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【生まれ変わったベルギー代表。新監督テデスコが思い描くフットボールとは?】

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カタールW杯で不甲斐ない結果に終わってしまったベルギー代表。W杯期間中にも関わらず内部分裂も報じられ、ロベルト・マルティネス体制は後味の悪い結果で幕を閉じた。

こんな難しい状況に置かれていたベルギー代表の次の監督には37歳のドメニコ・テデスコが就任した。

テデスコはドイツ育ちのイタリア人。31歳でシャルケの監督に就任。その後ライプツィヒ、スパルタン・モスクワの監督を務め、代表監督は今回が初挑戦。ナーゲルスマンとが指導者ライセンスで同期だったというのもテデスコを語る上では有名な話だろう。契約はEURO2024年まで。

テデスコ新監督の初陣となったのがEURO2024年予選リーグvsスウェーデン戦。そしてその試合後には強豪ドイツとの親善試合が組まれた。

この2試合でテデスコ新監督率いるベルギー代表がどんな試合を展開してくれるのか。楽しみであり、そして新たなチームが発足されて短い期間でどれだけ新監督のプランや思考をスター軍団のベルギーに落とし込めるのか。そんなワクワクした気持ちを裏切らない2試合を見事に展開してくれた。

それでは今回はベルギーが戦ったスウェーデン戦とドイツ戦の2試合を見た振り返りをしていきたいと思います。

【テデスコ・ベルギーの大枠】

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▪️ボール保持【4-3-3陣形】

まずはボール保持局面での新生ベルギーの姿を見ていこうと思う。初陣のスウェーデン戦で見せた姿と、ドイツ戦で見せた姿がそれぞれ違っていて非常に面白かった。バリエーションの多いチームになりそうだなという期待感を凄く感じさせてくれた。

▶︎2CB +オナナの三角形

後方でボールを保持すると中盤のオナナがどすっとアンカーポジションに立ち、2CBの頂点に入り後方真ん中に三角形を形成。これがベルギーのビルドアップの屋台骨となる。

この三角形を土台に4-3-3のような陣形となりボールを保持。相手の出方に合わせてその陣形を変形し、しっかりボールを保持していく。

三角形の頂点に入るオナナの存在がやはり大きい。陰にもなり日向にもなれるオナナ。時には2CBからの難しいボールを相手を押さえつけて強引に前進。時にはそのスケールの大きさで相手のファーストプレスを引きつけて、味方の2CBをフリーにさせる。

そしてオナナの存在に引き付けられてフリーになるのは2CBだけではない。

▶︎IHの列落ちピックアップ

オナナの存在によって中央に集められると、ベルギーのIHがスッと列を降りてフリーでボールを受けに来る。

IHに入るのはデ・ブライネは絶対的な存在。もう1人はまだ定まっていない印象。トロサールになるのか。しかしボール非保持局面を考えるともっと守備的なオレル・マンガラのような選手がファーストチョイスになりそうな雰囲気が強そうだ。

トロサールはジョーカー的な存在に?もしくは中央ではなくサイドでの起用が増えていきそうな印象を受けた。

▶︎SBスライドした3バック可変

スウェーデンは4-4-2のミドルブロックを形成してきた。するとベルギーの最終ラインは4バックから3バックを形成。右SBに入ったカスターニュが内側に入り、それに押し出されるように左SBテアトルが左サイド前方に張り出され後方を3バックへ可変。

3バックになったことでスウェーデンのファーストプレスの2トップの脇のスペースを利用して、スウェーデンのプレスをズラすきっかけを作っていった。

そしてそのスペースでフリーとなった左CBフェルトンゲンからスウェーデンの陣形を破壊する一撃が何本も放たれた。

▶︎対角サイドチェンジ

スウェーデンの2トップ脇でボールを持つ左CBフェルトンゲンは、スウェーデンがそれに合わせてスライドのアクションを起こすと、一気に逆サイドへ高精度のサイドチェンジを放っていく。

右サイドの大外で待っている右WGドディ・ルケバキオがフリーとなり、お得のドリブルを炸裂させていく。

この時彼がフリーとなるカラクリが隠されている。それがIHデ・ブライネの立ち位置だ。

左CBフェルトンゲンがボールを持つと、右IHデ・ブライネは相手CBとSBの間に立つ。これにより相手SBはデ・ブライネに意識を持っていかれ、大外のルケバキオがフリーとなるカラクリが隠されている。

▶︎ルカクのポストプレー

相手が高い位置からプレッシングに来た際は、シンプルにCFのルカク目掛けてロングボールが入れるプレー選択も。

ルカクのキャラクターを考えれば、単調なロングボールでも効果が抜群なのはお分かりだろう。相手を押さえつけてしっかりボールをおさめて時間を作り、2列目の選手を前向きに。

前がかりになった相手を一気にひっくり返して、素早い攻撃へと移行していく。

▶︎サイドの三角形旋回

自陣でのビルドアップを終えて、敵陣にボールを運ぶと両SBが積極的にサイドの高い位置をとることも。

このアクションに合わせてWG、IHはその立ち位置変えていく。サイドで形成されるSB.WG.IHの三角形が流動的に旋回。

特に2戦目となったドイツ戦では右SBカスターニュの積極的なオーバーラップやアンダーラップはより色濃く見られた。

▶︎左サイドはルカクを加えて

反対の左サイドのボール運びにはルカクも参加するパターンも見られた。

SB.WG.IHのトラアングルにルカク加わり左サイドに菱形が形成され、ルカクへの縦パス、斜めのパスがワンクッション入れられて、相手を切り崩すシーンも数回見られた。

▪️フィニッシュ局面

▶︎右からの巻きクロス

右のワイドで右WGルケバキオはボールを受けると、左にボールを置いてゆっくりドリブルを開始。相手を右手で抑えながら、左足の遠い足でボールを隠してカットイン。

そのまま右からサイドから左足で巻かれたクロスをゴール前に放っていく。もちろんターゲットはルカク。

スウェーデン戦ではルキバキオはルカクへ2アシスト。この形はベルギーの新たなホットラインになりそうだ。

▶︎デ・ブライネの質

また右ワイドでルキバキオがゆっくりドリブルを開始すると、そのアクションに合わせてデ・ブライネがオーバーラップ→スルーパス受ける→高速クロスを中へ供給!というパターンも。

ゆっくりドリブル侵入してくれるルキバキオとデ・ブライネの相性は良さそうだ。

クロスだけでなく、圧倒的な攻撃スキルとセンスを持っているデ・ブライネはやはりこのチームの攻撃の中心。

ドイツ戦では圧巻の1G2アシストを見せたデ・ブライネ。ベルギー代表でのプレーでデ・ブライネが笑顔を取り戻しつつあるのかもしれない。

▶︎カウンター(ショートもロングも)

後ほどボール非保持の解説は詳しくしていくが、ベルギーは自陣に弾いて4-4-2のローブロックを敷く戦い方も行う。

これを行う理由は相手の攻撃スペースを消しながら、相手の攻撃を跳ね返す狙いに加えて、彼らが隠し持っているカウンターアタックを炸裂させる為の誘き寄せにもなっている。

前線にえq待ち構えるルカクを中心にカウンターが打ち込まれる。デ・ブライネもカウンターのスイッチを入れるのが非常に上手い選手。

中盤オナナのプレス回避。セカンドボール回収力の高さも加わり、ショートでもロングでもカウンターを繰り出すベルギー。

この2試合でもダイナミックなカウンターが何度も見られた。

▶︎セットプレー

高いキック精度の持つ選手、そして高さもある選手が揃うベルギーのセットプレーはフィニッシュ局面の大きな武器に。

その中でも単純にゴール前に送り込むことはせずに、一工夫されたベルギーのセットプレーはより相手の脅威となっていた。

▪️ボール非保持

ボール非保持局面でも、ボール保持同様にベルギーは2試合でまるっきり違う表情を見せた。

1つは静的な姿。そしてもう1つはアグレッシブな動的な姿だった。

▶︎静的4-4-2ブロック

初陣となったスウェーデン戦では、アグレッシブにボールに出て行くアクションはほとんどなく、まずは4-4-2の陣形を形成して、相手の攻撃をしっかり待ち構えるボール非保持のアクションを見せた。

網をかけて静かにゆっくり相手のボールを回収し、ボールを奪い返して保持。もしくはカウンターアクションへ移行していく。

▶︎動的な前プレ

そんなスウェーデン戦とはうって変わってドイツ戦では序盤から積極的に前からプレスに出ていったベルギー。

敵陣高い位置から積極的なプレッシングをドイツにお見舞いし、ボール非保持からリズムを掴んでいった。

▶︎課題

しかしボール非保持の局面ではまだまだ課題は多そうだ。相手がドイツということで、動的な前プレが剥がされてピンチを招くシーンも少なかった。また静的な4-4-2ブロックの強度には課題はありそうだ。

こちらもドイツ戦の話になってしまうが、サネやムシアラといった中央へドリブルで切り込める選手がいたら、ベルギーのブロックは切り崩されていたかもしれない?とイメージが浮かぶような精度や強度だった。

こちらもどう進化していくのか観察したい要素の一つだ。

▪️ジョーカーの存在

試合の流れを変えられる存在がいるのも新生ベルギーの新たな強みの一つだ。その一人が19歳のヨハン・バカヨコだ。

A代表デビューとなったスウェーデン戦では右のWGで途中出場。衝撃のデビューを飾った。右のワイドでボールを受けるとスウェーデンのDFを一気に2人を置き去りにするドリブル突破。最後はルカクのハットトリックとなるゴールをお膳立てするアシストを記録。

試合が均衡した試合終盤。またリードをしてカウンター局面が多くなった展開にこういった突破力のあるドリブラーは大きな力になるはずだ。

バカヨコ以外にもまだまだ隠れているタレントはきっと多いベルギー。これから新生ベルギーを象徴する選手がどんどん出てくることも楽しみ!

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