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成長・発生・遺伝(高校理科生物)

☆成長・発生・遺伝

生物はいつか死ぬ
だから子孫を残す。だが生まれてすぐに生殖して増殖できるわけではない。

単細胞生物であっても分裂後には栄養分を蓄えある程度成長してから分裂を行い増殖する。多細胞生物ならば、受精卵という単細胞の状態から細胞分裂し、細胞を増やしながら成長して、そして生殖を行うようになっている。

しかも、後者の場合、生殖できるようになるまでの過程で、細胞の分化(特殊化・専門化)を経て、生殖可能な段階に達する。

生物学では、受精卵から成体までの成長過程を発生と呼び自己を複製するための増殖を生殖という。

●発生と遺伝

単細胞生物の分裂や成長過程が単純とは言わないが、多細胞生物では数十から数百種類もの細胞が存在する。よって前者に比べるとその発生は非常に複雑である。しかも、その過程は順序だって進行する必要があり、細かな制御が必要になる。だって頭も無いのに眼を作り始めたら大変なことになってしまうことは目に見えているのだから。

では一体どうやってそんなことが自発的に起こるのであろうか?
そして、どこにそんな計画がコードされているのだろうか?
そのすべての鍵は生殖細胞にあるはずだ。
全ては受精卵から始まるのだから。

まず多細胞生物の発生の過程では、いついつまでにどこに何を作る、まず何を作って、次に何を作るといったプログラムが存在する。そして、それは受精卵に存在している。

そこに記されている計画に沿って発生が進行しなければ正常な個体は作ることができない。

例えば、ヒトの赤ちゃんは母体に10カ月程度いるが、これは10か月で一人前のヒトを作らなければならないということであって、生まれるまでの期間中に手や足、脳などの発生が間に合わなければならない。そして、手を作ったとしても中に神経が通っていなければ手は動かせず、後で神経を付け足すことは普通できない。

では、これらのプログラムは受精卵のどこにもっぱら存在するのだろうか

この答えはDNAである。なぜなら正常な個体を作るためのプログラムとはまずもって単細胞生物同様に、正常な細胞を作り出すためのプログラムでなければならないはずだからである。

すなわち突然変異が起きたら困る物質、つまりDNAこそがその条件を満たしているのだ。実際、DNAは受精卵から大事に大事に受け継がれていくのである。

だからこそ子供にとっては親のもっている遺伝子(「正常な部品成功したプログラムの情報)をそのまま受け継ぐことが、発生の進行に関して、また生き残るためにも最も確実である。

特に、有性生殖する生物では精子から同じ遺伝子の情報をもらうことで、両親のいずれかの遺伝子が突然変異してしまっていても、発生が正常に進むようになっている。その結果、親の特徴は子供に引き継がれ、同時に変異した遺伝子も含めて様々な遺伝子が次の世代に残されていく。これが遺伝という現象である。

その他にも母性因子含めて受精卵に含まれていて発生に重要なタンパク質、因子もある。しかし、遺伝子として機能するような部分を含んでいるのはやはりDNAなのである。

ただし、正常な発生では適切な遺伝子が適切なタイミングで発現することが重要である。これには受精卵から受け継がれてきた様々な因子がDNAに作用することでおこるカスケードが重要であることは間違いの無いことである。

結局、遺伝子の違いが細胞の構造や機能を変化させ、様々な特徴を作り出す。それに加えて、DNAには部品として機能するだけではなく、適切な遺伝子を発現させるためのプログラムとしての遺伝子、構造や機能があるのだ。これらが、個体の成長も含めてその発生を制御している。

●遺伝と進化

子孫が成長し生き残っていくには子孫を残すことができた親に似ることが一番安全である(遺伝)。

その一方で精子や卵で起こる遺伝子の突然変異は変化を生み出し、進化の基盤にもなる。

進化を考慮すると、分裂してクローンを生み出すよりも有性生殖を行うほうが、様々な突然変異遺伝子の組み合わせを試し、伝えることが可能と考えられる。

●遺伝関連の用語

遺伝形質を決定する因子を遺伝子という。

これはひも状のDNAという物質として細胞内に存在する。従って、遺伝子の違いとはDNAの違いであり、DNAの違いとはその物質の構造の違いである

つまり、異なる塩基を持つ4種類のヌクレオチドがどのような順番でつながっているか(塩基配列)が遺伝子ごとに異なる。

遺伝子は多数存在し、ヒトでは2~3万個存在すると言われる。これをひも状のDNAに収めようとすると、DNAはとても長くなってしまい、突然変異等の異常の原因となる。そのため、DNAをコンパクトに収納するための工夫が必要となる。

一つ目はひも状のDNAをタンパク質に巻きつけて折りたたむこと。二つ目は、DNAを分断して、いくつかに分けることである。その結果として、DNAは核内で染色体という構造をとる。

1つ1つの染色体は、適度な長さのDNAがタンパク質を用いてコンパクトに凝縮されたものなのである。そのため、全遺伝子の情報は複数の異なる染色体に分割されている。これらを一まとめにしたもの、つまり精子や卵に含まれるようなひとまとめをゲノムという。


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