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#068 ああ、同じ表情だ

 夏の時期は朝の4時頃、冬場は朝の5時頃に私は散歩に出る。
 着替えて顔を洗い、ウエストポーチを腰に巻く。ウエストポーチには家の鍵、ロディアのメモ帳、ボールペン、歩数計、小銭入れなどが入っている。暖かくなると、スケッチブック、スケッチ用筆記具関係一式が入っているショルダーバッグ、携帯椅子、そしてアイスコーヒーが加わる。
 それらは置いておく場所が自然と決まっており、順に一つずつ手に取る。そして、一言も発することなく玄関のドアを開けて、空を見上げる。ブルーブラックの夜空に金星が輝いているのを確認する。静寂の中で玄関ドアを閉め、再び夜空を見上げて、ほのかな笑みを浮かべる。
 このときの私は、きっと『PERFECT DAYS』の主人公と同じ表情をしている。『PERFECT DAYS』の主人公も、毎朝、アパートのドアから出て空を見上げて微かな笑みを浮かべる。
 ブルーブラックの夜空を見上げる私は、何も考えてはいない。朝の空気を頬に感じ、透明感のある夜空を見上げるだけで、私は小さな幸せを感じている。『PERFECT DAYS』の主人公も、きっと同じだ。
 日常の中の小さな喜び。
 平凡だが、そんな日常の行為を慈しみたい。
 それが幸せというものだと思っている。

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