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1月20日(土):大人は脳を休息させるための睡眠とDMNを

昨日は教育現場で少しずつ広がりはじめた「眠育(睡眠教育)」のことを取り上げましたが、本日もこれに関連した話を少しばかり。

眠育に付随して昨日は厚生労働省の睡眠指針にも触れましたが、アップデートされた睡眠指針のポイントは「成人」「こども」「高齢者」に区分した年代別の睡眠指針案を提示していることです。

前回は学校の教育現場での眠育と関連して、おもに「こども」にとっての睡眠時間に言及しましたが、本日は「高齢者」についての内容です。

睡眠指針の高齢者版では、高齢世代になると自宅で過ごす時間が増え、家庭内での役割も徐々に減る傾向になるとし、睡眠不足よりもむしろ長時間睡眠(長寝)による健康リスクが高まるとの研究例を示し、昼寝は30分以内をめどに短時間にし、昼間はなるべく活動的に過ごすことを推奨する形になっています。

高齢者の睡眠と健康上リスクで紐づいてくる事柄のひとつは認知症でしょう。

九州大学の疫学調査「久山町研究」によれば、1日の睡眠時間が5〜7時間未満の人々と比べ、5時間未満の人の認知症リスクは2.6倍に上っています。

アルツハイマー病の原因物質ともいわれるアミロイドベータは夜間の睡眠中に脳から排出されるため、寝不足はその蓄積を招くとの見解です。

その一方で同研究では睡眠時間が10時間以上の人の認知症リスクも2.2倍になっており、寝過ぎもけっして良くないことがわかっており、こちらは前述した睡眠指針の内容とも合致してきます。

もっとも認知症は高齢者になって発症をすることが多いですが、前述したアミロイドベータの蓄積は発症の25年ほど前から見られ、15年ほど前からは海馬の体積の減少も確認されています。

そうした状況をふまえると「高齢者」の前段階である「成人」時期の過ごし方もまた重要です。

先日の日経新聞には「脳に適度な休息を 認知症予防につながる生活習慣は」と題した記事がありました。

そこでは脳神経外科医で脳の働きを長持ちさせる「脳寿命」の研究を担う東千葉メディカルセンターの岩立康男センター長が、認知症予防につながる脳の休め方に言及した事柄が記載をされていました。

前提として脳は他の臓器と比べて老化が進みやすいため、疲れすぎないようにいたわりながら使うのが大切だといいます。

脳神経細胞(ニューロン)は一部を除いて、一度できると再生することがなく、一般の細胞と比べてたくさんのエネルギーを使うため、老化の原因となる酸化ストレスがたまりやすい点が特徴として挙げられ、アミロイドベータなどの変性たんぱく質も蓄積しやすい点が説明されています。

そのうえで脳にダメージをためないコツは、仕事や勉強などで脳を集中的に使う時間と「ぼーっとする」時間を意識的に切り替え、脳内の「集中系ネットワーク」と「分散系ネットワーク」をそれぞれ働かせることをポイントにあげていました。

分散系ネットワークの中心である「デフォルト・モード・ネットワーク」(DMN)が働いているときに脳は記憶を整理・統合する作業を行い、DMNが顕著に働くのは睡眠中ですが、集中的に脳を使った後に景色を眺めたり、散歩をしたり、ぼーっとする時間を設けてDMNの状態を作り出すことで、脳の働き過ぎを回避できるとしています。

成人、高齢者の場合は適度な睡眠を取りつつ、あとは日常のなかで「脳」の使い過ぎに注意をしながら、意識的に脳を休めることも大切だろうと思います。

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