アメリカ、イラン、日本、自衛隊

https://www.bbc.com/japanese/video-50992368
イラン司令官殺害 イランとアメリカの関係はなぜここまで悪化した

 もし、自民党安倍政権が自衛隊をアメリカとイランの戦争に派遣すれば、それはもはや派兵である。イランは、日本をアメリカと同等の敵対国家とみなし、テロ組織もそれに追随し、海外で活動する日本人を危険にさらすことになる。日本国内においても、観光客に紛れて多くのテロリストが攻撃の機会を求めて渡航する切っ掛けとなる。
 アメリカとイランとの戦争でアメリカに加担すれば、日本は、中東諸国及び、反アメリカ諸国から爪弾きにあうことは避けられない。日本がアメリカを支持し自衛隊を中東に派遣すれば2020年の東京オリンピック不参加を表明する国も現れるのは間違いない。こうした事態となれば、オリンピックにおける日本の不名誉は避けられない。フランスではオリンピック招致に関する訴追手続きが始まっており、すでに日本の不名誉はほぼ確実となっている。

https://www.bbc.com/japanese/46840041
東京五輪招致汚職容疑、JOC竹田会長を訴追手続き
仏当局

 そもそもトランプ大統領が、イランを敵視するのは、イスラエルと関係している。トランプ大統領の娘婿(大統領顧問ジャレッド・クシュナー)は、イスラエルを支援している。トランプ大統領によるエルサレムのイスラエル首都宣言もこうした背景が関係している。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/06/post-12397.php
トランプ娘婿の「パレスチナ和平案」、イスラエルの悪事には触れず
https://www.cnn.co.jp/usa/35146717.html
ユダヤ教を「国籍」と解釈する大統領令、トランプ氏が署名へ
米紙ニューヨーク・タイムズによると、今回の動きはトランプ大統領の娘婿で大統領顧問のジャレッド・クシュナー氏が推進していた。
https://www.bbc.com/japanese/42261585
トランプ米大統領、エルサレムをイスラエルの首都と承認
https://www.bbc.com/japanese/47663449
トランプ大統領「ゴラン高原、イスラエルに主権」 国連決議違反との声も
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/06/post-12325.php
イスラエル、ゴラン高原の入植地を「トランプ高原」と命名

 そもそもトランプ大統領が一方的にイラン核合意を破棄したことにより、アメリカとイランの緊張が高まり、その結果としてイラクのアメリカ大使館襲撃がもたらされた。

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44049878
イラン核合意
米国離脱でどうなるのか

 イランとイスラエルは長年敵対しており、これを決着させるには、アメリカがイランを攻撃し、イラクと同様に支配下に置くことであると、トランプ大統領の娘婿は考えたのかもしれない。
 そもそもイラクのアメリカ大使館襲撃をアメリカ当局が、事前に把握していなかったとは考えられない。アメリカ当局は、事前にイラクのアメリカ大使館襲撃を予測し、また、イラン司令官のイラク入国を把握しており、この作戦が事前に計画されていたとみなすのが妥当である。
 自民党安倍政権が、年末に突如自衛隊の中東派遣を閣議決定した背景には、この作戦の詳細を知らなくともある程度把握していた可能性がある。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019122700260&g=pol
政府、自衛隊中東派遣を閣議決定
1月下旬に活動開始―独自に情報収集
2019年12月27日

 戦争が始まってからの派遣では無理だが、戦争前の決定であれば強行できると考えたのかもしれない。この時点でアメリカが、イランに対し、何かしらの軍事行動を起こすことをアメリカから自民党安倍政権は聞かされていたと考えるのが妥当である。そうでなければ、このタイミングで唐突に閣議決定がなされた理由が見当たらない。これによって自民党安倍政権は、自衛隊の派兵実績を作り、憲法改正に利用することを画策しているとみなすことができる。自民党安倍政権は、アメリカとイランの緊張が高まる中、これに関して、現時点(2020/01/05)では、一切の公式発表をしていない。

https://this.kiji.is/586035802062586977
安倍首相、中東情勢への言及避ける
記者団の質問に

 公式発表をすれば、すべてが自衛隊の中東派遣と結び付けられると考えているからである。
 アメリカとイランとの戦争は、第三次世界大戦の引き金となりうる。局所的に始まった戦争であっても、今回のようにアメリカ側に大義名分がない戦争の場合、アメリカを敵視する国々は、アメリカを攻撃する大義名分を手に入れることになる。その結果として、アメリカは世界中から攻撃の対象となり得る。これは、第二次世界大戦において、日本、ドイツ、イタリアが世界中の国々から攻撃の対象となったことと同様である。それまで考えられなかったアメリカとソ連が共同して軍事作戦を行うまでになったのである。
 トランプ大統領のアメリカは、もはや民主主義と自由の国ではなくなっている。人種差別が公然と行われ、移民を望む人々に人権を無視する態度を取り、白人至上主義が幅を利かせるある種の独裁国家となっている。この姿は、第二次世界大戦におけるファシズム国家である日本、ドイツ、イタリアを思い起こさせる。
 強大な軍事力を背景に、トランプ大統領は、アメリカが勝利することが当然と考えているかもしれない。だが、アメリカの傲慢な態度は、決して勝利をもたらし続けたわけではない。ベトナム、アフガニスタンでは、アメリカは敗北した。朝鮮戦争では、決定的な勝利を得ることなく、現在も朝鮮半島は分断されたままである。イラク戦争は、アメリカの勝利とみなされているかもしれないが、ISISなどのテロ組織の台頭を招き、イラクだけでなく周辺国も含め戦火を拡大する結果となっている。第二次世界大戦後のアメリカの戦争の多くは、何かを解決するよりも、多くは災禍をもたらす結果となっている。
 アメリカとイランが本格的な戦争を始める場合、アメリカはイラクを基点にイランに戦争を挑むつもりなのだろうか。これをイラク国民が受け入れるだろうか。朝鮮戦争では、日本はまだアメリカの占領下にあり、アメリカの前線基地として利用された。ベトナム戦争では、まだ日本に返還されていなかったアメリカ統治下の沖縄は、アメリカの前線基地として使用された。

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1000763.html
復帰前の沖縄、核兵器1300発貯蔵
復帰前、辺野古弾薬庫や嘉手納弾薬庫には、1300発もの核兵器が貯蔵されていた。1959年には、米軍那覇飛行場配備のミサイルが核弾頭を搭載したまま誤射を起こし、海に落下する事故が起きた。

 現在の日本は、沖縄を含め、主権を取り戻した独立国家のはずである。だが、自民党安倍政権のアメリカに対する態度は、占領下の日本の姿である。それどころか、アメリカとイランの戦争に、自衛隊を派遣することは、主権を失った占領下の日本よりも、日本を低い地位に貶めていることを意味している。
 主権を持つ国家とは、主権者である国民の安全を確保し、その資産を保護し、将来にわたる国益を勘案した上で、政策を決定するものである。だが、自民党安倍政権は、自己利益の最大化のためだけに政策決定をしている。その結果が、中東への自衛隊派遣である。これによって、もし自衛隊が本格的に戦争に参加することになれば、自衛隊員という人的支援だけでなく、無尽蔵に軍事費を投入できることになる。これには、多くはアメリカからの兵器の購入が見込まれる。これによって、自民党安倍政権は、アメリカ政府を味方につけ、政権維持を確保できると考えている。
 だが、アメリカとイランの戦争にはアメリカ側に大義名分がない。大義名分を伴わない戦争は支持を得られない。結果としてアメリカ国内では、トランプ大統領の支持率は低下し、トランプ大統領は権力者の地位から追い払われることになる。次のアメリカ大統領は、トランプ大統領とは異なるタイプの人物が当選する可能性が高い。そうなれば、トランプ大統領に何の考えもなく追随した自民党安倍政権は、新しいアメリカ大統領からすれば、アメリカのパートナーとして適切ではないと判断することは間違いない。自民党安倍政権が、アメリカから拒絶されるだけであれば良いが、アメリカにとって日本が、さして重要ではない国とみなされる可能性もある。日本が「アメリカ軍アジア前線基地」としかアメリカ大統領にとって認知されない日が来るかもしれない。もしそうなるとすれば、その責任は、自民党安倍政権にある。
 自衛隊が担おうとしているのは、兵站である。兵站は、食料、武器弾薬などの物資補給の重要な役割である。このため兵站は、敵からすれば攻撃目標として優先されるものである。敵の兵站を阻止すれば、敵は戦争継続が不可能になるからである。その兵站を自衛隊が担うのであれば、攻撃されることが当然と考えるべきである。だが、自民党安倍政権は、「兵站」を「後方支援」と言い換えることによって、まるで戦争とは関係がないような印象を与えている。このような欺瞞は、自衛隊を危険にさらし、自衛隊員に犠牲を強いる結果をもたらす。
 そもそも自衛隊は、国外において戦争行為を実行することを想定された組織ではない。想定されていない役割を担わされると言うことは、そこには過剰な負荷が加わることになり、その負荷によって大きな歪みが生じることにもなる。歪みが生じれば、その歪みによってその組織は、自壊する危険性が高まる。軍事行動を伴うような組織の場合、組織に厳密さが要求され、臨機応変さは容認されない。臨機応変さを容認されない組織において、想定されていない役割を、それも国外において担わされることの負荷は、組織を脆弱なものとする。
 日本国憲法に基づいて、日本では軍隊が存在することはない。だからこそ、自衛隊、防衛省という名称を採用している。だが、こうした日本語における言葉上の使い分けは、海外で通用するわけではない。自衛隊を各国語では軍隊と表記することは当たり前となっている。
 通常、軍隊は交戦権を持つ組織であり、その結果として武器の使用により敵兵士を殺傷しても、兵士が個別に殺人罪、傷害罪を問われることはない。だが、自衛隊の場合、日本国憲法上、軍隊ではないため交戦権はなく、もし自衛隊員が敵兵士を殺傷した場合、殺人罪、傷害罪などを個別に個人として訴追される恐れがある。これが、軍隊として想定されていない自衛隊のもっとも負荷の大きな点である。銃器を所持していたとしても、それを使用し、敵を攻撃し、殺傷する権利を日本は国家として、自衛隊員に与えることはできないのである。自衛隊員は、自分の命を守るために、個人の立場で銃器の使用の責任を問われるわけである。このように法的立場において、自衛隊が軍隊ではないという事実がそこにはある。これは、自衛隊が国外の戦場で戦闘行為を行うことが想定していないことを明確に物語る点である。
 こうした法的立場において大きな不備があるにもかかわらず、自民党安倍政権が自衛隊を中東へ派遣し、アメリカの意向に沿った軍事行動を自衛隊に強いれば、そこには大きな歪みが生じ、自衛隊に大きな被害を与えることになる。日本国憲法に基づけば、日本が主権を持つ独立国家として、自衛隊をアメリカとイランの戦争に参加させることには、何ら正当な理由も大義名分も存在しておらず、このため自衛隊の中東派遣は、日本国民の安全を脅かし、将来における日本の国益を大きく毀損することに寄与する以外の効能はないことがわかる。

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