味があるのだろう。 俺に向ける笑顔とカンナさんに向ける笑顔にはどんな違いがあるだろうか。 席に座ってただ話を聞いている彼女と俺の前で沢山話をしてくれる彼女。勘だけど、多分そこに差異はない。本当に笑顔は人を豊かにするのだろうか。 彼女が一人佇む時の”無”の表情。 俺の目にはその時が一番輝いて見えていた。 確かに作業をしながら遠くに見える彼女はとても愛らしい

          恋と寒空④

          恋と寒空③

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第二十七話】 (ユリ) 偽りの時間。 それはいつもよりゆっくりと長く目の前を通過していく。 カンナ先輩が久しぶりにウクレレ教室に顔を出し、一緒にカフェに来た。「久しぶり、ヒロ」と先輩が挨拶をする。そういえばヒロって呼んでいたな。 たったそれだけ。 だけど私の心にヒヤリと氷柱の先が当たる。 私もそうやって呼べるようになれたらいいのに。 いつも一人でいる席に二人で座っていると、やっぱり少し違和感があった。ここはもう「カンナ先輩と来

          恋と寒空③

          恋と寒空②

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第二十六話】 (ヒロ) 学校周辺にまで響き渡るチャイムが帰宅時間を知らせる。そしてすぐさま、俺は自転車置き場へ向かった。 今日は水曜日。 週末から一番遠くて嫌なはずの曜日が、今の俺にとって一番楽しみな日になっている。 店に着くと、タクトが既に準備を始めていた。 昼間のスタッフさんたちはもう帰ったらしい。 俺も急いで準備をし、接客や片付けをする。 彼女が来る時間は決まっているのに、業務中チラチラと扉を何度も確認してしまっていた。

          恋と寒空②

          恋と寒空①

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第二十五話】 (ユリ) 目を覚ますと、そこにあるのはただの日常。 いつもと変わらない朝が私を待っていた。 アラームに気づかず、慌てて飛び起きる。 素早く朝食を済ませて、制服に着替え、髪を整えて。 自転車に飛び乗り、駅に向かう。 セーフ。 ギリギリ間に合い、電車に駆け込んで一息。 息が整ったら、単語帳を開いて今日の小テストのために暗記。気づいたら学校の最寄り駅に着いていて、周りは同じ制服を着た生徒たちで溢れていた。集団に紛れて、

          恋と寒空①

          地球出身

          僕は地球出身だ。 アジア区域日本エリアが僕の生まれた場所。 全宇宙的に見て地球人はどちらかといえば発展している方らしく、頭が良い。 そう勝手に思っていたけど。 それは偏見だ。 ある点において優れていても、別の点においては劣っているから、一概に僕たちが正しいとは言えない。 みんなそれはわかっている。 でもそれでも、僕らが正しいと主張するしかない。後には戻れないし、先祖が頑張ってきた過去を否定する事は"出身アイデンティティ"を崩壊させる事だったから。だから、僕らは正し

          溶け出したわたあめ⑥

          第二十四話 (ヒロ) 雲が覆い隠す暗闇であっても、月の光は地球に届く。 そんな靄がかった月を彼女も見ているだろうか。 彼女は今、何をしているのだろう。 トーク画面を開け、さっき届いた言葉をまた読む。 「今日は楽しかった、ありがとう! リストにあった他のお店も今度行けたらいいね」 こんなメッセージをもらったら誰でも口が緩んでしまう。次もある雰囲気ってことは、彼女も俺と同じ気持ちを持っているのだろうか。いや、彼女にとってこれはいわば社交辞令のようなやりとりかもしれない。

          溶け出したわたあめ⑥

          溶け出したわたあめ⑤

          第二十三話 (ユリ) 曇りがかった空のせいで、星たちが姿を隠す夜。 寝る前にスマホを眺める私は また君との時間を思い出していた。 写真を一枚も撮らなかったことを後悔する。一枚だけ、自分が見る用に君を盗撮すれば良かった。 …なんてね。 そういえば、まだお礼の連絡もしていない。 メッセージアプリを開けると、チャット履歴の一番上に君の名前。なんの経験もない私はどんな言葉を選んでいいのかわからなかった。 校内で一番自分に近いランにも 私の知っている中で君に一番近いカンナ

          溶け出したわたあめ⑤