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【勝負の決め手となった2点目】マンチェスター・シティ×リヴァプール|プレミアリーグ第29節|マッチレビュー

代表ウィークが明けて各国のリーグ戦が再開。ここからシーズンはいよいよクライマックスへ。

そんなプレミアリーグの再開一発目に組まれた、世界最高峰の戦いがマンチェスター・シティvsリヴァプールだった。

近年プレミアリーグの覇権を争い切磋琢磨してきた両チーム。今回も大いにハイレベルな90分を我々サッカーファンに見せてくれた。

それでは簡単ではありますが試合を振り返っていこうと思う。

▪️リヴァプールのプレス回避

ホームのマンチェスター・シティが試合開始から長い時間ボールを保持する展開となった。しかしリヴァプールもボールを保持すればそのボールを簡単に奪い返されるようなチームではない。

シティの襲いかかるトランジションプレスを受け流し、ハイプレスを回避しいくつもの決定機を演出していった。

シティはリヴァプールが後方でボールを保持するとハイプレスをかけにいった。

4-4-2の陣形でハイプレスに出ると、両ワイドのグリーリッシュとマフレズはリヴァプールのSBのコースを切りながらCBへプレス。前線に入ったアルバレスとデ・ブライネはリヴァプールの2CHのパスコースを背中で消しながら前に出た。

しかしこのハイプレスの構造ではどうしてもプレスがかかり難い選手が出てくる。それがリヴァプールの両SBだ。左SBのロバートソンには守備時右SBのストーンズが捕まえに出るのでこちらはそんなに問題は生じなかった。

問題は右SBのアーノルド。どうしても彼にプレスがかからない状況が何度か見られた。アーノルドがシティのプレスの状況を把握してその立ち位置をワイドにインサイドに取ることで、シティのハイプレスを掻い潜りビルドアップの出口に。またアーノルドがフリーになり易い構造を、周りの選手たちが作り出していたとも言える。

この日右SHに入ったエリオットは後方でボールを保持するとサイドの持ち場を離れてインサイドへ。これによりシティの中盤ギュンドアンは彼を捕まえる。そしてトップに入ったサラーは右サイドのワイドへ流れてシティの左SBアケの注意を集めさせる。このアクションも重なり右SBアーノルドにプレスがかかりにくい構造に。

アーノルドにはそんな僅かな時間があれば十分。彼から一気にシティのハイプレスで生じた手薄な背後へボールが供給されていった。

そして実にクロップ・リヴァプールらしい縦に鋭く分厚い先制ゴールが生まれた。

先制ゴールを奪った後も、リヴァプールは鋭いカウンターから決定機を演出。トランジション局面からカウンター局面へ持ち込み、シティの手薄な背後を突き続けた。

▪️ハマらないシティの攻撃

先制パンチをお見舞いされたシティだったが、慌てることなく、高いボール保持率を維持しながらゲームを進めていき、リヴァプールの鋭いプレスを意図的に剥がし後退りさせていった。

シティはボールを保持すると右SBのストーンズが偽SBを発動。アンカーのロドリと共に中盤に入り、後方を3-2の陣形となりボールを動かしていった。

この陣形に対してリヴァプールは[4-2-3-1(or4-4-2)の陣形で敵陣からプレスに出た。しかしこのプランは失敗に終わった。シティの後方ビルドアップ隊がボールにプレッシャーがかからない構造を作り出していった。

特にSHに入ったジョタとエリオットは常に迷いながら、1人で2.3人のマークを見ながらプレスに出なくてはいけない状況となり、難しいタスクを担っていた。その迷いがプレスの遅れとなり、シティの選手たちをフリーにさせてしまうことに。

シティの後方ビルドアップを担う人数はGKを含めると6人。これに対してリヴァプールのプレッシング人数は4人。この時点でシティは2人の数的優位の状態でボールを動かせる状況に。

「ペップ・シティの選手たちに2人の数的優位でボールを動かされたらボールを奪えるか?」と言われた時、「あなたはボールを奪えるイメージがつくだろうか?」きっとそんな想像は難しいはずだ。

それではプレッシングにかける人数を増やそうとリヴァプールのCHであるヘンダーソンもしくはファビーニョが前に出てプレッシングの加勢に加わる。しかしそれと同時に動き出すのがシティのIHであるデ・ブライネとギュンドアンである。

シティのIHがサイドに流れることで、中央に集まったリヴァプールのプレスから逃れるようにフリーでボールを引き受けることに成功(これは後方3-2にすることで生まれる副作用とも言える)。

このIHのサイドに流れるアクションがきっかけで生まれたのがシティの同点ゴールだった。

さらにリヴァプールのプレスを空転させていったのが、この日ハーランドの欠場に伴い先発の座を掴んだアルバレスの存在だった。

▪️アルバレスのフォルス9

フォルス9(偽9番)のタスクを担ったこの日のFWアルバレスは、そのペップの期待に見事に答える働きを見せた。

シティが後方でボールを動かすと最前線から列を降りてボールをピックアップ。

自ら前を向いてビルドアップの出口になったり、ポストプレーで3人目の味方を前向きにさせていき、さらにリヴァプールのプレスの標的を定めさせないプレーを見せていった。

逆転ゴールもそんなアルバレスを経由した攻撃から生まれた形だった。

このゴールは後半開始早々に生まれたゴール。ハーフタイムを境にリヴァプールはプレッシングを変えてさらに前のめりの姿勢を示した。

しかしそんな意気込みとプラン変更をすぐさまシティによって暴かれて、ひっくり返されたしまったリヴァプール。

点差はこの時点では1点差でリヴァプールの力を考えれば十分に同点もできる状況だったはずだが、見た目以上の大きな大きなダメージとなる1点になったように感じた。

ハーフタイムに身体と心のエネルギーを回復させ。プランを変えていくぞ!と意気込んだ早々で奪われて逆転ゴール。正に出鼻を挫かれた形となったリヴァプールには大きなダメージがのしかかったはずだ。

このゴールによって前に出れなくなったしまったリヴァプール。前線の選手を総入れ替えしてプレスの強度を保とうとしてクロップだったが、その願いは届かず、ずるずるとラインは下がってしまい、シティの攻撃をひたすら受け止める状況となっていった。

▪️おわり

後半シティの攻撃が止まることはなく、結果リヴァプールのゴールに4得点を叩き込み宿敵から勝点3をもぎ取った。

両チームともに攻守でアグレッシブでスピード感溢れる非常にエキサイティングな試合を見せてくれた。今回も素晴らしい戦いをいつものように見せてくれたこのカード。

結果だけを見れば大差でシティが勝利を飾ったが、シティにも問題はあったはず。特にプレッシング局面ではリヴァプールにひっくり返されて、脆さも伺えたが、それはペップ・シティらしくボールを長く保持することで覆い隠していった。

自分達の強みを貫き通して大きなライバルに勝利したことはこれからのクライマックスにかけて、チームの大きな自信になるはずだ。

この勝利でマンチェスター・シティは公式戦7連勝。いよいよペップ・シティのエンジンも温まり連勝街道へと突き進み始めたのかもしれない。この連勝が止まることなく、どこまでもどこまでも突き進み、新しい景色を見せてほしい。


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