見出し画像

4月から環境が変わったので「嫌われる勇気」を久々に読み直しました。~勇気の心理学~_読書#9

※本記事は5600文字程度あります。


本の情報

嫌われる勇気
岸見一郎、古賀史健(著)
2013年12月12日 初版発行

最初に

この本を購入して読んだのは、当時話題になって少し後のことです。
なので、かれこれ10年前位でしょうか。

読み返してみようと思ったのは、この4月で仕事の環境が大きく変わった為です。長く経験を積んでいた職種から畑違いの職種へ異動となり、その職種に長年携わってきた方々とは雲泥の差があり、色々と教わっています。

ドラクエの「転職」、自分のレベルが1になったかのような。レベル1からの戦闘は一気にレベル上がりますけど、現実では自分のレベル見えませんしね…

早くレベル上げていかないと、と焦る気持ちはありつつ、長い目で少しずつレベルアップで良い、というかそれしかできないよね、と思いながら過ごしてます。

アドラー心理学は、勇気の心理学です。

嫌われる勇気 P53より

「勇気」で思い出すのは、昔見たアニメ「偽物語」で言っていた
『最後に「勇気」を付けると、たいていの言葉はポジティブになる』
ということ。

恋人に嘘をつく勇気 →優しい嘘であるかのよう…
仲間を裏切る勇気 →仲間を守ったかのような印象が…
怠惰に暮らす勇気 →あえてその境遇に身をやつしている?

しょうもなくて、すみません。
しかし、「勇気」という言葉は、救われるような奮い立たされるような、魔法の言葉のように思えてきます。新しい環境には必要なマインド。
で、「勇気」つながりで、なんとなく読み返した訳です。

内容

さて、本題です。

哲人と青年の対話形式なので、とても読みやいですし、個々の内容は分かり易いのですが、全体像や各項目の繋がりが少し掴みにくいと思ってまして、自分の中でポイントとなった項目を集めて整理してみました。

アドラーは「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」(他者と自分を比較するという点も含めた広い意味)と断言しています。本の内容も、対人関係に焦点を当てたものが多いのですが、この記事では、「幸福になるためにどうするか?」に向けて整理してます。

基本情報

アルフレッド・アドラーが20世紀初頭に創設した心理学は、「アドラー心理学」と一般に言われる。

他者を変えるための心理学ではなく、「自分が変わるための心理学」であり、ギリシャ哲学と地続きの思想、学問と言われる。

全体像的な所とキーワード

※太字のキーワードは後述してます。

<本より解釈>
結論から、「幸福とは貢献感である」

他者への貢献(社会への貢献)を通じて、「自分は誰かの役に立っている」と思え、自分に価値があることを実感できる。目に見える貢献でなくとも良く、主観的な感覚、すなわち「貢献感」を持てれば良い。

但し、承認欲求を通じて得られた貢献感には、自由がない。他者からの承認を必要とせず、貢献していると「自ら感じる」こと。(個人的に、この難易度は高いと思われる)

「貢献感」までの道筋は、
   ①自己受容【課題の分離、目的論】
→②他者信頼【課題の分離、横の関係】
→③他者貢献(貢献感)【課題の分離、共同体感覚、自由について】
→①自己受容→・・・
これは円循環になる。
※【】内は、その為の考え方・手段。後述。

生き方としては、「今、この瞬間に強烈なスポットライトをあてる」ことが大事。人生は線(過去、今、未来)ではなくて、点の連続(今だけ)である。

<思ったこと>
👆️でも書きましたが、「他者からの承認なしで、自らが、貢献感を心の底から感じる」という点は相当に難易度が高いと個人的に思いました。なので、そこに到達するまでの道筋があれこれと示されている訳なのかと。

本では他にも色々なキーワードはありますが、ここでは幸福に繋がると思われる流れと、その関連キーワードからピックアップしました。
【】内のベースとなる考え方だけを部分的にみても、自分に取り入れたいと思える所は複数ありました。(逆に、あまり賛同できない所もありましたが、記事では割愛)

以降で、太字のキーワードを見ていきます。

①自己受容

<本より解釈>
変えられるものと変えられないものを見極めること。
他者は変えられない、自分は変えられる。【課題の分離】

自分の中でも、「変えられないもの」と「変えられるもの」、「できないこと」と「できること」があり、それを見極めること。

変えられるものについては、変えていく「勇気」を持つこと。できないことはまずは受入れ、できるようになるべく前に進んでいくこと。【目的論】

「自己肯定」は、「自分はもっとできる」という考え方。
「自己受容」はそうではなく、「できない自分も受容する」という考え方で、👆️とは異なる。

<思ったこと>
今の自分を受け入れて、やるべきことに集中することですかね。👇️で出てきますが、他者と比較するのではなしに。
「(自分が変えたいことは)勇気をもって変えていくこと、前に進むこと」まで含めて自己受容である点が、ポイントだと思いました。今はできないことでも、それを受け入れて少しずつ前に進めば🆗なのです。

課題の分離

<本より解釈>
ある国に「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない。」ということわざがある。自分を変えることができるのは、自分しかいない。

結局、他者の考えていることはわからないし、変えることもできない。自分と他者の課題(やるべきこと)はしっかり分離して考えていくべき。

自分の課題にしっかりと向き合い、他人が自分の課題に干渉してきても相手にはしない、逆に他者の課題には干渉すべきではない。

尚、困っている人には援助、「勇気づけ」を行う。課題に立ち向かう勇気が不足している、と考える。

課題の分離ができるようになると、人生はシンプルな姿を取り戻す。

<思ったこと>
「課題の分離」は、本の中で一番良く出てくる言葉かと思います。当時読んだ時、僕の中では一番の肝で、今でも記憶に残っていました。「勇気づけ」の話もあって、当時小さかった息子との向き合い方に影響を与えてくれた内容です。
👆️で言っていることはもっともですが、実践は難しいよねと思っていて、その為に👇️でも色々な考え方が出てきます。続けます。

目的論

<本より解釈>
人は「自分の経験によってではなく、経験に与える意味(=目的)によって自らを決定している」という考え方。

対比は、原因論。「過去の経験があるから、今の自分がある。」という考え方。

ライフスタイル(人生のあり方)は、自ら選んだもので先天的なものではない。変わりたくても変われない人は、不満はあっても「このまま」でいることの楽さや安心を選んでいる。「勇気」が足りないだけ。
逆に、今この瞬間から、再び自分で選び直すこともできる、ということ。

<思ったこと>
過去の「事象」は変えられないが、その「意味付け」は変えられる。原因論で、変えられないものを悪く捉え、それを言い訳にしても仕方がない、と捉えました。やってしまったことを引きずる時があるので、忘れずにいたい考え方です。

②他者信頼

<本より解釈>
他者は「仲間」と捉え、信頼する。【横の関係】
相手が裏切るかどうかは、他者の課題。なので、考えない。【課題の分離】

自分の課題としては、他者を信頼するか、懐疑的になるか、どう考えて生きていくか。自分がどうするかだけを考えれば良い。(他者を仲間とみなすことをめざしているので、信頼するの一択。)

他者を信じるのに、一切の条件はつけない。無条件に信じる。深い関係に踏み込む「勇気」を持ち得てこそ、対人関係の喜びは増し、人生の喜びも増えていく。

裏切られた時を考えると不安にはなるが、悲しいときには、思いっきり悲しめば良い。痛みや悲しみを避けようとするからこそ、身動きが取れず、誰とも深い関係が築けなくなる。

道徳的な話ではない。不要な関係であれば、信頼せずに断ち切って良い。誰を信頼するかは、自分の課題。【課題の分離】

対人関係のカードは、常に「自分」が握っている。「目的論」「課題の分離」で考えると、自分の人生のあり方に従い、「自分の課題」として捉えて行動する。結果、他者がどう思うかは「他者の課題」である。

<思ったこと>
相手がどうであれ、自分はこうしたい(相手を信じる)という考え方です。👆️の「自己受容」、「課題の分離」がしっかりできた上での他者信頼かと思います。一切の条件をつけずに信じる点がポイントですかね。家族でも難しい時があるし、信じてもらえてるから信じるとかの発想に陥りがちですし、肝に銘じておきたい。

横の関係

<本より解釈>
人は皆、「同じではないけれど対等」と考える。他者を評価しないこと。

例えば、子供を叱ることも、褒めることですら、他者を評価している点で「横の関係」ではなく「縦の関係」になってしまう。「縦の関係」は、最終的には自分と他者の比較や、優劣のコンプレックスにつながってしまう。

「縦の関係」を築くか、「横の関係」を築くかはライフスタイルの問題であり、「この人とは対等に」「こっちは上下関係で」とはならない。例えば、年長者を敬うことは大切だが、意識の上では対等であること、主張すべきは堂々と主張すべきことが大切。誰か一人でも「横の関係」を築くことができれば、あらゆる対人関係が「横」になっていく。逆も然り。

<思ったこと>
子供を叱る/褒めるの部分は賛否両論あるかと思いますけど…
他者を評価することで、他者との比較やコンプレックスにつながってしまう、という点は納得できます。新しい環境に変わり、新しい人付き合いも多くなっているので、改めてよく考え実践したい内容。

③他者貢献(貢献感)

<本より解釈>
自分の価値を実感するための貢献であり、自己犠牲ではない。「それは偽善なのでは?」の問いに対しては、「他者信頼」の議論となる。「仲間」であれば、貢献は当然のこと。

「他者が何をしてくれるか?」ではなく、「自分が他者に何をできるか?」を考え実践していく。【共同体感覚】
「そんなことが、できるのか?」の問いに対しては、やはりその他者を「仲間」だと思えていれば可能。

承認欲求を通じて得られた貢献感には、自由がない。【自由について】
他者からの承認を必要とせず、貢献していると「自ら感じる」ことが必要。【課題の分離】

<思ったこと>
「他者信頼」の上での他者貢献です。やはり家族に対してでさえ、この考え方ができるのか?という難しさがあります。夫婦間は家事の分担の話とか、期待と違う子供の行動や結果を見て「親の苦労」を考えてしまう時とか…しかし、貢献により自分の価値を実感できる点は、よく分かります。

共同体感覚

<本より解釈>
対人関係において、「課題の分離」は出発点、「共同体感覚」がゴール。他者を仲間だとみなし、そこに「自分の居場所がある」(所属感)と感じられること。

「自分は共同体の一部であって、中心ではない」と意識することが大事。所属感は、生まれながらに与えられるものではなく、自らの手で獲得していくもの。「人は何を与えてくれるか?」(自分中心)ではなく、「人に何を与えられるか?」(共同体の一部)を考えなければならない。

共同体の範囲は無限大。対人関係で困難にぶつかった時は、「より大きな共同体の声を聴くこと」が原則。共同体感覚を持ちながら、尚、自由を選ぶこと。【自由について】

<思ったこと>
共同体感覚を理解することで、他者貢献(貢献感)を達成できると捉えました。この「共同体」の対象は、この本では、子供と学校、定年退職前の人と会社以外の世界、の例あり。うまくいかない時などは、「共同体」を広く柔軟に考えるべきであり、今の「共同体」に固執する必要はない、と理解しました。

自由について

<本より解釈>
アドラー心理学では、他者から承認を求めること(承認欲求)を否定する。他者の期待を満たすために生きることになってしまうため。
承認欲求は自然な欲望であるが、欲望の赴くままに生きては、自由にはなれない。欲望に抗うことが必要。

他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫くことはできない。自由にはなれない。

<思ったこと>
本のタイトル「嫌われる勇気」の箇所です。承認欲求に依存した貢献感は注意、ということですね。個人的には正直、(承認)欲求に従うのはある程度仕方ないと思っていますが、依存には気を付けないと、と気付かされます。

「今、この瞬間に強烈なスポットライトをあてる」こと

<本より解釈>
「今、ここ」だけを真剣に生きるということ。過去や未来を見ることで、自らに免罪符を与えてはならない。【目的論】

過去を見て言い訳にしてはいけないし、未来を見て人生を先延ばしにしてもいけない。「どこに到達するのか」を線で見るのではなく、「どう生きていくのか?」その刹那を見ていく。

<思ったこと>
本では、未来も過去も存在しないとまで主張があり、なかなか飲み込むのは難しい内容でした。が、「今、ここ」を真剣に生きることや、過去だけでなく未来も言い訳にしないという点は、素直に入ってくる内容でした。
「もし今日このまま死んでも悔いの残らない日を過ごそう、行動をしよう。」なんて、昔も考えたことありましたが、すぐ忘れて言い訳を考えてしまうので、気を付けないと。

最後に

改めて読んでみると、色々と忘れている内容も多く、意外と新鮮な気持ちで読み切ることができました。本当、はっきりと覚えていたのは「課題の分離」と「目的論」くらいだったかと…

本では、青年が反論となるエピソードや考え方を披露し、哲人が「違う違う、そうじゃ、そうじゃな~い♬」と教えるパターン、で話が進んで行きます。

具体的なケースを挙げて、その時はこう考えます、みたいな構成になっているので、読みやすく分かりやすいと思います。

興味が出た方はぜひ読んでみてください。

似たようなことを何度か書いてますし、うまくまとめられなかったかもしれませんが、自分の中ではスッキリできました。読んで頂いた方にも、少しはお役に立てましたら幸いです。

長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?